一番切り取られたくなかった話をテレビ放映されたときに
※この記事はライティング・ゼミで書いた記事です。ちょっと編集しました※
「なかなか他の人がしたことのないような体験自体、コンテンツになりえます」
ライティング・ゼミの第五講を配信視聴しながら30数年の人生を振り返る。わたしにもいくつか「そういえばあれって」と、話題になりそうなエピソードがあったことを思い出す。
そのうちの一つが、ある番組で取材を受けた様子がテレビ放映されたことだった。2018年。4年前のことだ。
取材を受けた。テレビに出た。
ここだけ聞くと、自慢のようにも聞こえてしまうのかもしれない。確かに、取材を受けたこと自体とても奇特で、ありがたい経験だった。さらにその様子がテレビで放映されるなんて、きっとこれからの人生でもなかなか無いことだろうとは思う。
ただ、放映された番組を見ながら、血の気が引いていく自分がいたというのが当時の本音だった。
テレビ画面に映るわたしはせきららにこう話していた。
「実は子どもを一度叩いてしまったことがあって……」
まさか。
まさかこの一部分が使われることになろうとは。
そんな想像全くといっていいほどしていなかった。
私は動揺した。
「この放送を見たひとには、わたしはどんな風に映ってしまうんだろう」
非難されるのではないか。
白い目で見られてしまうのではないか。
子どもを叩いたことがあるだなんて、ひどい母親だと思われてしまうのではないか。
ついでにわたしの人間性も否定されてしまうのではないだろうか。
そんな不安が一気に押し寄せてきたのを覚えている。
自意識過剰と言われればその通りだろう。
が、しかし、まさかこの発言が切り取って使われるとは。
前職を退職した時のこと。
育児に専念するなかでアイデンティティを失った自分が陥った状態のこと。そして、再就職に向けて動き出してからの自分と家族の変化。
1時間ほどかけてインタビューしていただいた。
掘り下げてもらったインタビューのやりとりは、いずこに。
芸能人が、自分の意図とは違うかたちで編集されたワイドショーや雑誌に対して「全体を聞いてもらえれば受け手の感じ方も変わるはず。あれは一部分だけを切り取られた」と主張するのを目にしたことがある。まさかわたしも、そんな主張を世の中に対してしたくなるような場面に出くわすとは。
当時わたしは、ママ達の再就職を支援するスピーチコンテストにファイナリストとして参加していた。そのコンテスト準備期間中から当日を迎えるまでの様子を取材していただいた。
人生初めて取材を受けることに、やはり少なからず緊張していた。インタビューの様子を終始カメラに映されている。受け答えを周りで聴いているスタッフも何人かいらっしゃる。
「変なことは言えない。正しい発言をしないと」
たまに顔を出す無意識の優等生ぶりが発揮されていたんだろう。多少ひきつりながらも終始笑顔でインタビューは進んでいった。
ただ、「本音を喋っていないかも。表面的なことしか答えられていないかも」そんな気持ちがどこかにあったのも事実だ。
放映された番組を見て思った。
本音を喋った一部分がしっかり切り取られている。
取り繕っていないわたしが映っていた。
ひどく狼狽した反面、さすがプロだな! と唸りもした。
表面的な受け答えをしたであろう部分は、プロのインタビュアー(ディレクター)にはバレバレだったのかもしれない。よく見てらっしゃるなぁと思った。
番組終了後、呆然とした。
ただ、予想とは違い、応援メッセージがいくつか届いた。心底救われた。
「育児にもワンオペ生活にも追い詰められて、子どもにあたってしまう自分に罪悪感を感じる母親は実は少なくないはず。あなたの発信で勇気をもらえたお母さんもいたんじゃないかしら」
そうか。
そんな捉え方があったのか。
その応援メッセージはまさにわたしにとって救世主だった。
狼狽していたわたしのベクトルは、自分だけに向けられていたことに気づいた。自分の心配だけに。
言いづらいことを、思いがけず共有したことで、わたしと同様に罪悪感を感じている世のお母さん方と、一瞬でも繋がれたのかもしれない。
そんなふうに思うと、動揺していたきもちが、不思議とすーっと落ち着いていった。
子どもや家族のことを優先することは素晴らしいこと。
だけれど、それと同じくらい自分のことも大切にしてあげていい。
自分の夢も大切にしてあげていい。
それが、まわりまわって家族を大事にすることに繋がる。
そんなメッセージを、もしも受け取ってくれたお母さん方が一人でもいらっしゃるとしたら、こんなに嬉しいことはない。
ベクトルを外に向けて視点を広げると、自分にもひとにも優しい世界が広がっている。そんなことに、今回の体験から初めて気づかされた。
あれから数年が経ち、長男の成長とともにわたしも心について学び、コーチングをライフワークとするようになった。
もし今「子どもを叩いてしまったことがある」と打ち明けてくれるお母さんがいたら、まず何よりも「言いづらいことを打ち明けてくれてありがとう。打ち明けること、とてもとても勇気が必要でしたよね」と伝えたい。
それに「人に話せたという事実が、きっとあなたの力になります」とも。
本当は誰かに聞いてもらいたいのに言葉にすることを躊躇していること、きっと誰しもひとつやふたつあるのだろうと思う。
それを内のなかに留め続けると、言葉にならない思いはどんどん腐っていく。
わたしの場合は一瞬の痛みを伴ったけれど、そんな体験は稀かもしれない。
自分の中で腐っていく前に、言葉にして人に伝える。聴いてもらう。
それが、必ず状況を変える力になるはずだ。
……と格好よくここまで語ってきたけれど、もし万が一、今後の人生で二度目の取材を受けることになったら。
その時は、もしできるのならば、編集方針を確認してから取材をお受けするかどうか決めたいな、というのが本音だけれど。
最後に。
取材に関わってくださった皆様へ。得難い体験をさせていただいたことに、改めて本当に感謝を伝えたい。体験することがなければ感じることのなかった思いが、気づきが、そこにはたくさんあった。
自分の心配しかなかった当時は気づけなかったことに、この体験を通して気づけた。アンテナが立つようになった。
わたしにできることはこうやって文章にするという小さなことかもしれない。けれどあの時、わたしを抜擢してくださった方、そしてインタビューに関わって下った多くの方(日曜日に数時間も費やしていただいた!)に、なにか少しでも恩をお返しできるとしたら。こんなに嬉しいことはない。
※長い文章でしたが、最後まで読んで下さりありがとうございました!※
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