図書館にて

最近 現実逃避するために

近所の図書館へ行くことが多くなった

読む本はテキトーにネットで調べて

なんとなく面白そうだなと思ったものである

最近は人間のどうしようもなさを

如実に描いた作品を好んで読んでいる

自殺に関する本もまた 妙に惹かれるものがある

無意識のうちに俺は自分のどうしようもなさとか

自殺に対する一種の憧れのようなものとかを

抱いているのだろうか よく分からない

それはさておき 目的の本を手に取って

空いている自由閲覧席を探し 館内を歩き回る

平日は主に老人たちで 休日は学生たちで

賑わっている図書館は まるでパチ屋のようだ

異なるのは静かなところぐらいだろうか

俺が通っている図書館の自由閲覧席は

4人掛けのテーブル席がほとんどで

あとはソファーが適当に置かれている

文庫本はともかく 単行本を読むときは

できるだけ机上に置いて読みたいので

だいたい埋まっている4人掛けのテーブル席の

空いているところに相席するしかないのである

さて 席を探しながら俺は

醜い男として当然のことだと言わんばかりに

可愛い女の子も一緒に探し回るわけだが

そんな彼女らと相席しているのは

大抵の場合 一緒に勉学に励む彼氏さんだが

(実にムカつく)(相席しづらいんだわ)

ジジイが座っていることも多い

彼らも彼らとて 分厚かったり広かったりする本を

一生懸命目で追っていることが多いが

中にはろくに本も持たずに

ただ腰掛けていてぼーっとしている

ジジイもいる 結構いる

俺はそんなジジイどもを見る度に

オメーらのその身勝手さのせいで

狙ってたあのコの隣か対面の席に座って

澄まし顔で読書することができねぇんだわ

オメーらもどーせ可愛いコ狙ってんだろ?

てかフツーに邪魔だからどけや

と思うのと同時に

彼らのそのみすぼらしい姿と

現時点でみすぼらしい大学生の俺の

将来の姿がなんとなく重なり

どうしようもない気持ちに苛まれる

結局空いていたソファーに腰を下ろして

どうしようもない登場人物たちの生き様が

如実に描かれている小説を読み進める

紙の上に置かれた文字たちに踊らされながら

それでもどこか情熱的に生きる彼らのことを思うと

なんだかいたたまれない気持ちになり

実にムカついたので その文字どもに

唾を吐きかけてやった

周りのヤツらが驚いて 視線が俺に集中した

なんだよ文句あんのか

むしろ黙りこくって本読んでる方が

よっぽど不気味なんだよテメーら

本読んでたら感情的になることの方が多いだろうが

ムカついたら唾吐いてもいーじゃねえか

ジジイどもが銭湯で痰吐いてんのと一緒だわ

むしろあっちの方がきたねーわ

もういいわと思って

読んでいた本を床にほっぽり出して

俺は4人掛けのテーブルの方へ向かった

片手でスマホを持って動画を撮りながら

もう片方の手を 勉強している連中が

机上に広げているノートの上に置いて

思い切り握ってぐしゃっとしてやった

最初にイケメンの高校生

次にそいつの彼女と思われる可愛い女の子の

ノートをぐしゃっとしながら

彼らの困惑する様子を動画に収めた

隙をついて女の子にキスをしたあたりで

イケメンの高校生が掴み掛かってきたので

俺はそれを全力で振りほどいて 逃げて

図書館を後にした

それ以来 俺はあの図書館に

行くことはなかった

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