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読書メモ

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記事一覧

読書メモ|『正欲』

朝井リョウさんの『正欲』。 待ちに待った映画化で、映画見たら原作ももう一回読みたくなったので改めて読んだ。 2021年の3月に発売されたこの本を、私はすぐに買って読んでいたらしい。 当時読んだ感想としては、「多様性」という言葉への批判に対する衝撃と、でも確かに自分の想像の及ぶ範囲での多様性しか頭になかったなという反省とが強かった気がする。 改めて読んでみると、誰もが多少なりとも辛いことや苦しみを抱えているということ、それを曝け出せる人と繋がることで救われるということへの

読書メモ|『おいしいごはんが食べられますように』

いつか買おうと思ってずっと先延ばしにしてしまっていたのをとうとう買って読みました。 読んでいて「うわぁ…」と思ってしまって重苦しい気持ちになるんだけど、めちゃくちゃリアルで「この感じ、身に覚えがあるぞ」と思う部分も多くて、しんどいのに何故か面白い、まじですごい話だなと思いました。 こういうことってあるよね、と簡単に要約して別の言葉で表現もできるんだろうけど、この”なんとも言えない、言い表せない感覚・感情”は物語を通じてでしか表現できないと思うし、物語を読むことでしか体験でき

読書メモ|『平熱のまま、この世界に熱狂したい』

著者が自身の経験を通して得た「弱さ」についての学びや気づきを、さまざまな角度から認めているエッセイ的な本。 印象に残っているポイントがいくつかあって、 一つは、自分が誰かに必要とされている実感がないと人間は生きていけない、そういう弱さがあるんじゃないかというところ。 人間って複雑だよなぁと思うのは、誰かにとってかけがえのない存在でありたい、自分がいないと困るくらい誰かに必要とされる存在でありたいという思いがある一方で、自分がやらねば、自分がいないと、という責任感とか義務感

読書メモ|『「大人になりきれない人」の心理』

これはだいぶ前に読んで下書きに入れてた読書メモなんですが、ちょっと書き直してちゃんと記録に残しておこうと思います。 読んだ本はこちら。 『「大人になりきれない人」の心理』(加藤諦三) 正直、自分のことを理解してもらうにはこれを読んでもらうのがいいんじゃないかというくらいに当てはまることが多くて驚きました。 親の育て方がどうこうとかではなく、自分の気質と周囲の環境とかそういう問題もあるのかなと思いますが、子供のころに年相応の経験とか感情の表出とか、そういうのができなかった

読書メモ|『聞く技術 聞いてもらう技術』

話題になっていたので気になって買った本。 この本の結論は という至ってシンプルなものでしたが、 「聞く」が不全に陥っている現代社会において、なぜ話を聞けなくなり、どうすれば話を聞けるようになるのか、という「聞く」を掘り下げた話はとても興味深かったです。 言葉をきいて、本当はこう思ってるんだろうな、と想像することはよくあると思います。それが良い方向に働く時もあれば、悪い想像が働いてしまうこともある。そうなると話を「聞け」なくなってしまう。 私は話の矢印が自分に向いている場

読書メモ|『死にがいを求めて生きているの』

読んでいてとにかくしんどくなる、思わず「うぅ…」と唸ってしまうような、登場人物に共感できてしまうがゆえに苦しくも、どこか救われるような、そんな本だったなと思います。 やりたいことなんてない、決められたルールがないと自分からは何も出てこない、死ぬまでの時間に役割が欲しいだけ。 でも、何者かになりたい、何かを成し遂げたい、ならなきゃ、やらなきゃ、ただただ生きていることには耐えられない。 だから、何かに取り組んで評価されるのではなく、評価されるために何か取り組むものを見つける。"

読書メモ|『センス・オブ・ワンダー』

今回はこちら。レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』。 ある図書館で面白そうだなと一瞬手にとって、同日に訪れた本屋さんでまた見つけたので、呼ばれてるな…と思い買った本。 レイチェル・カーソンといえば『沈黙の春』。DDTという殺虫剤が引き起こす害など環境問題について警鐘を鳴らした、誰もが一度は聞いたことのある先駆的名著だと思います。(実家にあってだいぶ前に読んだけど詳細忘れたのでもう一回読む、ゼッタイ。) そんなカーソンからの最後のメッセージが『センス・オブ・ワンダ

