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TK(凛として時雨) Bi-Phase Brain "R side"@Bunkamuraオーチャードホール

12月23日、凛として時雨のTKの誕生日である。
先日は毎年彼の誕生日に行われるアコースティックライブに行ってきた。

バイオリン:須原杏
ベース:鈴木正人
ピアノ:小松陽子
ドラム:柏倉隆史
ステージ演出:suzuki takayuki
ゲストホーカル:安藤裕子

ドラムがあの柏倉さん?ステージ演出が「仕立て屋のサーカス」で有名なデザイナーのsuzuki takayukiさん?想像できそうで想像できない、字面のみで見る豪華な顔ぶれから想像するライブはとても楽しみで仕方なかった。

私は仕事で開演に間に合わず2曲目の終わりに会場到着、3曲目から着席し鑑賞。案内スタッフしかいない廊下でもどっしり聴こえる「this is this?」も圧倒的だった。

スタッフの案内で2階席の一番後ろという特等席に座る。すでにTKの世界が繰り広げられていた。


「fragile」は3年前にAimerと一夜限りのコラボをした貴重な一曲だ。TKの歌う裏側で、Aimerのどこか広く深いハスキーな強く優しい歌声が聴こえた気がした。

ステージにはsuzuki takayukiの演出による丁寧に破られ、はぎれとなった白い布が紡がれ弧を描くように数本垂れていた。逆にTKが「仕立て屋のサーカス」にライブしにきたかのようにも見えた。
「secret cm」を歌い出す。少し重いエメラルドグリーンの照明と布の融合は、一気に神秘の樹海に導く。剥き出しのTKの歌は寒風が吹くようで、全身がぞわりとした。
「Signal」は面影を残したアレンジが凄くよくて、特に杏さんの上品で芯のあるバイオリンは珠玉で美しかった。

「make up syndrome」ではTKがピアノに腰掛ける。凛として時雨での音の洪水が止まらないこの曲をピアノで弾き語り.....345とピエール中野の影が見えた様な気がしたが、気のせいだったみたいだ。TK1人で歌い切る「make up syndrome」はそれでも原型を留めていて、完全なる完成形だった。
凛として時雨でも演奏したら絶対映えると思う「Showcase Reflection」はもはやアコースティックでは無かった。格別ミュージシャンの集中力の凄まじさを痛感した曲だった。


アコースティックのライブほぼ全ての曲がアレンジされているので、次に来る曲が読めない。このコードならあの曲か?TKがギターを持ち替えたからあの曲くるか?バンドセットとは違うアコースティックセット、それがアコースティックライブの1番の醍醐味だ。


ここで事前に告知されていたゲストボーカルの安藤裕子さんが登場。
「Last Eyes」「Shinkiro」をコラボレーション。始めて拝見した安藤さん、ホールごと包み込むほどに響く歌声は圧巻だった。「Shinkiro」の音源ではゲストボーカルに独特な歌声で有名なCharaが歌っているが、Charaのリズミカルで可愛らしい歌い方とは対照的に、曲の重みを全て受け取ったかのようにしっとり歌い上げる安藤さんのアダルトなアルトボイスも魅力的だった。

TKがアコギを持ったまま「eF」を、弦が全てはち切れるのではないかくらいの勢いでかき鳴らしていた。TK特有のはっきりとしたアコギの音が性癖にザクザク突き刺さった。

今回のライブで特に印象的だったのは「Fantastic Magic」。柏倉さんが叩く「Fantastic Magic」があまりにもカッコ良すぎて首ごと昇天した。TKと柏倉さんの間で誠実にはじくチェロがそれまたいい味で、おかげで飛んだ頭は割とすぐに戻ってきた。TK、ベース、ドラムのみというシンプルな編成だったが、アコースティックなのにアコースティックとは思えない音数で快感だった。

TKがピアノに座り、教会のオルガンのような溢れるような音色で「illusion is mine」を演奏。男性らしい強い鍵盤の音、そして滲み出る誠実で丁寧な弾き方が、1音鳴らすたびにポロン、ポロンと滴が落ちた。淡く鮮やかな斜陽が差す透明度50%の薄紅色の水のなか、体温と同じぐらいの温度で気持ちよく溺れていた。

「kathasis」で本編は終了。言葉に表せないほど圧巻だった。

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アンコールでは最初にTKのみ登場。
「さっきはチューニング間違えたまま弾いてしまった。ごめんなさい」と謝りながらギターを持つ。チューニング間違えてたの、全然気がつかなかった。そして「CRAZY感情STYLE」を歌い始める、その途端目ん玉が飛び出るくらい驚いた。実はこの曲はずっと好きで何かあれば密かにリクエストしたり、聴きたいと何かしら呟いていた曲だった。

「僕のせいで死んじゃえばいいよ」

君のせいで死ねるなら、殺してくれよ。

そして安藤裕子が再登場し、「white silence」で再びコラボレーション。安藤さんの歌声は全身から声が出ているようで、たった1人の歌声でオーチャードホールを物にするほどの歌唱力は本当に凄いと思った。安藤さんの歌声は、女性の力強さだった。

ラストは「unravel」で締めくくった。TKはギターを持たずハンドマイクで、TKの歌声と小松さんの儚げでしなやかなピアノとしばらく歩いた。それは雪の降る街、街灯が「寒いね」「そうだね」とマフラーで口元まで隠した若い男女を見下ろすような、何かのストーリーのシーンと同じ景色が見えた。ラストのサビで芯のある杏さんのバイオリンが加わり終焉した。ギターを持たない分、全身全霊自分の声に感情をぶつけていて苦しかった。彼の曲は何故か孤独で苦しいのだ。でも、アコースティックの「unravel」はしっとりと上品で美しい景色だった。

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「アコースティックライブ」は「剥き出し」になる。「剥き出しの音楽」を聴ける機会というのは、とても貴重なのだ。

TKの歌声も、ギターも、何から何までだ。弾くギターの弦、スライドした時の音、エフェクターを切り替える音、それがここオーチャードホールという神聖な会場とsuzuki takayukiの白い布の世界では、少しもノイズになんてならない。全ての音を芸術として掬い取ってしまう、素晴らしくも恐ろしい空間だった。

終始鳥肌が止まらなかった。あんなにぞわぞわしたライブも初めてで、本物が創る圧巻の世界だった。一音一音丁寧に鳴る音楽、大人の贅沢な時間だった。

TKさん、誕生日おめでとうございました。
聴けなかった最初の曲はTwitterで判明いたしました。

1.新曲
2.this is this?
3.fragile
4.secret cm
5.Signal
6.make up Syndrome
7.Showcase Reflection
8.last eyes /with安藤裕子
9.Shinkiro /with安藤裕子
10.eF
11.Fantastic Magic
12.illusion is mine
13.katharsis

en.1 CRAZY感情STYLE
en.2white silence /with安藤裕子
en.3 unravel

ps.
國光さん、鎌野さん、吉田さんその他多数の方も見にきていらしたみたいですね。
國光さん「katharsis」聴けてよかったね!!

suzuki takayukiさんの舞台演出素敵すぎた。ただの白い布、たかが白い布。ステージに飾られた「白いはぎれ」はナイーブな軽やかさではなく、重厚感を感じた。いつか仕立て屋のサーカス見に行きたい。ああいう舞台演出もコラボしたライブは始めて見た。最高のライブ納めになりました。
来年のツアー申し込んだ。アルバムも楽しみ。

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