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『FACT FULNESS』~学校異動~

積読していた『FACT FULNESS』に手を伸ばした。学校は異動の時期だ。両者には重なるところがあった。実に面白い。

『FACT FULNESS』とは、「事実に基づく世界の見方」のことだ。本書では、「分断本能」「ネガティブ本能」など、私たちが捕らわれている「ドラマチックな見方」に警鐘を鳴らしてくれる。

例えば、「分断本能」。分断本能はこう語られる。

人は誰しも、さまざまな物事や人々を2つのグループに分けないと気が済まないものだ。そして、その2つのグループの間には、決して埋まることのない溝があるはずだと思い込む。それが分断本能だ。

「わたしたち先進国」と「あなたたち発展途上国」のように、世界は分断されているとドラマチックに思い込んでしまっているらしい。その通りだ。しかし、本書の圧倒的データ量によって、今までの思い込みは覆される。

ふと、学校の職員室が浮かぶ。「わたしたちICTが使える教員」と「あなたたちICTが使えない教員」や「わたしたち学級経営大事な教員」と「あなたたち授業づくり大事な教員」。異動の時期だから「わたしたち古参組」と「あなたたち新加入組」なんてのもすぐに頭に浮かんできた。たしかに無意識に分断してしまっている。

だが、分断本能に対して『FACT FULNESS』ではこう述べられる。

多くの場合、実際には分断はなく、誰もいないと思われていた中間部分に大半の人がいる。

「ICTが使える教員」と「ICTが使えない教員」の間には「ICTを使いたいと思っている教員」「ICTを使っているけれど周囲に知らせたくない教員」など様々な中間部分が存在する。一概に分断できるほど世界は簡単ではなく、もっと複雑である。

こういった感じで、『FACT FULNESS』と「学校の異動」について、考えたことを書いていく。

分断本能。「わたしたち古参組」と「あなたたち新加入組」というような思考が生まれたら気を付けよう。職員は毎年入れ替わる。大半の人はその中間に属している。

ネガティブ本能。悪い出来事の方が広まりやすい。新しい職員は、どうしてもネガティブな話が耳に入る。それが全てではないと覚えておこう。「今悪い」と「良くなっている」は両立する。新任地が「悪い」と見えても、決して否定してはいけない。もう一度言う。「今悪い」と「良くなっている」は両立する。

恐怖本能。恐ろしいものには、自然と目がいってしまう。世界は実際より恐ろしく見える。恐ろしい情報ばかり感知してしまう。だからこそ、落ち着いて、現状をよく見よう。

パターン化本能。人間はいつも何も考えずに物事をパターン化し、それを全てに、無意識に当てはめてしまう。決して「前任校」のやり方がうまくいったと思わないように。ましてや「新任地」で「前任校では~」などという枕詞を使わないように。その通りにしたらうまくいくなどというパターンは存在しない。地域の数だけ実態がある。

宿命本能。世界が変わらないように見えるのは、変化がゆっくりと少しずつ起きているからだ。もし、「新任地」の現状を批判でもしてしまったら、これまでの努力に水を差すことになってしまう。小さな変化に気づける自分であろう。

単純化本能。ひとつの視点だけでは世界を理解できない。世界は単純じゃない。専門知識が邪魔をすると、実際に効果のある解決方法が見えなくなる。まずは、「新任地」のやり方に浸かろう。

犯人捜し本能。物事がうまくいかないと、誰かがわざと悪いことを仕組んだように思いがちだ。「新任地」のせいにしないようにしよう。だったら、自分が行動すればいい。

焦り本能。恐れに支配され、時間に追われて最悪のケースが頭に浮かぶと、人は愚かな判断をしてしまう。「新任地」では時間に追われるのが常。自分の焦りに気づけるようになろう。深呼吸しよう。地道な一歩を歩もう。

圧倒的なデータ量と細密な具体例が載せられているこの本。読了後、誰もが著者に敬意を払うだろう。積読しておくなんてもったいなかった。おすすめの一冊です。

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