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お父さんのためのコーチング講座

お父さんのためのコーチング講座

今日はお父さんたちのために,会社での部下育成に有効なコーチングについてワンポイントレッスン!

アドラー心理学では,褒めてもいけないし,叱ってもいけない,とされています。具体的にはどのように対処するのがよいでしょうか?

アドラー心理学では褒めることも叱ることも,「勇気くじき」であるとを言っています。

僕もこれに準じていて,ほめたり,叱ったり,言わば「賞罰」というのは表裏,真逆のようではありますが,元をたどれば与える者が強制的に従わせるという意味ではどちらも同じようなものですから,このような相談に対しては,いずれの方法も適切ではないと答えています。


賞罰 ―すなわち褒めることと叱ること― は,”得たい”と思うか,”回避したい”と思うかの違いはありますが,「褒められたい」も「叱られたくない」も(1)本来の目的として適切ではなく,歪んだ目的であること(2)いずれも耐性がついて徐々にエスカレートしていくものであること,から上司の行動として適切でないと考えています。

育成という視点では,「褒められたいから良い行動をする」ことは望ましくありません。「褒められないなら,良い行動はしない」ということになりますし,「褒められる」ことに慣れればより高度な「賞賛」が必要となるからです。

内発的動機でなく,褒める,評価するほか,給料をアップさせても,臨時ボーナスを出しても,一時の満足感は得られますがモチベーションにはつながりません(これらは衛生要因といわれ,不満を解消する要因ではありますが,モチベーションアップには繋がらず,エスカレートすることが知られています)。


しかし他方で,この「褒めても叱っても駄目」を曲解してはいけないんだけれどなぁ,と心配してもいます。


僕自身そうだったのですが

ほめてもダメ,叱ってもダメというと,
じゃぁどうするの?無視するの?スルーするの?それとも「ああそうなんだ」ぐらいで特別な反応しないことなの?

などと考えてしまいがちです。


あるいは逆にアドラー心理学のストイックな理屈に感銘を受けて,よしじゃぁ褒めるのもやめよう!叱るのもやめよう!とそれをそのまま実行してしまうこともあります。放置というか放任というか,野放しにしてしまうパターンです。

でも野放しはやっぱり最悪です。
上司が見守ってくれていることは,何よりも重要ですし,誰にも関心を持ってもらえないと感じてしまうようなコミュニティで健全に成長することはできないでしょう。


具体的な対応を考えてみた。

たとえば部下が大きな成果をあげたときはどのように話をしたほうがよいでしょうか。
反対に毎日のように遅刻をしてくる部下の適切でない行為に対してはどうでしょう。
これでもやっぱり褒めても,叱ってもいけないのでしょうか。

そうですよね。
アドラー心理学ってなんだか難しいんですよね。ホントに。
でも僕のコーチングではもうすこし柔らかく考えてもらっています。

人材育成に正解はありませんから,ルールでがんじがらめにして,自由を自分で手放してしまってはいけません。仕事はチームでするのですから,チームのみんなで少しずつ勉強して,みんなで少しずつ関係を構築していけば良いのです。

なので,上記のいろいろについても正直,ケースバイケースです!
身も蓋もない言い方で申し訳ないのですが,失敗を重ねてもらえばよいと思います。


とは言え,それで終わってしまうと相談受けた僕としては座りがわるいので,もう少しだけお話をしてみたいと思います。

絶対にほめてはいけないというわけではなく,同じケースでもひとによっては褒めたり叱ったりしたほうが勇気づけになることもありますから,反応を見ながら,ちゃんと伝わっているかどうか,自分自身で考えたり,感じたりしている余裕がもてているかどうか,そういうことをしっかり観ながらコーチングしていきましょう。
さて,具体にはどうするか。

純粋に部下を褒めることはあるでしょう。
ほめるという行為に上下関係(縦の関係)ができなければ,ほめたって構わないと僕は思います。

たとえばあなたの上司が会議で適切な発言をしたとして,「え,○○さん,すごい適切な意見が言えましたね。しっかり会議の内容を聞けていてすごいですね。」と言うでしょうか。
たとえば時間どおりに会議を進行できたからといって,上司を褒め称えるでしょうか。


ほめるという行為は,そもそも縦の関係を持っています。
できる者ができない者に対して,ウエからシタへ向かってされる行為が褒めるという行為です。

一方で,部下に対して本当に感嘆することはあるでしょう。
自分の想像を超えた(過去の自分に照らし,はるかにそれを凌駕する)結果を出したときもそうでしょうし,(上司である今の)自分よりもずっと効果の高いことをしたなんてのを目の当たりにすれば,自分の部下ながら感服することもあるでしょう。

それがすなわち「横の関係」で注がれる尊敬を含んだものであれば,ほめてもOKじゃないでしょうか(しかしまぁこの場合,褒めるというよりももっとチガウ表現になりそうですが)。
アドラー心理学ではこの「縦の関係」と「横の関係」がよく話題になります。

