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記事の小説まとめ

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記事で書かれた小説をすべてまとめています。
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#青空文庫

《記事小説》小川未明読書感想文通 7通目

ショコさんからの手紙がくるスピードは、とんでもなく早い。

昨日、手紙を送ったら、明後日には、手紙の返信がくるぐらい早いのだ。

速達で送っていないから、ショコさんは私の近くに住んでいるみたいだ。

もしかすると、どこかで会っているのかもしれない。

ショコさんらしき人が、私にはなしかけてくるのを想像してみる。
きっと、落とし物をひろってくれるに違いない。私はよく落とし物をするから。

よく落とす

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《記事小説》小川未明読書感想文通 6通目

私は手紙セットにこだわりがある。

たくさんたくさん便箋を書くから、なじみのお店があって、そこで便箋をいっぱい買うのだ。

海ちゃんが便箋一枚の手紙を私に送ってきていたとき、私は返信で便箋を二十枚も送った。

私としては、これで手紙が途切れるなら文通なんてしなくていいやって、傲慢に思っていたのよね。

でも、海ちゃんは律義に手紙を送ってくれて、私はとってもうれしかったの。

小川未明の私は姉さんを

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《記事小説》小川未明読書感想文通 5通目

手紙を書くようになってから、驚いたのは、便箋と封筒が入った手紙セットの多さだ。

可愛さを追求すれば底がないかのように、手紙セットというものは、様々なものがある。

私は最初のうちは、どんなものでもいいと思って一番安くてシンプルな便箋と封筒で送っていたが、ショコさんは可愛らしい封筒と便箋で返信してくるので、私も手紙セットを選んで手紙を書くようになった。

さすがに可愛いすぎるものを買う勇気はないの

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《記事小説》小川未明読書感想文通 4通目

ときどき、文通をしていると海ちゃんがどういう人か、全くわからなくなるときがある。

でも、人ってそういうものよねと納得することもある。

私がわかるのは、海ちゃんは手紙を書くのにかなり時間をかけているのだということくらいだ。

海ちゃんの手紙は、いつもボールペンで書かれている。
そして、書き損じがないのだ。

きっと、海ちゃんは書き損じしないように、手紙の内容を別に考えた用紙を携えて、手紙を書いて

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《記事小説》小川未明読書感想文通 3通目

ショコさんと文通をするきっかけは、なんだったかは覚えていない。

おたがい、相手を知らないなか文通をしているというのは、なかなかに面白いと思う。

今まで、人とかかわりを持ちたくなかったのに、ショコさんと文通をするようになってから、手紙に書く内容を考える日々だ。

考えるうちに、手紙というものは本当に不思議だと思う。

手紙は格式ばったものであり、厳格なルールがあり、その通りに書かなければならず、

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《記事小説》小川未明読書感想文通 2通目

私の文通相手、海ちゃんは私にとっても甘い。

本が読めない私は、インターネットの情報をうのみにしてしまう。
それが危ないことは重々承知してるのよ。
でも、頼りがそれしかない場合、どうしろっていうの。

気が狂いそうになりながら、いつも暮らしている。

そんな私は文通をしている。
海ちゃんという名前の素性もわからない誰かと文通している。

手紙に文字をしたためるっていう感覚。
なかなかに手間だけれど

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《記事小説》小川未明読書感想文通 1通目

文通相手のショコさんが読書を習慣づけたいらしく、小川未明なら短いので、いっしょに感想文を書かないかとさそってきた。

ショコさんが頼み事をするなど、めずらしかったので、私は快く応じた。

普通に読んでは面白くないというので、ルールを決めて読書感想文を送りあうことになった。

ルールは「青空文庫」の「小川未明」の作品を読むこと。タイトルの五十音をショコさんは上から順に読み、私は下から順に読む。

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