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きらめきは長持ち

なにかを心待ちにできる瞬間って、なんて豊かなものだろう。

家を出発して1時間、いま私はのぞみの真ん中にいる。久しぶりの旅行に胸がときめく。少し早いけれど、今年1年頑張った自分たちへのご褒美のつもりで計画を立てた。お財布もしっかり薄くなったけれど、毎日指折り数えてこの日を待った。ぜんぶ、きらきらしている。

パートナーが県をいくつも跨いだところに住み始めて以来、新幹線に乗る機会がぐっと増えた。もっとリーズナブルになったらいいのにね。コストが理由で会えないということは今のところないけれど、気軽に会えない条件はひとつでも少ない方がいい。移動の時間が苦にならない性格であることには気づいた。相手の住む土地に行くときも、今朝のように違う土地を目指すときも、文字を並べて遊んでいられる。飽きたら眠る。荷物になるので今回は文庫本を諦めてしまった。

「誰かに会いに行く」ことを最大の目的にして遠出する。その頻度がここまで高くなる人生を想像したことがなかった。おでかけは大好きだし、一緒に行く人たちのことももちろんいつも大好きだった。でも、目掛ける先が"誰か"になることは年に1度あればいい方な気がした。会いたいと思える人がいることも、その人が私を待っていてくれることも、あって当然のものではないよなと静かに思う。新幹線の座席で。今が楽しいので、過去の分岐点でこちらの方角を選んでくれた自分に感謝もする。

非日常の体験で満たされるから、日常を大事にできるのだ。ありきたりながらしみじみ思う。仕事も暮らしもそれ以外も、退屈と多忙とを行ったりきたりするが、ひっくるめての日常であって結局はルーティン。ふとネガティヴな思いが日々に影を落としたとき、非日常のときめきが心を柔らかくする。思い出も、予定も。そうして通常運転に戻る。いまこの瞬間を頑張るから夜のご飯が美味しいんだ、みたいなことで気を引き締められる。そういうループが出来上がっていて助かる、単純ともいえる。

あと1時間もすれば目的地に着く。暑いくらいのいいお天気でなにより。隙間なく楽しい時間を過ごせるように、いつもより口角を上げてみる。ご褒美堪能のはじまりはじまり。

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