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Cofui
2020年11月28日 20:50
どこかの寂れた町の夜更けだった。私立探偵敦賀ヤスハルは、ある男を尾行していた。グレーのトレンチコートを着たその男は、大股な足取りで歩いていく。 その男は、間違いなくある女性を監禁している、とヤスハルは睨んでいた。まったく危険な仕事を引き受けてしまったものだ。彼は少々後悔しながら、男の背中を追い続ける。追いながら、一体この依頼を持ってきたのは誰だったのか、思い出そうとするがまるで思い出せない。そ
2020年11月22日 12:22
男は乗り込んだ電車に空席を見つけそこにそっと腰を下ろした。隣りあう女性の体に触れないように、そして細かい塵が舞い上がらないようにしながら。 世界中がウイルス性感染症の恐怖であふれかえっていた。そして、感染症に対してとても脆弱な(思いのほかというべきか、あるいは予想通りというべきか)街や国、そして人々の心は、感染症の波に次々と飲み込まれていった。 しかし今や、その感染症は人々の心にお馴染みのも
2020年11月14日 17:11
そのとき、突然ではあったが、彼は探偵になることを決意した。 そして決意して初めて、自分は昔から探偵になりたかったんだ、とどこかで思い続けていたことに気がついたのだ。 子どものころからシャーロックホームズなどの探偵小説も好きだったし、夜9時からはじまる2時間のサスペンスドラマを親たちが見ているのを見せられてもいた。 刑事コロンボ(探偵ではないが)や、とりわけ「こちらブルームーン探偵社」なん