奥田義幸

小説家を目指している者です。 作品を読んでみて、ご指摘等ありましたら是非コメントにてお…

奥田義幸

小説家を目指している者です。 作品を読んでみて、ご指摘等ありましたら是非コメントにてお願いします。 フォロー・スキ貰うと非常に喜びます。 絵→ノーコピーライトガール

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短編|向日葵と銃弾【第二話】

 フョードルにとって、それは初めての感情だった。頭で思い浮かべるだけで、熱が思考を妨害し、強制的に人間本来の繁栄に基づいた本能を自覚させられる。  レーナの殺しに失敗した後、フョードルは一言も言葉を発さずにその場を後にした。単純に自分の中に芽生えた感情、それを処理しきれずの逃走である。しかし、その事実はフョードルにとって初の依頼の失敗であり、姿を見られた上に逃げるというのは殺し屋失格だ。姿を見た人物は一様に命を奪わなければならない。  フョードルは、熱が徐々に冷めてきた頭

    • 短編|向日葵と銃弾【第一話】 

       静寂が支配する真夜中の街路。この物語の主人公であるフョードルは、硬いレンガ造りの地面から伝わってくる氷のような冷たさに辟易する。冬の寒さが苦手な人は多いことだろう。この地、モスクワではお湯を使うことができたり、暖炉を設置しているのも、一定の裕福な家庭に限られ、冬は深刻な問題なのだ。  フョードルもその一例から漏れず、悴んだ手をロングコートの腹部あたりについているポケットへと押し込む。フョードルの仕事は殺し屋だ。指先の硬直は命のやり取りをする際に障害となりえる。ポケットの中

    短編|向日葵と銃弾【第二話】