《記事小説》小川未明読書感想文通 1通目
文通相手のショコさんが読書を習慣づけたいらしく、小川未明なら短いので、いっしょに感想文を書かないかとさそってきた。
ショコさんが頼み事をするなど、めずらしかったので、私は快く応じた。
普通に読んでは面白くないというので、ルールを決めて読書感想文を送りあうことになった。
ルールは「青空文庫」の「小川未明」の作品を読むこと。タイトルの五十音をショコさんは上から順に読み、私は下から順に読む。
そして、手元にあるショコさんの手紙
先に届いたショコさんの手紙中ほどに、小川未明の「愛に就いての問題」の読書感想文が書かれているので抜粋しよう。
愛に就いての問題を読んだわ。小説じゃなかったわね。私、小川未明の小説あまり読んでないから、こんなおはなしがあるなんて、驚いたわ。
小説じゃあないけど、面白かったわね。
難しい言葉もいっぱいあったけど、最後まで読めたわ。
知ってはいたけれど、本当に短い文章ね。びっくりしたわ。
この短さに、愛について語りつくしているのよね。
母親の愛から、見ず知らずの人間を助ける愛とはいかなるものか?
そんな感じの文章だったわ。
最期までつきあうことや、つきそうことの難しさも説いていたわね。
海ちゃんは別に最後まで、私の文通相手になってくれずとも、よくってよ。
でも、つきあってくれる限り、私は甘えちゃうんでしょうね。
ショコさんには会ったことがないが、口調はいつもこんな感じである。
「だわ」「わね」「わ」というように、お嬢様っぽい口調だ。
私はショコさんの性別を知らない。
知らなくても、さして問題はないからだ。
さて、次は私の番である。
小川未明からタイトル五十音の一番下、「笑わなかった少年」か。
とりあえず、読んでみる。
読み終えるのは早いだろう。
小川未明という作家は、短すぎる話が特徴にあげられる。
なぜ、あんなにも短い話が多いのか。
私には、なんとなく感じられることがある。
きっと、たくさんのおはなしを子供たちに聞かせてやりたかったのではないかと。そう、思ってしまう。