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「日々進行する認知症と、怒りの感情」 臨床心理士への随録 心理学

自宅近所にある特別養護老人ホームにて、ショートステイに来られる認知症高齢者の傾聴ボランティアを行っています。四月から大学院が始まり、生活リズムを掴むまで少しお休みしていたのですが、先月より復帰しました。今日も今から行ってきます。

今年一月に初めてお話ししたおばあさんと久しぶりにお会いしたら、怒りっぽい性格に変容されていて、大きな衝撃を受けました。

感情のコントロールや理性的な行動を司る前頭葉が委縮することで発症する前頭側頭型認知症では、症状として人格が変わって怒りやすくなることがあります。認知症までいかなくても老化現象として前頭葉の機能は低下していきますので、高齢になるにつれて感情の抑制は難しくなっていきます。病気や老化のせいで怒っており、私に過失がある訳ではないのですが、やはり叱責されると色々な意味で辛い気持ちになってしまいます。

高校時代、私の怖いものは"人間の感情"でした。抑止のきかない爆発している喜怒哀楽や憎しみの感情ってなんか恐ろしくないですか?自分の周囲にヒステリック気質な人がいた記憶はないのですが、人間の感情(自身の感情も含めて)は得体が知れないと思っていました。ちなみに小中時代はおばけが怖かったです。

認知症による怒りへ対応は、今の本人の不安、恐怖、他者への怒りや失望などの感情に共感することが大切です。怒りの矛先は、たまたま傍にいた者に向けられますが、実際は他の者や周囲の出来事、空想の世界のものなのです。それゆえに、認知症の人の感情に共感することで、あなたが怒りの対象ではなくなります。

認知症を理解する礎として、9大法則と1原則がよく用いられます。その原則とは、「認知症の人の形成している世界を理解し大切にすること。そして、その世界と現実とのギャップを感じさせないようにすること」です。認知症は今のところ不治の病です。進行を遅らせる薬や療法はありますが、完治させる方略はありません。患者さんの世界観を受容し、QOLを高めるようなケアが求められます。