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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2021年3月の記事一覧

短歌 加工 十首

短歌 加工 十首

1
スカートを揺らす花風 死んだってAIがいるからもう大丈夫

2
「新宿で人身事故が起きました」他人事としてアプリを閉じる

3
パスポート渡航予定に天国と書けば窓口のひとが微笑む

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Facebook 亡き人の誕生日 あひるみたいに画面を見つめる

5
雨が降る 季節の絶縁体はいま慈愛顔してひたいにしみる

6
なにもかも化学反応というのならこの虚しさも分解してよ

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オルゴール響く待合

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短歌 三日月 十首

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曇天を裂いて光ったスマホには返事の返事みたいのが来る

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触れた舌すら体温をいつの日か失うことがこんなにこわい

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ペーストをしたら見たことない星座が春のシーツにるんと生まれた

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三日月が目薬の邪魔になるから毎回口が開いてしまう

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かち割って半分を食んだくるみのたぶんこちらが左脳でしょうね

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6弦を上手く使えば三日月を捕らえることができるとの説

7
眠れないのは三日月が薄目開

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短歌 バランス 十首

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遠雷を聞くコンビニのイートインぬるいうどんが今はおいしい

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忘れ物しか忘れずに生きてきたからノーベル賞をもらってもいい

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生まれ変わったらシーソーのまんなかでバランスをとる名人になる

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名を呼ばれても振り向かず雨粒も拒絶しビニール傘を広げる

5
制服にカッター入れた夜のことを誰よりも知るスマホの画面

6
カッターで刻んだイニシャル誰よりも私を見ていたボロ机

7
雨上がり初め

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短歌 他人事 十首

短歌 他人事 十首

1
ステータス「どく」のまんまで日の入りを待っている道もう歩けない

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春雷に傘はいらないもう少しだけ罪人でいさせてほしい

3
傘さして雨粒にさえ拒まれて骨になるまでひとりでいたい

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焼きたてのパンをちぎってくれたからきみにいいことありますように

5
切りすぎた爪にごめんと呟いたきみはいささか気持ちが過ぎる

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じゃがいもの芽を取るひとが毒親と呼ばれて作る今宵のカレー

7
新作のスイ

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短歌 魚 十首

短歌 魚 十首


捨てられるだけの尾ひれがひらひらと彼岸で我を手招いている


この街にかもめはいない錆びた目をひっさげ歩く魚ならいる


包丁のせなで弾かれゆく鱗きらきらとしてああ生きていた


包丁でずんと切断した頭部にごめんと添えて生ごみ入れに


スーパーの鮮魚売り場で泣いていた魚の目をしたかわいい少女


パック詰めされた魚の瞳にも素敵な世界は映るだろうか


遠い星からはるばるとやってき

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短歌 勾配 十首

短歌 勾配 十首

1
若さとはあっという間に過ぎるからせめて各駅停車で帰る

2
切り分けたケーキの小さいほう選ぶそういう人から幸せになれ

3
春、薄いブラウスをすぐ脱ぐときの罪悪感は酸味が強い

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ポケットにあったプリクラ加工機能なんてなかった頃のプリクラ

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かさぶたを剥がしたあとの闘った証はすぐにゴミ箱へゆく

6
花束をばらす時まずリボンから捨ててしまうきみをそれでも

7
それは呪文? コーラを振っ

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短歌 声援 十首

1
右上に赤い数字が灯るたび白い小鳥がぴこりんと笑む

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切りすぎた前髪を誰も気にしない本日はよく晴れていますね

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しゃぶしゃぶと2回言わなきゃいけないと道徳の時間に知りました

4
がんばれやごめんなさいが命令形なんて気づかず生きてゆけたら

5
帰り道蹴飛ばした小石の数だけ笑っていいと制度化してよ

6
言い訳が上手くなるたび弱くなる心音が海にかえりたがる

7
波音をスマートフォンに閉

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短歌 雲雀 十首と日記

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宝箱閉じるみたいに命日がいつになるかは触れないでおく

2
By the way , why were you the rain? ってなんで英語で遺言するの

3
編み物が好きでしたよねよくここで変な模様を編んでいました

4
雪だるまに名前をつけた3月にショーンとメグはどろりと溶けた

5
シャンプーの詰め替えをするときにだけ地球にやさしい自分になれる

6
片道で2時間かかる学び舎に好き

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