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武者小路実篤の理想郷「新しき村」に行ってきた

ずっと前から行こう行こうと思って、なかなか足を運べなかった「新しき村」にようやく伺うことができました。

新しき村とは、白樺派の作家である武者小路実篤がはじめた理想郷です。
当初は宮崎県の方にあったのですが、ダムで農地が水没してしまうため、1939年に埼玉県に移転してきました。

新しき村がなぜ理想郷かというと、そのスピリッツにあります。
公式サイトから引用してみます。

■新しき村の精神
新しき村は、武者小路実篤が提唱した、新しき村の精神に則った生活をすることを目指して、その活動を続けている。

その精神とは、
・全世界の人間が天命を全うし、各個人の中にある自我を生長させることを理想とする。
・自己を生かすため、他人の自我を害してはならない。
・全世界の人々が我らと同じ精神、同一の生活方法をとることによってその義務を果たし、自由を楽しみ、正しく生き、天命を全うすることができる道を歩くように心がける。
・かくのごとき生活を目指すもの、かくのごとき生活の可能性を信じ、また望むもの、それは我らの兄弟姉妹である。

村の概要

果たして、実際はどんなところなのでしょうか?

真夏の暑い最中、新しき村は八高線の小さい踏切を渡った向こうにありました。

「この道より我を生かす道はなし この道を行く」のポールと石碑が来村者を出迎えてくれます。

少し前までは、「この門に入るものは自己と他人の 生命を尊重しなければならない」と書かれたポールがあったはずですが、今はなぜか無くなっています。
台風などの影響で、撤去されたのでしょうか……。

一歩、村に踏み入れると、ちょっと不思議な感じがしました。
日本の村ではあるのだけど、少し時が止まっているというか、空気感までも異なる印象です。

まるでジブリで出てくる異世界のようです。

ただ一方で、太陽光発電などもおこなっているので、現世感もあります。

ひと気もほとんどないですね。
村を歩いている自分だけが、夾雑物なのかもしれません。

ここに自分は居ても、よいのだろうか?

そんな疑問も自然とわいてきます。

村の奥まったところには、武者小路実篤記念「新しき美術館」があります。
入館料はたった200円。
安い!

しかし、人がいる気配がしません。美術館といっても、民家のようですし、入るのに勇気が要ります。

ですが、ここまで来たからには踏み入れるしかありません。引き返す選択肢はないのです。

こんにちわ~!と言いながら、扉を開けるとひんやりとした空気。
クーラーがバリバリ効いています。

すると中から、70歳ぐらいのおじさんが出てきました。

館内の電気を点けながら「ゆっくり見ていってよ」とのこと。

撮影は禁止だったので、館内の写真は撮りませんでしたが、武者小路実篤の描かれた日本画も多く展示してありました。

志賀直哉曰く「武者小路の絵はもう素人芸とは云えない」の他、梅原龍三郎や中川一政らも絶賛する日本画は、素朴なタッチの中にも力強さを感じさせるものでした。
大地に根付いた大木のようにどっしりした印象です。

途中から、館内のおじさんによる案内も始まり、理解も深まりました。
なお、この美術館は県民の日だと無料になるようです。
また来よう。

外に出ると、また夏の暑さとの再会です。
村の地図もありました。

目を引く、石碑や建物もあります。

全体的には、昭和の田舎風の建物が多いです。

ただ極めつけは、都電でしょう。

昔、新しき村で、幼稚園の園舎として使われていたとのこと。

しかしまあ、本当にジブリっぽいです。

この世とあの世の間にある「世界」に足を踏み入れたようでした。
真夏でありつつも、どこかひんやりとした空気が流れていたのも印象的。

自分の魂も洗われたようでした。

また来よう、新しき村に。

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