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パブリックリレーションズ(PR)が叶える、「良い関係構築」とは何なのか?

結果が見えにくいPRという施策

みなさん、こんにちは。
今週は日本広報学会より、広報の定義が発表されましたね。広報界隈では大ニュースとなり、様々な方が話題にしておりました。広報が「経営機能である」と定義されたことを受けて、はてさて広報やPRはどんな意義があるのかと考える方も増えるのではと思い、今回はPRの目的やゴールを丁寧に示唆しようと思います。

改めてPRとは…

ご存じの方は何をいまさら…と思うかもしれませんが、意外とご存じない方も多いので、改めて回答いたします。PRはパブリックリレーションズの略です。過去、PRって解釈が3つあるよ、と説明したことがあるのですが、あくまでも日本において、3つの解釈のされ方があるというだけで、本来PRの意味はパブリックリレーションズ一択です。

改めて出す必要もないかもしれませんが、本来の意味は以下です。

パブリックリレーションズについて、アメリカで教科書として定評がある『体系パブリック・リレーションズ』では、「パブリックリレーションズとは、組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持するマネジメント機能である。」と定義している。
また日本では、1969年に加固三郎が次のように定義している。
「PRとは、公衆の理解と支持を得るために、企業または組織体が、自己の目指す方向と誠意を、あらゆる表現手段を通じて伝え、説得し、また、同時に自己匡正(きょうせい)をはかる、継続的な対話関係である。自己の目指す方向は、公衆の利益に奉仕する精神の上に立っていなければならず、また、現実にそれを実行する活動を伴わなければならない。」
つまり広報・パブリックリレーションズは、“関係性の構築・維持のマネジメント”である。企業・行政機関など、さまざまな社会的組織がステークホルダー(利害関係者)と双方向のコミュニケーションを行い、組織内に情報をフィードバックして自己修正を図りつつ、良い関係を構築し、継続していくマネジメントだといえる。

日本パブリックリレーションズ協会「パブリックリレーションズとは」より
URL:http://prsj.or.jp/shiraberu/aboutpr

世界基準に倣って日本も「ステークホルダー(利害関係者)と双方向のコミュニケーションを行い、良い関係を構築し、継続していくマネジメント」と定義しています。まずここで、PR=プロモーション、という考えは捨ててください。日本にPRの解釈が3種類あって、さらに#PRというとんでもなく厄介な、プロモーションの概念まで入ってきてしまったため、余計に混乱をきたしておりますが、パブリックリレーションズとプロモーションは、カレーとオムライスくらい違います。

パブリックリレーションズの種類

定義にもあるように、PRとはあらゆる人との関係性の構築・維持のマネジメントですが、相手が誰かによって呼び方が変わります。

  • 対カスタマー=カスタマーリレーションズ

  • 対メディア=メディアリレーションズ

  • 対投資家=インベスターリレーションズ

  • 対行政=ガバメントリレーションズ(≒ロビイング)

  • 対求職者・従業員=エンプロイーリレーションズ

  • 対地域社会=コミュニティリレーションズ

などです。

出典:日本パブリックリレーションズ協会

このすべての総称が、パブリックリレーションズと呼ばれています。勘のいい方はすでにお気づきかもですが、パブリックリレーションズは、広報の定義同様、経営戦略に近いです。経営の資本と言えは、「人・モノ・金・情報」ですが、その情報部分を担うのが、パブリックリレーションズです。

パブリックリレーションズの活動理由

パブリックリレーションズの活動ゴールが、あらゆる人との関係性の構築・維持だということまではご理解いただけたと思いますが、それでは、なぜ企業やブランドはパブリックリレーションズを実施すべきなのでしょうか?

