見出し画像

患者・家族の希望に寄り添うことができるやりがい。いまだから分かる地域包括ケア病棟の魅力とは。

クローバーホスピタル 地域包括ケア病棟の一柳主任にお話しを伺いました。急性期病院での勤務後、結婚・出産を機にキャリアダウンのつもりでクローバーホスピタルへたどり着いた一柳主任。限られた入院期間の中でひとりの人の生き方や最期の迎え方を決めるタイミングに立ち会い、それを実現するためには自分に何ができるのか。地域包括ケア病棟の仕事内容と魅力を語っていただきました。看護師としてのセカンドキャリアをお考えの方、回復期医療に興味をお持ちの方に読んでいただきたいインタビューです。ぜひご覧ください!


スタッフとコミュニケーションをとる一柳主任(右)


―まずは地域包括ケア病棟のスタッフや特徴について教えてください

現在は、46床の病床に対し、看護師25名、介護士6名、看護助手1名、クラーク1名、歯科衛生士1名が在籍しています。急性期病院からの転院(ポストアキュート)や地域の高齢者の検査・治療・レスパイト等を目的とした入院(サブアキュート)を受け入れ、生活の場に戻れるよう、60日間の入院期限の中で支援を実施しています。ポストとサブの割合は半々くらいです。多い時は、緊急入院を含めて1日で4,5件の入院を受けることもあり、とても動きのある病棟だと思います。

 

―病棟は治療やリハビリだけでなく患者さんを自宅や施設へ戻れるように環境の調整や家族への支援などを60日間の入院期限の中で行わねばならず、急性期病院とは違う大変さがあると思いますが、スタッフに対してはどのように支援されているのでしょうか?

病棟は2016 年にスタートしましたが、経験を重ねる中で退院支援や家族支援に関わる知識・技術を高め、日頃から「お手本」となってくれるスタッフが増えてきたと感じています。そのため私は、適切なタイミングで指導やフォローが実施されるよう機会を調整したり、スタッフ同士で学び合い助け合ってもらえるよう働きかけたりということを心掛けています。スタッフひとりひとりの成長のおかげで、新入職の方にも、介護保険の仕組みからこの地域の高齢者に関わる情報等など、焦らず、でもしっかりと習得してもらえる環境ができてきたと思います。
また、地域連携室の相談員や退院支援看護師がほぼ全件介入で退院支援を実施してくれているので、お互いに情報を交換・共有しながら、協力して支援できていると思います。
 


―退院支援において地域連携部との連携はどのようにしているのでしょうか

毎日カンファレンスにも参加してもらえるので、お互いに「この支援方針ならこういう情報が必要ですよね?」と自然に話し合える状況です。地域連携室のスタッフは、ご家族に対してだけではなく、施設やケアマネジャー等、院外の関係者に対しても連絡の窓口になってくれていますが、地域連携室のスタッフがより確かな情報を発信するためには私たちの観察やアセスメントが必須だと思っていますし、医療者が伝えるべきだと考える内容に関しては看護師自身が伝えたり医師にそれを依頼したりできるよう、スタッフに働きかけています。
 


―急性期病院とは違う種類、自宅や施設へ帰るための退院支援ですが、具体的にはどのように行われるのでしょうか?

患者さんは入院前(ご自宅や施設で生活していた時、体調を崩す前)よりADLが低下していることが多いです。「この患者さんはお家に戻るとこんな問題が起こるかもしれない」、「ご家族が介護するにはこういうことが難しいかもしれない」と日々の看護の中で退院後の生活を想像し、ご本人・ご家族と情報や目標を共有していくことを大切にしています。60日の期限を考慮して、「2週間でここまで情報をまとめ、1か月までには方針を決めてもらえるようにしたい」といったように、スケジュール感は常に意識して支援を行っていますが、ご本人・ご家族の意思決定支援とそのための情報提供は丁寧に行われるよう意識しています。

また、身体機能及び精神状態の評価を行ったり、今後の見通しについて検討する際には、セラピスト(リハビリスタッフ)や介護士との協働も不可欠だと考えています。「できるADL」だけでなく「しているADL」に目を向け、安全性や実用性を検討していくためにも、日々のやり取りや定期カンファレンスの中で目標や目的を共有し、互いに協力しながら、入院生活の中にもリハビリの要素を取り込んでいけるよう取り組んでいます。



―自宅や施設へ帰り、暮らしていくための意思決定支援ですね

そうですね。ただ、中には、生活様式を大きく変える必要があるケースや、看取りまで見据えた意思決定支援を行わなければならないケースも多くあり、支援の難しさを感じることもあります。

地域包括ケア病棟では、入院から2週間を目途に経過説明と方針の確認を行うように計画していますが、例えば、誤嚥性肺炎で入院した患者さんの中には、そのタイミングで「もう口から食べることは難しいです」と告げなくてはならない場合もあります。そして、その後に必要な支援のスケジュールを考えると、スタッフの立場としては、その場で「あと2週間で今後の栄養管理をどうするか考え、家に帰るか施設を探すか決めてください」と伝えざるを得ない状況にもなります。
診断結果を家族に伝えるのは医師ですが、その診断結果から導き出される答えはひとつではありません。誤嚥のリスクを承知の上で経口摂取を続けるという選択もそのひとつで、それは否定できるものではありません。ただ、ご本人自身に食べたいという希望があるのかをともに考えたり、吸引による苦痛を伴いながら生きていくことになる現実を伝えることなど、その選択に後悔を残さないために、私たちができることは多くあると思っています。

