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書評

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2019年8月の記事一覧

藤岡陽子(2018)『この世界で君に逢いたい』光文社



霊的なつながりを美しい景色に溶け込ませた不思議と心温まる物語。人は何かしら心残りを持ってこの世を生きているとして、それが突然に変異する日が来るのだとしたら、その時を掴まえられるのだろうか。

そして、もう一つのテーマは、自分のこころの中のしこりとは関係なく、全く別のところに昔からずっとある、実はかけがえのないものについて。それに気付くことは、実はより難しいことなのかもしれない。

原田曜平(2013)『さとり世代:盗んだバイクで走り出さない若者たち』KADOKAWA



ゆとり教育を受けて育った今の20-30代半ばの若者世代の性格・趣味・趣向を時代背景の影響を主に考察した対談本。「さとり世代」は、自由を過度に与えられ、自己責任論の下で生きなければならなかったため、リスクを取ることを恐れ身の丈に合った成果で満足するように育ったということだろう。

世代研究というものは、ある時代が人間の成長にどのような影響を与えたのかを考察する教育学的な面白さがある。同時に、この

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村山早紀(2018)『星をつなぐ手:桜風堂ものがたり』PHP研究所



偶然が偶然を呼び偶然にも幸福になりました、という展開の一冊。続編というものに、賛否両論起こってしまうことを身をもって体験できてしまう。ただ、伝説と共に生きる人間たちという小テーマは興味深い。

また、引きこもりやコミュ障といわれるような人たちにも、ちゃんとした内面世界があって、魅力的な人間性があって、幸せになれるはずなのだという確かな希望を感じさせてくれる。いやむしろ、それは羨ましい。