パブリックリレーションズの活動理由は、相手が誰だったとしても、理由は一つ。自社に有利な経営環境づくりに他ならないと考えています。商品やサービスの売れ行きを良くするために顧客にアプローチを取る活動であるプロモーションとは、大きく異なります。

  • パブリックリレーションズは、経営機能です。そのため、マーケティングファネルでいう、認知やリーチを獲得する施策とは少し異なり、むしろもっと前の改善を指すものだと考えています。

  • パブリックリレーションズは、当然のことながら、メディア掲載だけを指す言葉ではありませんし、メディア掲載だけでリレーションを構築するものではありません。

  • パブリックリレーションズは、やればすぐ効果が出るものではなく、信頼の積み重ねです。積み重ねを始めないと積みあがりません。

パブリックリレーションズは、コミュニケーションにより良好な関係性を構築するための態度変容や行動変容を促進させ、経営環境を改善することが役割ですので、一概に認知を獲得するだけの活動かというとそれだけではないのです。

コトラーによるPRの定義

マーケティングの神様、近代マーケティングの父などと呼ばれるマーケティング界の第一人者・コトラーによれば、パブリック・リレーションズの機能は、以下の五つに分類されるようです。

  1. 報道対策
    企業を良く見せる形でニュースや情報を公表すること。

  2. 製品パブリシティ
    特定製品・サービスのパブリシティを支援すること。

  3. コーポレート・コミュニケーション
    企業内・外のコミュニケーションを通じて、企業への理解を促進すること。

  4. ロビー活動
    法規制への影響をねらって議員や官僚との関係を確立し維持すること。

  5. コンサルティング
    社会問題や企業のポジションおよびイメージに関して、経営陣にアドバイスすること。製品事故に際してのアドバイスも含まれる。

まず、どこにも販売促進(プロモーション)に関する記述がないこと、また、メディアリレーションズ以外にも、3~5という目的をしっかり明記していることがわかると思います。つまりパブリックリレーションズは、企業内・外のコミュニケーション(広聴)を通じて、企業への理解を促進させつつ、経営陣にアドバイスすることで、舵を取る施策と言えそうです。

バルセロナ原則3.0によるPRの解釈

更にもう一つ、PRに関する世界解釈をお持ちしました。聞きなれない方もいらっしゃると思いますが、バルセロナ原則とは、国際機関AMECが設発表した、世界的なPR効果測定の原則です。3.0はつい最近2020年に改正されたのですが、以下がその内容です。

1. ゴールの設定は、コミュニケーションのプランニング、測定、評価に絶対的に必要なものである。
2. 測定と評価はアウトプット(施策の成果)、アウトカム(目標に対する成果)に加え、潜在的なインパクトを明らかにすべきである。
3. ステークホルダー、社会、そして組織のために、アウトカムとインパクトを明らかにすべきである。
4. コミュニケーションの測定と評価は、質と量の両方を含む必要がある。
5. 広告換算はコミュニケーションの価値を測定するものではない。
6. ホリスティックなコミュニケーションの測定と評価には、オンラインとオフラインの両チャネルを含む。
7. コミュニケーションの測定と評価は、学びとインサイトを導くため、誠実さと透明性に基づくべきである。

バルセロナ原則3.0和訳

様々な識者が解説しているところですが、改めて整理すると。

  • メディア掲載(アウトプット)だけではなく、それによる成果(アウトカム)まで追っていたけど、今後は長期的なインパクトも考慮しましょう

  • 売上や企業のパフォーマンスだけじゃなく、社会や文化といった範囲にまで測定範囲を広げていきましょう

  • コミュニケーション量ももちろん、質もしっかり評価されるべき

  • 今やソーシャルメディアも等しく測定され、評価されるべき。

  • データの良しあしを測って終わるのではなく、評価・反省を繰り返し、応用していこう。

みたいなこと言ってます。つまり世界的にみるとPRとは、2020年の時点でもはや、メディア掲載だとか、販促活動の一環だとかいう次元から、企業や団体はコミュニケーションという方法で、ステークホルダーとオンラインでもオフラインでも会話を続け、意見を踏襲しながら、どんどん変えて成果だしてね、みたいな方向を向いています。この基準をとっても、PRの効果は経営環境の変化に対する指標を評価すべきと書かれています。

それは、コミュニケーションではない!

