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「クライエントとの関係性密度を高める」 臨床心理士への随録

心理援助の場面では、最初に援助の枠組みをつくることが重要です。治療構造がクライエントとの関係性の密度をつくり、援助行為の効果に影響します。

そのために、初回のインテーク面接で、クライエントの主訴を聴き、支援の方向性を含む見立てを行います。何を目的やゴールにして心理面接を行うのか、面接の頻度、時間や料金、守秘義務などについて相互の同意をとります。双方による意識のすり合わせが重要です。最初にすべてがあると言っても過言ではありません。

ビジネス場面での、期初に行うミッション設定面談に似ているなと思いました。私がいた当時のリクルートでは、期間目標(ミッション)は上からのお達しではありませんでした。会社からの要求は当然あるものの、目標そのものや達成プロセスについて上司と当事者で議論を交わし、納得できるミッションをつくっていました。二時間かけたこともあります。自分の意志が反映されているのでコミットメントの密度が違います。やるしかないのです。

セラピストにできることは、クライエント自らによる自己実現傾向の発揮を促進する援助支援です。どちらかが意欲的になりすぎたり依存的すぎても良い関係性とはいえません。枠が組まれ、役割を理解し、目標を共有することで、治療への集中力が生まれるのです。

前提として一番大切なのは、クライエントとセラピストの信頼関係です。セラピストは無条件の肯定的配慮、共感的理解、真実性をもってクライエントと向き合わねばなりません。溝口純二先生が初回面接でよく用いるという台詞に、セラピストの真実性(正直性と言い換えても良いかもしれません)が集約されてるように感じます。

「人には相性というものがあって、馬が合う、合わないなんて言葉もあります。この相性というのはカウンセリングでも大事で、これからお付き合いが長くなるかもしれないので、あなたと私の相性が合うかどうか考えておいてください。私も考えます。」

参考:溝口純二「心理療法の開始について」臨床心理学研究 (1), 51-61, 2003