 

―意思決定支援。家族は突然突き付けられてもわからない、決断できないということは多いと思います。しかしそれでも決断しなくてはならない現実です

家族にとってはその後の生き方や最期の迎え方に関わる重要な局面でも、意思決定までに時間をかけすぎると、その後の退院までに必要な調整が期限内に終わらない可能性が出てきてしまいます。スタッフはそういうスピード感に慣れてきていますが、ご本人やご家族にとっては大変なことだと思います。なので、可能な限り入院時から必要な情報を確認し、様々な可能性や選択肢を提示した上で、方針を決める心構えを促せるよう取り組んでいます。

方針の決定には、もちろんご本人の意思が尊重されることが望ましいと思いますが、家族の介護力やサービス利用の限界が方針の選択に影響したり、本人の意思よりも家族の意向が強く反映されていると感じる場合もあります。必要な情報や意思決定の軸になりうるポイントを逃さず、その情報を、医師はじめ多職種が共有することで、それぞれが行う説明に一貫性があるよう配慮するとともに、それぞれが考えを押し付けるのではなく、意思決定を支援するために必要な情報をそれぞれの立場から提供できるよう、チーム力の向上を目指しています。

 

―病棟のミッションを理解して、全員が同じ目標に向かっていける病棟ですね。そこではどのようなことにやりがいや楽しさを見出すのでしょうか。

患者さんやご家族が少しでも満足し、納得してもらえたら、やはり嬉しいですね。ご本人やご家族の希望に寄り添うことができたと感じるときにはやりがいを感じますが、実際の本音を言えば、うまくいかないことも多いです。食べられるようになってほしい、歩けるようになってほしいという願いは自然なことですが、老化や病気の進行・悪化のため、希望するように回復されないことも多くあります。あきらめることを促したり、妥協案を探すことを手伝っているような気持になることもあります。そこでもやはり、もっと支援に時間をかけられたらという思いは出てきてしまいますね。
 


―そうですね。その期間で決めていかなくてはならないけれど、実際には受容してその人の在り方に納得していくのは退院後の在宅になるのかもしれません。
 
そうですね。ありがたいことに、当院の在宅診療を利用している患者さんの退院後の様子をうかがえることもありますが、退院後、入院中の支援の方針とは異なる選択をされているケースもあり、状況によって患者さんもご家族も揺れ動くし、その時々で答えが変わることは当然だなと感じます。でも、いま困っている高齢者の生活と命を守るため、そして、分岐点というか、人生におけるターニングポイントのひとつを支えるために私たちの病棟と今の時間があるのだという思いをもって、自分たちを奮い立たせているところはあると思います。



―職場としての環境はどうでしょうか

だんだん居心地の良い優しい職場になってきていると思っています(笑)。様々な勤務形態の職員が増えたり、新卒の看護師が入職してくれたりする中で、お互いの違いを許し合える環境になってきていると感じます。私を含めて子育て中のスタッフも多く、お互い様の気持ちで助け合ってくれていると感じ、私もそんなスタッフに本当に支えられています。
みんなが同じようにできないといけない訳じゃない、自分にできることを精一杯頑張って、お互いの良いところを活かして支え合いながらやっていけば良いという思いで、スタッフの頑張りや成長を応援していくことが目標です。

 



―これから当院へ入職を考えてくれる人に向けてのメッセージをお願いします  

特に急性期病院からの転職先として当院を考えたとき、少し楽になるのではないかと期待をもったり、ワークライフバランスを大切にするためにキャリアダウンするつもりで選択される方が多いかもしれません。しかし、急性期とは違う種類の忙しさがあります。60日という限られた入院期間の中でひとりの人の生き方や最期の迎え方を決めるタイミングに立ち会い、それを実現するためには自分に何ができるのかを考え実践しなくてはなりません。
看護ケアに関しても意思決定支援や退院支援に関しても、自分の倫理観や看護観と向き合い積極的に学んでいくことが必要です。キャリアダウンという考え方でなく、高齢者の在宅療養支援、またそれに関わる意思決定支援に関わる専門性を磨けるということに魅力を感じて選んでいただけると、入職前後のイメージのギャップは少ないのではないかと思います。

でもそれは、実際働いてみてわかることかもしれません。実は私自身も最初はキャリアダウンのつもりでした。一人目の子を出産して、急性期病院よりは少し楽になるつもりで入職しました。でも今は、別の大変さがあるけれど、やりがいもあると実感しています。診療の補助に加え、退院後の生活を見据えた療養生活の支援(ケアの内容や方法の検討)、家族への説明や指導等、ルーチンではなく、自分たちで考え実施できる支援の種類や機会は、とても多いと思います。

一緒に力を発揮してくれる仲間が増えていってほしいと願っていますし、ここで新たな学びを得て自分の可能性に気づき、それぞれの目標をもって仕事を続けてもらえるよう、応援していきたいと思っています。




クローバーホスピタルでは地域包括ケア病棟増床に向け看護師さんを募集しています。是非一度、見学にお越しください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?