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十の輪をくぐる 辻堂ゆめ

認知症の母をめぐる物語に惹かれて読んだ作品。
父も将来こんな感じになるのだろうかと思いながら、バレーボールには全く興味がないけれど読んでみました。

最初は主人公の泰介に全く感情移入できなくて、コイツサイテーな奴だなという嫌悪感を押し殺しながら読むのが辛くて辛くて最後まで読めないかもと不安になったけれど、もっと最悪なラスボス(万津子の夫)が登場してから目が離せなくなり、最後まで一気に読めました。
こんな作品をまだうら若き作家さんが書き上げたなんて、本当に信じられません。

ネタバレですが、この物語は認知症がクローズアップされていますが、それと同時に大人のADHDを取り扱った作品でした。
育てにくい子供だった3歳の泰介が人殺しの容疑までかけられていた事実に奈落の底を味わうシーンから、一人娘から指摘をうけて病院に行きADHDと診断されてからの泰介の行動の変化に明るい未来が開け、泰介が母への感謝の気持ちをあらわした後の万津子の泰介への言葉は、涙なしには読めませんでした。

以下、内容をネットより引用します⬇️
STORY🔸認知症の母が呟いた家族の「秘密」とは。スミダスポーツで働く泰介は、認知症を患う八十歳の母・万津子を自宅で介護しながら、妻と、バレーボール部でエースとして活躍する高校二年生の娘とともに暮らしている。あるとき、万津子がテレビのオリンピック特集を見て「私は……東洋の魔女」「泰介には、秘密」と呟いた。泰介は、九州から東京へ出てきた母の過去を何も知らないことに気づく。五十一年前。紡績工場で女工として働いていた万津子は、十九歳で三井鉱山の職員と結婚。夫の暴力と子育ての難しさに悩んでいたが、幼い息子が起こしたある事件をきっかけに、家や近隣での居場所を失う。そんな彼女が、故郷を捨て、上京したのはなぜだったのか。泰介は万津子の部屋で見つけた新聞記事を頼りに、母の「秘密」を探り始める。それは同時に、泰介が日頃感じている「生きづらさ」にもつながっていて──。一九六四年と二〇二〇年、二つの東京五輪の時代を生きる親子の姿を三代にわたって描いた感動作。

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