なんかどーでもいいようだけど、大事なものを失ってダメージを食らったハナシ
ある書籍のための企画書をコツコツと執筆していた。
執筆していた、はちょっと違う。
アイデア出しとでも言っておこう。
職場の「ちょっとお歳を召した」女性陣の雑談がバツグンに面白く、
「これを元に一冊のほんにまとめられるんじゃないか?」
という仮説で企画書を作った。
準備には、「本当に念入りに」時間をかけた。
しかし、である。
「インタビューの聞き取り」が
土壇場になってまたたく間に1日で断られ、
母数が極端に減り(1人しかいなくなった)ため、
インタビューを断念するということになってしまった。
できるだけ数多くの方の聞き取りをしようと、
丁寧に企画趣旨、方法、倫理等を
お伝えしたにもかかわらず、である。
なぜかというかやっぱり誤解されていたのだ。
「インタビューって個人情報でしょ? それってダメじゃない?」
「これってデートでしょ? 食事のあと飲みに連れてってくれるのかしら?」
好き勝手に(僕には困る)解釈され、語り手同士、
喧々諤々(けんけんがくがく)な言い合いになってしまったのだ。
考えてみれば、自分は底辺の(そう思われているらしい)人間であり、
そんな人に話すことなんてない、ということなんだとか。
うーん。ザ・格差社会。
ただ、ある方へのインタビューの可否を聞いたときの返事が、
自分にとってはかなり厳しかった。ツライ。本当に参ってしまった。
こんな言葉をかけるぐらいなら、
1ミリでもインタビューに応じて欲しかった。
なんですかこれは!?
輝けるのはあなたがいたからであって、拒絶されるとフッと灯が消えてしまい、そこには漆黒の世界でもがく僕でしかなくなるんだと。
どーにもこーにも。
にっちもさっちもいかず、唖然としていた。
気分を変えよう。
弁当を買って、
職場近くの公園で、
とにかくお腹だけは満たそう。
そうすれば冷静になれる、と思う。
「えーと、鳥めし弁当を」
「あ、こちらは取り扱っていないんですよ」
「メニューにあるのに?」
「はい」
「ん-、じゃぁ、高菜弁当を」
「それもやってないんです」
「え?」
「のり弁当ならあります」
「う、あ、じゃあ……、のり弁当を」
のり弁当しかなかった。何だこの店は?
さて、弁当を食うか。
ベンチに腰を下ろす。
ん?
あれ、なんか、ポツッと水滴が……。
っていうか雨降ってキターーーーーー!!
階段の下に空間があるので、
そこに逃げ込む。
地べたに座る。
スーツが汚れるかな?
やっとの思いでのり弁当を食す。
ザーッと降る雨音を聞きながら、
今回の失敗を振り返ってみる
うまくピタッとハマる人もいないことはないと思うけれど、
かみ合わなかったり、
すれ違ったりするのは、
世の中には本当によくあること。
でもね。
「あなたは輝いているけど、私なんかとてもとても……」
嫌なら嫌と言ってくれた方が、武士の情けになるってもんだ。
こちらの傷口は相当深くエグらるのは同じ。
というか、「今までのこの一人芝居はなんていうプレイなんですか?」
と逆に聞きたい。
語り手候補者に、本の企画趣旨を練り、方法や倫理なども含めて一枚ペラの分かりやすいものを読んでもらい、OKをもらうまで2か月かけた。
その上、インタビューのアポ取り、日時設定、話すテーマ(これは一つしかなく「あなたの生まれてから今までのことを聞かせてください」。これだけ)も理解してます、とみんな言ってた。
このセッティングにも1か月を費やした。
ところが。
「自分だけかと思ってた!」
これが勘違いの導火線に火をつけちゃった。
一人のこの言葉がきっかけで、緊急井戸端会議が開催されたらしい。
いやー、想定外も想定外。
「あのー、みなさんに個別に同じ趣意書をお渡ししてますよね?」
読んじゃーいねー。
「話したくないことだってあるよ?」
いやいや、誰しもそんなこと100や200はあるでしょう。
僕だって。あれ? 結構、みんなには赤裸々に話してるな。
ともかく、これは「雑談」だから。
趣意書にも書いてあるように
「話せることで構いません」で良かったんですよ?
「インタビューは雑談じゃないでしょ!」
確かにそうです。おっしゃる通りです。
その雑談が、非常に面白く、示唆に富み、
しまいには社会課題にまで膨らんでいたから、
同じように、話して欲しかったんです。
「みんなと一緒じゃダメなの?」
あれ? 個人情報がどーのこーの言ってる方もいらっしゃいましたよね。
僕はみんなに知られないようにするために1対1の場を設定しましたけど。
延々と質問攻めにあう僕。
何か間違えたかな?
「間違っていて、正しくもある」
おっと、天から「カウボーイビバップ」のセリフが降りてきたよ。
もう何もかも終わりにしたい……。
「始めたら終わらせなければいけないの」
今度は村上春樹作品の登場人物のセリフまで降ってきた。
じゃあ、結論はこうだ。
「やれやれ」
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