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ラグビー日本代表に影響した?国内合宿期間中の猛暑

 これを書いている時点で、2023年ラグビーワールドカップも準決勝、決勝を残すのみとなった。日本代表は予選リーグで3位となり、決勝トーナメントには進めなかったが次回大会の出場権は確保した。大会前の7~8月のテストマッチで1勝しか残せなかったことだけでなく、2019年日本大会以降、コロナ禍でテストマッチの機会が減ったこと、サンウルブズの解散でスーパーラグビーへの参加機会を失ったことで大会前の状況は厳しかった。現場の選手はこの苦しい状況からよく盛り返したと言える。
 2023年大会の活躍の原動力となった要因のひとつが、6月の浦安、7月~8月頭の宮崎での合宿での鍛錬だろう。この他に出発直前に府中でも合宿を行っている。この大会直前の大事な時期に日本を襲ったのが、例年にない猛暑だ。対応を誤ると、この猛暑が調整にも影響を及ぼす致命傷になりかねない。
 では、ラグビー日本代表が合宿を行ったときの気象条件はどうだったのだろうか?

大会前の合宿の日程

 大会前のラグビー日本代表の合宿は、以下の日程で開催された。なお、6月の合宿は日本代表候補選手も対象となった。
・6月12日(月)〜6月30日(金) 千葉県浦安市
・7月3日(月)〜8月3日(木) 宮崎県宮崎市
・8月16日(水)〜8月18日(金) 東京都府中市
 
 7月8日~8月5日の土曜日には、試合会場(東京、熊本、大阪、札幌)に移動し、All Blacks XV、サモア代表、トンガ代表、フィジー代表とテストマッチを実施した。

合宿期間中の気温、WBGT

 以降では、
・6月の浦安合宿
・7月~8月の宮崎合宿
の気温やWBGTの状況につき、平年との比較も含め示す。
 2つの合宿地に近接する観測地点に関して、合宿期間中の平均気温や最高気温の推移を平年と比較して示すと以下のようになった。なお、対応する合宿地ごとに採用した気象庁の観測地点は以下の通り。
 浦安:江戸川臨海(東京都)  宮崎:宮崎

浦安合宿期間中の平均気温の推移と平年比
浦安合宿期間中の最高気温の推移と平年比
宮崎合宿期間中の平均気温の推移と平年比
宮崎合宿期間中の最高気温の推移と平年比


 各期間中の気温の概況をまとめると以下のとおり。

 【浦安合宿期間中】
 平均気温:23.8℃(平年比+1.7℃) 最高気温の平均:27.4℃(平年比+1.9℃)
平均気温が平年を上回った日:17日/19日(89%)
最高気温が平年を上回った日:15日/19日(79%)

【宮崎合宿期間中】
平均気温:28.3℃(平年比+0.9℃) 最高気温の平均:32.3℃(平年比+0.9℃)
平均気温が平年を上回った日:24日/32日(75%)
最高気温が平年を上回った日:22日/32日(69%)

 全般に平年より高温という厳しい気象条件下での調整を強いられたことになる。浦安合宿期間中はほとんどの期間で気温は平年を上回り、宮崎合宿期間中は7月中旬を中心に気温は平年を大きく上回った。ただし、宮崎合宿期間中の7月30日以降は、宮崎県は台風の間接的な影響で雨が多く、気温がほぼ平年並みか若干下回る水準で推移した。この期間中は、宮崎の気温は全国でも低い部類に入る。

 8月1日~3日の東京、宮崎の気温推移は以下の通り。
(平均気温)
 東京:26.0℃→28.9℃→30.2℃  宮崎:28.5℃→28.0℃→28.1℃
(最高気温)
 東京:33.2℃→34.7℃→35.0℃  宮崎:31.3℃→31.4℃→31.4℃

 宮崎が合宿地だったために、日本代表は、最終盤は全国の多くの地域が見舞われていた猛暑を避けることができたともいえる。

 次にWBGTに着目する。浦安合宿期間中、宮崎合宿期間中で対応する観測地点のWBGTが以下の水準に達した時点は以下の通り。なお、WBGTは1時間に1度記録される。

 ・浦安-28~31℃:2回 31℃以上:なし
 ・宮崎-28~31℃:222回(5.7%) 31℃以上:44回(28.9%)

※カッコ内は24時間×32日=768時間に対応する数字。観測上1時間1時点となる。

 WBGTは31℃が危険、28~31℃が厳重注意とされる。浦安合宿期間中はまだWBGTがこの水準にほとんど達していなかったが、宮崎合宿期間中は注意/警戒が必要なWBGTの水準に多く達していたこととなる。夜間を除けば、WBGTが危険な時間になる割合は、もっと高くなる。

 こうした状況下でよく日本代表は鍛錬・調整し、チームの水準を大会までに上げてきたものだ。

 夏の猛暑とスポーツの問題は、例えば夏の甲子園のように暑い期間中の試合にばかり着目されがちだが、トレーニング・調整期間に猛暑が襲うことも大きな問題といえる。その影響は夏が過ぎた後の試合中にも及ぶ。例えば日本代表は最後の20分にパフォーマンスが落ちたことがよく指摘されているが、もしかしたら夏の猛暑がトレーニングに制約・影響を及ぼした影響もあるのかもしれない。
 猛暑がその後の秋の試合に影響する可能性、実は、ちょっと前に、以下の投稿で私が取り上げている。


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