読書メモ|『傲慢と善良』

今回は辻村深月さんの『傲慢と善良』。本屋で見かけてタイトルと表紙に惹かれて即買いしちゃった本。 いろいろなレビューを見ても書いてあったことだけど、めちゃくちゃ抉られる話でした。手厳しすぎて頭を抱えたくなるような表現も、一方でめちゃくちゃ共感できる部分もあって、バランスが絶妙。恋愛とか結婚について描かれているけれど、そういう話にとどまらない、人生において普遍的な教訓が含まれている話だと思います。 同棲し始めてから2ヶ月ほど経ったある日、西澤架の婚約者・坂庭真実は突然姿を消し

読書メモ|『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』

今回はこちら。前々から気になっていた『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』という本。 解釈論や精神論ではなく科学的観点から、「そこそこじゃない人生」にたどり着くための方法論を示してくれている本。予防医学研究者の石川善樹さんとニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さんの対談形式。 初っ端に出てきたこれがもはや1番印象に残っている気がします。そんな1日を送れたらなぁ。まず朝ワクワクして目が覚めることなんてないし、できることならずっと寝てたいもん笑。夜はやり残したこととかチ

読書メモ|『心がつながるのが怖い 愛と自己防衛』

自分が「自己防衛してんな〜」という自覚を持つことが度々あったので気になってた本。 この本で言われている「自己防衛」とは、「現実と距離を置くためにとられる戦略で、有益にも有害にもなりうるもの」のこと。そのうち「恐ろしい感情・思考・または願望から自分を守るための自己防衛」が「内的自己防衛」で、他責的になることや無気力になること、行き過ぎたポジティブ思考などがそれに当たるそう。 内的自己防衛が強力な人が話す感情は、自分で感じる以上に自ら考え、抱こうとした感情かもしれないといいま

読書メモ|『私の顔は誰も知らない』

今回はインベカヲリ★さんの『私の顔は誰も知らない』。お気に入りの本屋さんで見つけて即買い。 この本は、インベさんがさまざまな女性たちから聞いた彼女たち自身の話やインベさん自身のエッセイがまとまったものですが、その共通項が「みんな社会にうまく適応しているように見えているが、実際はそうではない」というギャップや葛藤を抱えているということ。 いろんな女性が登場するんですが、 「本当の自分がわからない」 「自己イメージと他者からのイメージの乖離への違和感がある」 「トラウマとかな

読書メモ|『まとまらない言葉を生きる』

最近読んだ中でも特にお気に入りの本。荒井裕樹さんの『まとまらない言葉を生きる』。何度も読み返したくなります。 誰しも一つや二つは頭の中に思い浮かぶことがあるんじゃないでしょうか。SNSを流し見しても、ニュースを聞いても、特に最近は毎日そんなことばっかり。 この本では、そんな言葉の力を考えさせられるような言葉がいくつか紹介されているんですが、少しでも著者の伝えたかったこと、「まとまらなかったけど大事なこと」を汲み取れているといいな、と思います。 言葉は「壊されてきた」かも

読書メモ|tattva Vol.6

今回はこちら。好きで毎号買っているシリーズ。その中でも特に印象に残っている部分について感想をまとめてます。 1. 悪口の問題 ランキングのつかない「対等な関係であること」ってすごく難しい。 この記事に書いてあるのは、「自己肯定感が低い人が他者よりも劣っていると思い込んで、無意識にその信念に従って行動してしまうことがある」みたいなことなんですが、「うわぁ〜、ちょっとやっちゃってるかもな」という自覚があります…。 相手は対等だと言ってくれたとしても、勝手に自分を相手より下に

読書メモ|『私とは何か 「個人」から「分人」へ』

今回は平野啓一郎さんの『私とは何か 「個人」から「分人」へ』 「分人」という考え方は微かに触れたことがあったけど、自分から見た自分と他者から見た自分とのギャップに対する違和感の話をした時に改めてこの「分人」の考え方を紹介してもらって、ちゃんと知りたいと思って読んでみました。 というのが分人主義の基本的な考え方です。 人は人との関係性の中に生きていて、それがどういう関係性なのかは相手が誰かによって違っているのだから、「相手によって自分が変わる」というのはある程度自然なこと