未然にメンタル不調の芽を摘む試み|ココカリ心理学コラム
都心のメンタルクリニックには、適応障害やうつ病で苦しむ患者さんが多く来院する。職場の人間関係、業務内容と自分の特性との相性、ストレスとの付き合い方など、その要因は多岐にわたる。信頼できる誰かに相談できていれば…周囲の誰かが手を差し伸べられていれば…精神病を患うことはなかったかもしれない。
メンタルクリニックに勤める心理職は、病気からの回復を支援することになる。コミュニティ心理学でいえば、二次予防(早期発見・早期治療)と三次予防(再発予防)に該当する。この機能も当然大切なのだが、病気にならないようにする一次予防はもっと大切だろうと思う。残念ながら医院で待っている限りは、ここへのリーチは届きにくい。
今年の夏明けから、とあるスタートアップ企業のお手伝いをしている。
こちらの会社が提供しているサービスは、パーソナル・キャリアトレーニング。弊社トレーナーは一歩踏み出したい若者の価値観やキャリアの整理に伴走する。独自性は短期集中で一気に練り上げるスケジュール感と、使用しているワークシートで、キャリア理論に臨床心理学を掛け合わせたようなプログラムにある。私は主にプロダクト強化とトレーナー教育を請け負っている。
利用者さんの性格や特性は千差万別で、中には大きな認知の偏りを持った方や、精神病一歩手前な状態の方もいる。ここで何か手を打てれば、キャリアという切り口から精神衛生の一時予防ができると感じたのだ。
コミュニティ心理学は、地域社会で生活を営む人々に対する、心の問題の発生予防、心の支援、社会能力の向上、生活環境の整備、心に関する情報提供を行うものである。その理念には病理性よりも健康性に焦点を当てることや、専門家と非専門家の協働などが盛り込まれており、まさにこれを地で行く取り組みなのだと思う。
未然にメンタル不調の芽を摘むことができるのか…、挑戦である。