水色のバケツいっぱいに溜まった水を

ボウリングの球を投げるときの勢いで

廊下に流してあげて

開けっぱなしの窓から入ってくる

蝶たちにその水を飲ませる

今日 生徒たちは一人もいない

太陽に照らされて金色に輝く画鋲と

鳴りやまぬツクツクボウシの声が

私の心を潤す 夏の学校

今日 やって来た蝶は二匹

水道水をその小さな体内に蓄えて

いったいどうするつもりなのだろう

この暑さの中 氷水を使うのを渋って

水道水を流してしまったことに

少し後悔を覚えた 今日

喉を通った水

しつこいぐらいにそれを体内に入れて

胃にサッカーボールを詰め込むぐらい

入れる 蝶は痺れる

静かに一匹 二匹と痺れ出す

私はもう歩くので精一杯だが

蝶たちはもう動くことすらままならないだろう

寒気

今年の12月のことを考えると寒気がした

この暑さをやわらげるような寒気ではない

たとえば今

しつこく鳴いているツクツクボウシが

私たちに「もうすぐ夏は終わりますよ」と

教えてくれたところで

この暑さはどうにもならないだろうというような

そんな感じ

今日 学校には私以外に誰もいないはずだが

もしかしたら生徒たちがどこかに隠れていて

私を驚かそうと企んでいるのかもしれない

嘘 嘘よ

まだ息絶えていない 痺れている蝶が

そう呟いた

ような気がした

どうやら私の方が

先に気絶しそうだ

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