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「癖」を放し飼いのまま

「無くて七癖」

なんていうけれど、一体誰が考えたんだろう。
本当にその通り、少なくとも私は非常に癖の多い人間だ。

身体の癖で思い当たるもの。
手首をつかんで外側に曲げ、ぽきっと骨を鳴らす。ストレッチかのように目をぎゅうっと強く瞑る。前髪を抑える(オン眉だからかも)。指や手首をぐねぐね動かしたり伸ばしたりする。耳を触る。唇の内側を軽く噛む。

指を伸ばす癖が一番古い。小学3年生からやめられなくなった、気持ちが安心するから。なぜ始めてしまったのかは今となってはわからない。親にも何度もやめなさいと言われた、チックではないかと心配していたみたい。そんなこと言われても自分じゃよくわからなかったけれど、今も時折やってしまう。なんとなく、安心するから。

癖というのかどうかわからないが、勝手にやってしまう行動もある。
最も目立つのが、「お風呂で言うひとりごと」。
ひとりごと、と表現する範疇はおそらく超えている。だって私、完全に誰かに向けて喋っている。スピーチする機会を控えているのか?いや控えてないねん。しかも、どうか危険な人だと思わないでほしいのだけれど、気がついたら口が勝手に動いている……しかも脱衣所から喋り始めている……無意識のうちにまるで隣に誰かがいるかのように喋ってしまう……シャンプーしながら。

自分の行動を怪しむ一方で、これは完全に『心の整理のプロセス』の一部であることに気がついている。夢を見て眠っている間、脳は記憶の整理をしているって言いますよね。多分それと似たようなことが私の中で起きているのだと思う。

シャワーを浴びながら私の口が勝手に喋っていることは、日々の出来事などとは違う。ここ数年に経験した、私にとって重要だったと思える3つか4つの事柄についてだ。その時自分がどう感じたのか、その後どう考察したのか、今の自分ならどうするのか、客観的にみてどのような状況にあったのか。そういったことを私は誰かに説明しているように喋る。(自分で書いていても奇妙なんだけどどうか怖がらないでほしい、正気正気)

さらに言うと、おそらくあまりにも同じ話を喋りすぎて誰かの相槌が聞こえちゃってるんだろうね、相手からの質問すら想定して喋っている。ひょえー。他人事に思えるくらい自分でも変。
でも、だからといって慌てて口を塞ぐようなことはしない。誰かに聞いてほしかったんだな、言葉にすることで着地点を見つけたいんだなと外からとらえなおして、そんな「私」のことを好きなようにさせている。
考えてみたら、上手く話せず心にしまっておくしかなかったようなことばかり。浄化させたいんだよね。いつか誰かに聞いてもらえる日が来た時のために、伝える練習をしておきたいんだよね。

癖。悪癖と呼ばれるものもあるけれど、心の働きとのリンクを見逃さないようにしておきたい。誰かのことも、自分のことも、表面に浮かび上がったサインをやさしくつかまえて、放って、「それでいいよ」ということにしておきたい。否定したくない。1mmの意味もないものなんて、この世にないと私は思っている。どんなに微かに思えてもきっと裏付ける心のゆらぎがある。そこから生まれるかたちがある。押し込めないで、ゆるす。

私に言葉があってよかった。
整った綺麗な言葉は紡げないけれど、好きに心を走らせることのできる術があってよかった。

でも人が泊まりに来ているときは
おくちチャックでよろしくね、私。

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