ズッコケおっさん5人組 慰安バカンうっふん珍道中〜和歌山編〜その3・完結編⭐︎サウナの妖精が微笑んだ
朝だ。
隣で寝ているタコちゃんの携帯アラームがかれこれ15分も鳴り続けている。うちの中2になる長男もこんな感じで全然起きない。若さ故か。まだ40才そこそこの最年少メンバー。可愛らしい初々しいおっさんだ。それにしても起きない。早朝バズーカでもやるか。
先日うちの長男が大事なそろばんの暗算検定の日、こんな感じで起きたらすでに試験が始まっている時間で、しでかしてしまった母と長男ががっくりきているところに、すでに起きていた次男(小2)がすたすたとやって来て『そんなことより俺の誕生日を楽しもうぜ!』とポジティブすぎる言葉を言い放ち、場が和んだというエピソードがあった。若さ故の失敗だ。
時間は7時過ぎ。まだ鳴り止まないアラームから解放されるため、流石に起きる事にした。
外は雨が降っていた。昨日の帰り道に見つけた純喫茶森永という店にモーニングに行こうと楽しみにしていたのだが、雨だし僕以外全員傘を持ってないのもあり、出発時間までホテルでのんびりする事になった。
モーニングコーヒーを淹れていると、やっとタコちゃんが起きて来て、朝からお風呂に入っていた庸ちゃんが戻ってきてみんなでコーヒーを飲んだ。結局わざわざ喫茶店に行かなくても良かったのだ。『幸せは外にあるんじゃない!幸せは現場にあるんだ!』青島刑事ばりな名言が頭の中に響き、リフレインが叫んでいた。どうしてどうして僕たちは出逢ってしまったのだろう。壊れるほど抱きしめた…。おっさんを。
サウナの予約時間は10:15だったから、ここから30分かかることを計算して早めに出発した。途中サービスエリアに寄ってコンビニで軽い朝食を買い、しばし休憩した。
気がつくと景色は山道になっており、秘境感が徐々に増して来た。いよいよ二ノ丸温泉が近い。山道を登って行くと両脇にコテージが見え、遂に二ノ丸温泉が姿を現した。
少し早めに着いたのもあり、温泉はまだオープンしてないようだった。少しコテージに車を停めて山々の絶景を見ながら待った。
そして時間になり駐車場に車を停め、いざ二ノ丸温泉へ。温泉とは言え今回は離れのサウナ小屋の時間貸し切りだったので、厳密には温泉ではなかった。サウナが終わった後で本館の温泉にも入る事はできたのだけれど、結局行かず次回の楽しみにとっておいた。脱衣所で健ちゃんに貸してもらった海パン姿になり、道路を少し下ったところにあるサウナ小屋まで歩いた。まだ雨は降り続いていた。
道沿いにサウナ小屋があり、滝のある川まで降りて行けるようになっていた。前日のホテルでもサウナ体験をしたので、そんなにドキドキ感はなかった。温冷3セット。サウナで10分ほど汗をかき、水風呂、外気浴でクールダウンする。それを最低3回繰り返すのだ。流石に常温の水風呂は冷たかったので、薪で沸かしてあるぬる湯に浸かった。
しかしそもそも序章でも触れたが、元々個人的にはサウナブームには批判的な意見だった。サウナは元気が有り余る人がするものであり、玄米食同様、それぞれの身体の状態で合う合わないがあるはずで、世の中に万人に効くものなど無いのだ。増してや元気がない人、虚弱体質の人にはサウナは危険なものであるはずなのだ。《ととのう》という体験も言い方を変えれば臨死体験なのだそうだ。むしろその体験がクセになってしまうのかもしれない。ドラッグ的な魅力でみんなが取り憑かれるのだろう。
NO MORE DRUG! ダメ!ゼッタイ!
そのうちサウナも合法ではなくなるかもしれない。だとしたら今のうちに入っておこう。
批判しててもしょうがないのでとにかく楽しむ事にした。実際ロケーション、シチュエーションはこれほど完璧なものは他に無いのだ。約1時間半たっぷり楽しもう。そしてなによりメガネ禊ぎの儀式が待っているのだ。
それにしても5人だけで行動していると、誰かがカメラを撮る役になり、なかなか全員が一緒に写真に収まる事ができない。そこで前日に思いついた、《一緒に撮れないなら後で合成すればいいのだホトトギス》作戦。とにかく画期的な発明を思いついてしまった。ピンチをチャンスに変える力こそ、我々あすか一座の真骨頂!そこでできた最初の集合写真がこれだ!
