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親や伴侶の介護に困惑する家族〜認知症カフェで家族会を実施した話|ココカリ心理学コラム

勤務する認知症疾患医療センターでは、月イチのペースで認知症カフェを運営しています。今期は春と秋に「認知症を患う家族の介護者会(通称、家族会)」を実施しました。家族介護の当事者会です。

まずは参加者同士の自己紹介、「家族の誰を介護しているか」「要介護度」「今日の会に何を期待しているか」を話してもらいました。環境や状況は人それぞれ様々です。この項目はお互いの目線揃えに役立ちます。

話し合い・語り合いの時間では、ひとつだけグランドルールを設定しました。「他者の介護を否定しないこと」。皆それぞれに手探りで頑張っているし、家族の形だけ介護の形があることを忘れないこと。今日ここに集まった皆さんは近隣に住む同志なので、批判ではなく労う形で互いに仲良くやりましょう、と呼びかけました。

心理的安全性が保たれたからか、みなさん、苦労話や愚痴が出てくる、出てくる笑。この場はそういう場なので、思う存分に喋ってくださいとお願いしました。後半パートは、介護における自分なりの工夫を語ってもらい、各々に新たな気づきが得られたようでした。縦だけではなく、横の関係も大切ですね。

さて、心理士目線からで恐縮ですが、認知症を患った家族を介護することになった際に、大事にしてもらいたいことがあります。家族会を通じて改めて思った3点を書きだしてみます。

認知症を理解する

認知症の症状は人によって個人差があるものの、ほぼ共通に現れるものもあります。まずは基礎知識を頭に入れましょう。これだけで介護の見通しが立てられます。先のゴールが見えているか否かで、精神的な負担は天と地ほどの差になります。

お薦めの本を一冊と言われたらこれかもしれません。認知症の人が何を感じているのか、その気持ちがわかるようになります。認知症の人が穏やかに落ち着く声かけや接し方が掲載されています。独りで介護を抱え込まないために利用できるサービスや周りの人との協力の仕方も参考になるでしょう。

病が進行しにくい環境つくり

認知症は治りません、残念ながら不治の病です。新薬レカネマブも早期発見ではないと効果が得られにくいとされています。しかし、進行を遅らすことは可能です。周囲が怒らない、イライラしない、おだやかでいる、これだけです。ただ、これが難しいのです。特に肉親の介護だと、なまじ罹患前の姿言動を知っているため、症状進行による変化を「ダメになっていく感じ」と捉えてしまい、冷静に正視できなくなるのです。

認知症は脳の病気です。病気の影響で変化が起きているのだと認識することから始めましょう。また、ダメになっているわけではなく、それは変化です。その変化にこちらが適応していけば、互いにストレスを抱えることはないのです。

自分が参ってしまわない仕組みつくり

「レスパイトケア」という言葉をご存知ですか?レスパイトとは「休息」「小休止」「息抜き」を意味する言葉です。レスパイトケアとは、介護にあたるご家族様が一時的に介護から解放されるよう、代理の機関や公的サービスなどが一時的に介護等をおこなうことで、介護を担う家族と本人がリフレッシュできる期間を作るさまざまな支援サービスのことです。

介護施設のショートステイが使えます。数日間施設に入所して、食事、入浴、リハビリ、レクリエーションなどを受けられます。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームなどで行えます。

病院入院も使えます。常に医療管理が必要な方を、病院で一定期間受け入れるサービスです。治療や検査目的の入院ではなく、本人の心身の回復、機能維持を図るとともに、家族も休息時間を確保できるでしょう。ショートステイでは難しい医療依存度の高い方も受け入れることができる医療保険の仕組みです。

介護福祉では、デイサービス、ヘルパー、訪問看護など、サービスは多岐に渡り充実してきました。介護を家族だけでやろうとするのはエゴです。自分も家族も疲弊していきます。支援サービスをどれだけ利用できるかを考えましょう。

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家族会のような地域密着で横で繋がれる機会は継続することに意味があります。単発で終わらせずに、文化として根付かせていきたいです。

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