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ピグマリオン効果〜想いは届くのメカニズム|臨床心理士への随録 心理学

ピグマリオン効果とは、教師が特定の生徒に高い期待を持つことにより、その生徒の学習成績が過度に上昇する効果をいいます。ローゼンタールによって見出された教育心理学における心理的行動のひとつです。

ローゼンタールはある小学校のクラスを対象に知能テストを行う実験をしました。担任教師には「このテストによって今後成績が伸びる生徒が分かる」と説明しつつも、実際に実施したのはそのような判別機能のない知能テストです。テスト後、結果に関係なく無作為に何名かの生徒を抽出し、「成績が伸びるのは、この生徒たちだ」と教師に伝えました。その後、教師は特定の生徒を贔屓することなく授業を行いましたが、なんと抽出された生徒たちの成績が劇的に向上したのです。

なぜこのような現象が起きたのでしょう。それは、教師の意識が目線や語気などの行動に反映し、生徒はそれをポジティブな刺激として受け取り、その気になって自分で努力したから、と心理学では解釈しています。

つまり、教師が選ばれた生徒たちを贔屓しないと意識したことにより、結果的に何かしらの意識が働くことになり、生徒は「なんか最近、先生の自分に対する態度が変わったなあ、俺の良さを認めてくれたのかな。悪くない気分やわ、もっとやったろ」と、勉強に対する意欲が高まったのです。生徒には返報性の原理が働き、自己成就予言の現象(期待されるということは、自分は期待されるだけの人間であると信じ込み、本当にそのような状態になること)が起きたのです。

私はこのピグマリオン効果を知って、本格的に心理学にのめり込んでいったところがあります。

超能力とか嫌いじゃないし、科学が全てだとも思わなのですが、「想いは伝わる」という言葉の謎が解けた瞬間でした。それはテレパシーではなくて、意識→行動→刺激→認知→反応なのです。「以心伝心」「空気を読む」「察する」、サッカーで言う「アイコンタクト」の工藤静香よろしく目と目で通じ合うあの感覚にも説明がつきます。目から鱗でした。

臨床現場でクライエントに対峙するとき、自分が今感じている想いを常に意識しています。外面を取り繕っても、表情とか声に反映しているわけです。その刺激をどう認知するかは相手次第だし、全ての想いを馬鹿正直に言うのも違うのだけど、基本的に全部バレバレである前提に立ったほうが、相手の傷を広げることは少ないように思います。これがC.ロジャーズが唱えるPersonal Congruence(自己一致、純粋性、真実性)なのでしょう。

ピグマリオン効果が、期待によって人が良い方向に変化する効果を指すものなら、その逆にあたる考えがゴーレム効果です。 悪い印象を持って接することにより、その人が実際に悪い成果の方へ向かう現象を指します。信ずればその通りに成るなんて、人の想いは薬サプリメントでもあり毒でもあるのですね。

参考:https://bizhint.jp/keyword/63808

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