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12時間電気のない日

この前久しぶりに半日電気のない日を過ごしました。
台風がアンティグアを通過するかもと予想されていたその日は、強風のため、雨が家の中にまで吹き込んでくるくらい荒れていましたが、幸いにも直撃はせず、雨がたくさん降っただけで済みました。有難い。
アンティグアは本当に雨が少ない国で、一日中雨が降ることなんて滅多にありません。雨が降らないと草木が枯れていくのが目に見えて分かります。アンティグアの景色も水々しい緑から乾ききったベージュ色へと変わっていきます。それくらい国全体が乾燥するのです。だからアンティグアでは雨が降ると神の恵みだとみんな喜ぶのです。

こういった台風やハリケーンがやって来る日は、あらかじめ国が電気を止めておくという傾向があります。住んでいる地域にもよるのですが、私が今住んでいるエリアは島の南西で海のすぐそばということもあり、その日は早朝の4時に突然停電になりました。予告なんてもちろんあるわけもなく、いつ復旧するかも知らされません。よくあることなので、今日は電気なしの一日かぁ〜と思うと何にもやる気が起こりませんでした。電気がないとまずインターネットが使えません。インターネットが使えないとスマホやタブレットも用なしです。テレビも見れないし、洗濯しようにも洗濯機を回せない。何して時間を過ごそうか考えた結果、子供と遊んだり、刺繍したり、たまたま日本人の友達から借りていた本があったのでそれを読んだり。。

雨は降ったり止んだりで昼頃にはもう心配いらないんじゃない?と思えるくらいの状態でした。それでも電気が復旧することはなく、相変わらずスマホは使えません。そんな時ふと思いました。インターネットが使えなければ世界から完全に切り離されたようなもので、万が一私たちに何かあっても、日本にいる家族に知らせることはできない、と。日々どれだけ自分がインターネットという技術の恩恵を受けているか目の当たりにした気がしました。それと同時にこんなことも考えました。
私たちは本当にマトリックスの世界に生きているなあ、と。体自体は地上に身を置いてはいるが、マインドはいつもスマホの中にあるのです。電気が夕方6時頃に復旧した瞬間、すぐにスマホを取り出し、眩しく輝くスクリーンに見入っている旦那を隣でじっと見ていると、スマホのスクリーンがマトリックスの世界への入り口に見えて仕方がなかったのです。しかしインターネットは私たち人間にとってもう必要不可欠なものになってしまいました。旦那もコロナが蔓延して以来、オンラインでの仕事の依頼が増え、インターネットなしではビジネスが成り立ちません。今後も人類がますますインターネットの世界に依存するのは確実でしょう。それは悪いこともあれば良いこともあると思います。使う時間、使わない時間とメリハリをつけてインターネットの世界に入り浸りすぎないようにしたいものです。

テレビや電話のなかった時代の人たちはどんな生活をしていたのだろう。家族や近所の人との繋がりは、現代と比べたらそれはそれは深いものだったんじゃないだろうか。私たちが今生きている時代は、コロナを機にオンラインで何でもできる世界に変化しています。政府が発表しているムーンショット計画を見れば、間違いなく日本は計画実行に向けて着々と変貌を遂げています。人と人が直接会わなければ人間関係で悩むことも減るのではあろう。でも触れ合うこともない、2Dの姿しか見れない人間関係ってどうしても薄っぺらく感じてしまいます。そうは言っても技術の進歩はとどまることを知りません。そしてそんな時代に生まれ育つ子供たちは、それがその子たちにとって当たり前の世界となるのです。大昔の人たちがどんな環境でどんな気持ちで過ごしていたかなんて知るよしもないのだろう。人と人が直接コミュニュケーションすることによって生まれる絆が益々浅く弱くなっていき、冷酷な事件が増えないことを願うばかりです。

実はこの下書きを書いている途中にまた停電になりました。しかも夜です。下書きを書き終え、インターネットがないのに間違えて公開設定のボタンを押してしまい、見事に半分下書きが消えてしまいました。インフラが整っていない国に住むと日本ではありえなかった事がしょっちゅう起こるので勘弁してよ〜と毎回呆れます。2014年にアンティグアに移住してすぐの頃、初めて5日間の電気&水なしの生活を経験しました。慣れない生活に耐えきれなくなって停電2日目にホテルへ逃げ出したことを思い出します。今振り返ってみればどんだけ弱っちい女やねんと自分にツッコミを入れたくなるくらいです。笑その頃と比べれば自分かなりたくましくなったなぁ。

当たり前にあるものが当たり前ではなくなった時、人は多くのことを学べます。たまには画面を一切見ない一日を過ごしてみるのも大事ですね。



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