縦の関係では,勇気をくじくことにつながることが多く,適切な勇気づけを相互に行うことができる対等な関係,すなわち「横の関係」を築くことが非常に重要だからです。

さぁそして
具体的に褒めるでもなく,しかるでもない反応として大きく4つあげてみましょう。

1.感謝を伝える

感謝を伝えることはわかりやすいうえにやりやすいですね。
「ありがとう。」「助かったよ。」「君が来てくれてよかった。」
「君はうちの部署にはなくてはならない存在だよ。」
そんなふうに声をかけることで十分な勇気づけになるでしょう。


2.喜びを伝える

あなた自身がうれしいこと,楽しいこと,よかったと思ったことはそのまま伝えてあげて下さい。よい結果を出せたと自覚するときはうれしくて認めてもらいたいものです。

そのとき,上司として感じたことは「偉いなー,おまえスゴイなー。」ではなくて「あなたががんばったことに敬意を持ちます」「あなががんばってくれてわたしはうれしいです!」ではないでしょうか。

だから「そっかー。がんばってたもんな。」「うれしそうだね!満足な結果が出せたんだな。私もうれしいよ。」なんて声をかけてあげてください。

結果でなくて,過程に目を向けて下さい。
上司がうれしいのは成功したからではなく,成功しようとがんばってきたことですから,その思いに共感してあげるのがよいと思います。
(なので,たとえ成功しなくてもがんばったことは認めてあげて欲しいと思います。そのうえでどう改善していくかを一緒に考えましょう。)

評価でよくあるのは減点方式で,しかるでもなく,褒めるでもなく,「注意する」とか「冷静に話をする」なら良いだろうと考えて,「何ができなかったのか考えてごらん?」とか「どこができなくて90点になったんだろう」とか,いかにもコーチングぽくするのも最初の反応としてはいかがなものかと思います。

(十分な共感と受容の後,改善に向けてコーチングする際にはこのような問いかけが続くと思いますが,マイナス要因に目を向けさせるよりも「さらに向上させるには何が必要だと思いますか?」「より完成に近づけるには,何をしていけばよいでしょうか?」という感じで未来解決型にしましょう。)


本人ががんばったと言っているのなら,それを他の誰かが「おまえならもっとできるはずだ」とか「これぐらいで喜んでいるようじゃまだまだだ」なんて無粋です。


3.承認する

承認する,というのはコーチングスキルとして重要なスキルです。言葉がなんとなく仰々しいので勘違いしがちなのですが,あなたのしたことを認めます!許可!!とそういうカンジではないです。

あなたの行動,感じたこと,考えたこと,価値観,などを事実そのままに認めるということです。ああそうしたんだね,そう考えたんだねなるほど,そんな風に感じるんだ,へぇ。それでOKです。

ただし,ノージャッジです。自分の評価をはさまずにただ事実を認めてあげてください。


そもそも感じたことや,価値観を他の誰かが否定することはできませんし,他の誰かが評価したところで,それは他の誰かの価値観に基づくもの,すなわち主観に過ぎません。

もちろん完全に主観を排除することはできないので,100%純粋な事実だけというわけにはいきませんが,まぁ可能な限り事実を事実として認めてあげてください。

「なるほどねー。」「ああうまくいったんだね。」「難しかったなーって思ったんだね」「あなたはそう考えて行動したんだね。」

そんなふうに声をかけてあげればOKです。ここに上司の主観をはさんだり,アドバイスを入れてはいけません。「もっとこうしたらいいよ」とか「そこは,そうじゃないよ」とか言えばかならず対立構造に発展します。それは縦の関係だからです。

(3と同様に,十分な承認の後,問いかけや提案,フィードバックによるコーチングが続くと良いですね。)


4.ポジティブな想い,長所について話す

これはまた,常にそう在りたいと思うことなのですが,結果に目を向けるだけでなく,それに至る過程でポジティブな気持ちを伝えることや,部下の長所について伝えること,そう在ってくれてうれしいという気持ちを伝えてあげて下さい。

うれしい,楽しい,大好き。
と昔の偉いひとは謳ったものです。
それぐらいポジティブな気持ちは伝染します。僕がうれしいなら,あなたもうれしいのです。あなたがうれしいなら,僕はここに居て良かったと思えるのです。


部下やチームのみんなが「自分はチームのために役に立つことができるんだ」と自分で思うことができるように,良いことは伝えてあげてください。それが大げさになったり,お世辞になったり,とってつけたような褒め言葉であったりすれば,ヒャクパー部下は見抜きます。だからこそ褒めるのもダメだと言っているのです。


テクニックではなく,心のいちばん奥に在る想いを引き出しましょう。
部下に愛情をもって接したいと思うなら,部下の成長を望むならそれにふさわしい言葉がきっとあります。

実際は信頼関係がしっかりとできあがれば,叱るも褒めるも有効に働くようになるでしょう。しかしそのときにはきっと「叱る」はもっと高いレベルの「相談」や「問いかけ」に,「褒める」はもっと共感的で親身な「喜び」に変わっているのではないかなと思います。

なんとなくその方が僕は好きです。

サポートいただけると燃えます。サポートしすぎると燃え尽きてしまうので,ほどほどにしてください。