うーん。まったく違和感がない。これほどまでに溶け込んでいるナチュラルな集合写真があるだろうか?くすりとも笑えないほど自然体。
そして折角なのでサウナ小屋でも集合写真を撮ってみた。
どうだろう?もはやサウナの妖精もしくは妖怪と化してしまった僕。サウナ界ではととのった人にしか見えない《ととのん》という妖精がいるらしく、おそらくこういう感じなのだと思う。まさか自分がととのんになるとは思わなかったが。
世の中には冗談ではなく本気でおっさんの妖精を見たという人が割といて、僕が勤める会社にも実際に自宅で見たという同僚(女性)がいる。きっとこんな感じのおっさんなのだろう。おっさんの妖精は愉快でちょっとイタズラ好きらしいのだ。サウナの国フィンランドにもきっといる事だろう。
しかし最高の遊びを発明してしまった。今度からはこの手法で集合写真を撮ろう。
それにしてもサウナはプライベート感もあり本当に贅沢な体験だった。ましてや庸ちゃん持参の手作り熊笹が普段は楽器やヒーリングの役目をしているのに加え、ロウリュウサウナのように煽ぐことで熱波の効果でよりサウナを楽しむことができた。なんという便利な道具。オールマイティすぎる。
その間、座長のたるたると僕でメガネ禊の儀を行った。天国のにゃおも喜んでいる事だろう。あ、まだ死んでなかった。とにかく喜んでくれたら嬉しい。
そして全員で滝の前で記念撮影もした。真冬だというのになんと爽やかな写真だろう。
そして時間が迫っていたので最後のサウナをみんなで一緒に入った。クライマックスに庸ちゃんによるネイティヴアメリカンの歌と熊笹アウフグースで一気にサウナ小屋のボルテージが上がった。気がついたらサウナが好きになっていた。ととのう、という体験はいまいち分からなかったが、またサウナをしてみたいと思う。サウナの魅力に取り憑かれてしまったのかもしれない。いや、サウナ妖怪に取り憑かれたのか?そう言えばさっきから肩が重い。
そして名残惜しいが時間になったのでサウナを後にした。そしてぽっかぽかになった一同はぺっこぺこになった腹を満たすため、二ノ丸温泉内にあるラーメン屋《ストライク軒》へ。
スパイスカレー、レモンラーメン、どれも美味しそうだったが、悩んだ挙句和歌山つけ麺最高峰とも言われる二ノ丸つけ麺を注文した。
美しいフォルム。つけ汁に入ったネギと玉ねぎが嬉しい。なにより特筆すべきは湧き水で水出しした昆布出汁に浮かぶ麺。これがいい仕事をしていて、最後に残ったスープにこの昆布出汁で割ると素晴らしく美味しかった。このスープ割りを味わうためのつけ麺かと思うほど、それはそれは完成度が高かった。なんでもここの湧き水で出汁を摂ると料理が美味しくなるらしいのだ。一緒に頼んだ唐揚げもびっくりな大きさでお腹いっぱいになった。ふと横を見るとサウナの妖精がまだ微笑んでいた。こいつ家まで付いて来る気か?
そして食後の運動ということで卓球対決をする事になった。これがまた楽しかった。トーナメント制で僕は早くも敗退してしまったが、試合は白熱した。そして優勝したのは流石の座長たるたるだった。
そしていよいよ帰路につくことになった。
途中新鮮市場・浜のうたせに寄り、海鮮やお土産を買い、カフェに行こうと言うことになった。どこまでも貪欲なメンバーたち。
近場にたるたるたちが以前行ったというロケーションの良い素敵なカフェがあると言うので向かった。時間は4時。店内には店主が現地で実際に買ってきたラダックの羊毛の靴下やネパリバザーロの雑貨など、ナチュラル系の素敵なお店だった。2階席に通され、コーヒーと各自ケーキを注文した。
僕はイチジクとカルダモンのクランブルケーキを頼んだが、これが素晴らしかった!コーヒーもネルドリップでまろやかで、なによりカップにたっぷり入って嬉しい。とにかくカルダモンとコーヒーが合うんだもん。いいんだもん。
カルダモンのせいか、心も身体もぽっかぽかになった。高波動なケーキで旅を締めくくれて感無量だった。ほんとにこんなに幸せでいいんだろうか?いや、これでいいのだ!もしかしたら明日死んでしまうのか?と、そんな考えが頭をよぎったが、もはや明日死んでもいいぐらい幸せだった。とにかくこの店、絶対また来る!
雨はまだ降り続いていた。帰りにコンビニに寄り、ポカポカの身体にアイスチャイを流し込んだ。さぁ。いよいよ家に帰ろう。
途中バイパスの入り口が工事で封鎖されていたりで、時間がかかってしまったが、午後19:00に明日香に着いた。そして最後の目的地はもちろんメガネの持ち主、にゃお宅だ。
隣の晩御飯よろしくアポ無しで突撃するおっさんたち。無事、滝で清められたメガネを届けることができた。喜ぶにゃお。メガネはやはり曇っていた。
というわけで1泊2日のズッコケおっさん5人組珍道中はクライマックスを迎えた。めでたしめでたし。よくよく考えたら大したことはしてない気がするが、これでいいのだ。次回は和歌山ライブツアーか。是非実現したいものだ。楽しさはこうやって螺旋状に上がっていく。次回の珍道中も乞うご期待!中身があるのかないのか分からない長い文章を最後まで読んで頂き、
あーりがーとさーん!
完
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