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2022年4月の記事一覧
【ショートストーリー】はるかぜ
冬の冷気をまだ少しだけ含んだ風が吹いていて、スカートの裾が私の足首に触ってこそばい。私は駅のホームの先端に立って、線路わきに揺れる小さな野の草を眺めていた。
この優しい風はどこかの国の砲弾や戦場の黒い煙の中をくぐり抜けてから時間をかけてここにたどり着いたのかも知れず、この穏やかな春の草花を優しくなでた後にはまた海や異国の町、もしくは黄色いばかりの砂漠なんかへ、別れたり合流したりを繰り返しながら
冬の冷気をまだ少しだけ含んだ風が吹いていて、スカートの裾が私の足首に触ってこそばい。私は駅のホームの先端に立って、線路わきに揺れる小さな野の草を眺めていた。
この優しい風はどこかの国の砲弾や戦場の黒い煙の中をくぐり抜けてから時間をかけてここにたどり着いたのかも知れず、この穏やかな春の草花を優しくなでた後にはまた海や異国の町、もしくは黄色いばかりの砂漠なんかへ、別れたり合流したりを繰り返しながら