ここまで散々、パブリックリレーションズのことを話してきましたが、最も多くの方が勘違いしているポイントは、コミュニケーションです。なぜかパブリックリレーションズのことになると、対話が成り立ってないのです。みなさん、自社の伝えたい情報だけを受け取ってもらうことが、コミュニケーションだと思ってませんか?それは単なる宣伝であり、行ったら終わりの片道切符です。宣伝を受け取ってもらうことに集中するため、コミュニケーションが成り立ってないのです。
コミュニケーションの起点は、相手が興味のある情報提供からだと思いませんか?初対面の人にいきなり「自分はこんな人間で、こんなことが得意で、こんなことが好きです」と話し始めないですよね?趣味は何ですか?どちらにお住まいですか?など、まず聞くことから始めて、何か共通点を見つけられたらそこから双方向のコミュニケーションが始まりますよね?日常生活でできているコミュニケーションが、なぜか企業の活動になるとできていないのです。広報やPRの担当者は、もっと世の中の声に耳を傾けるべきで、聞こえてきた課題に対して即座に反応し、コミュニケーションを図ることが求められます。自分たちの宣伝活動にばかり時間を割いてはいけません。むしろ、聞くことに多くの労力と時間を割くべきです。

民意を味方にする、それがPR

なぜ、生活者の声を聴き、そこに反応することが必要なのでしょうか?答えは表題にした通り、民意を味方にし、経営環境を改善するためです。
具体的な事例があるとわかりやすいでしょう。
まずは代表作ですが、冷凍餃子の#手間抜き論争 です。こちらはまさにパブリックリレーションズと言えますね。結果、売上にも寄与しております。世の中で起こっている事象に耳を傾け、口にできないモヤモヤを代弁し、生活者を巻き込みながらよりよい社会を築くためのコミュニケーションを実施しています。改善した経営環境は、「冷凍食品を食卓に並べてはいけない」という考えや意見が、少し緩和したことだと思います。文化や習慣などは、無意識的に縛られてしまっているもので、広告宣伝で変えることは難しいものです。

パブリックリレーションズは、対話なくして成り立ちません。民意を味方にすることが、ブランディングにも寄与し、経営環境が改善されることでしょう。NIKEのブランディングもまさに、民意をうまく味方にしていると言えるでしょう。

まずは、耳を傾けることから

PR担当者がもし今、自社の宣伝活動にばかり力を入れているなら、一旦立ち止まって、まず世の中や社内の声を聴くことから始めてください。もしかすると、PRの目的が異なっているかもしれませんが、一度経営層と話をして、そもそもPRという言葉が何を指しているのか、聞いてみるのも一つです。PRはパブリックリレーションズの略ですが、なぜか日本には解釈は3種類あります。認識が異なればコミュニケーションエラーが起きますので、まずは整理から始めてみてくださいね。

一方この記事で、あまりなじみのないパブリックリレーションズという手法に少しでも興味を持っていただけた方がいらっしゃったら、とても嬉しいです。パブリックリレーションズは今かなり注目されている手法だと思ってますので、ご興味ございましたら是非ご連絡ください。


私のプロフィール

リクルート関連会社で求人広告の企画営業、カフェプロモーションの企画制作会社でのシニアアカウントエグゼクティブを経て、ブランドプロデュースカンパニー株式会社マテリアル入社。化粧品/日用品メーカーの新商品販促企画、PRディレクションを経験。クリエイティブやプロモーションと連動したPRコンストラクチャーを得意とし、PRに紐づくクリエイティブディレクションも行う。現在新規事業を推進するため、株式会社CONNECTED MATERIALに出向し、広報とメディアとのマッチングプラットフォーム「CLOUD PRESS ROOM」のカスタマーサクセス責任者、広報アドバイザー、PRプランナーという顔つきで従事。

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