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海辺のニャフカ

もし、人生が1本の映画だったら、私はメガホンを握りたい。

演出家として、あらゆるシーンをコントロールしたいのだ。主演俳優としてキャスティングされた自分自身を、時には泣かせ、時には笑わせ、どう転んでも“私の物語”になるように仕立て上げる。そんな妙な妄想にふけっていたある日、不思議な夢を見た。

その夢では私は猫に転生していた。にゃーん、と一鳴きしてみると、そこに姉が現れた。姉と言っても、これも猫である。彼女はなぜか私を見つめ、「さあ、父のチュールを奪い取るんだ」と真剣な顔で言った。夢の中で私は姉と共に計画を練り始める。まるで猫版の“オイディプス王”だ。チュールという猫にとっての神聖なエリクサーを巡る争いが、何やら壮大な悲劇の予感を漂わせていた。
現実の世界と夢の世界が交錯し始める。夢の中で父のチュールを奪い取ろうとすると、現実では何故か自分の人生の場面が次々と展開される。少年時代の記憶、愛した人々、そして失われたもの。すべてがぐるぐると渦を巻き、私の意識を押し流していく。そこにあるのはただ「私」という存在への問いかけだった。

猫の身体の中で目覚めると、あらゆることがくっきりと見えた。猫の視界というのは驚くほどクリアだ。草木の葉の一本一本、空を横切る鳥の動き、そして姉の鋭い眼差し。彼女はどこか遠くを見つめ、「ニャフカ」とだけつぶやいた。「ニャフカ」――それが私の名前なのだろうか。それとも、運命の暗示なのか。猫の私には、世界が謎に包まれているように感じられた。

ある日、父猫がチュールの缶を高らかに掲げて現れた。その瞬間、私は何かに駆り立てられるように彼に飛びかかり、姉と共にチュールを奪い取った。しかし、それが手に入ると同時に、何かが壊れていく感覚があった。まるで、長年の夢が叶った瞬間に訪れる虚無感のようなものだ。
チュールをくわえながら、私はふと思った。この世界のすべては、ただの現象に過ぎないのではないかと。私が猫として体験しているこの現実も、姉との関係も、父との争いも、すべてが現象として現れ、そして消えていく。その背後にある本質は何だろう。猫である私は、そんな哲学的な疑問に囚われ始めていた。

姉がそっと私に近づいてきた。彼女の瞳には、何かしらの答えが宿っているように見えた。「ニャフカ、あなたは何を見ているの?」彼女の声は、まるで私の意識の奥底を掘り起こすかのようだった。私は答えた。「この世界の本質を見つめている。そして気づいたんだ。私たちが見ているものは、すべて意識の中で構築された幻影かもしれないと。」姉は静かに頷き、「そうかもしれないわね。でも、それが真実かどうかなんて重要じゃないわ。大切なのは、私たちがここにいるという事実、そして今を生きているということ。」彼女の言葉に、私は一種の安堵を覚えた。そうだ、私たちはただここにいる。夢か現実か、そんなことは関係ないのだ。
そして、私は夢の中のニャフカとして、姉と共に海辺を歩くことにした。そこには広大な青い海が広がり、波が寄せては返す。風が私たちの毛皮を撫でる。その瞬間、私は何かを悟った気がした。私たちの運命は、まるでこの海の波のように、自らを導き、自らを形作っているのだと。それは決して外から与えられたものではない。私たちが選び、私たちが作り出してきたもの。そう、運命は時に人を導くかもしれないが、それはただただ、自分勝手に自分を導いた結果なのさ。猫としての私も、人間としての私も、結局は同じことを繰り返しているだけなのかもしれない。

夢から覚めると、私はベッドの上にいた。猫であった感覚がまだ残っている。妙に柔らかな四肢、そして鋭い爪の感覚。しかし、もう一度自分を確かめると、そこには人間の私がいた。ふと、隣の部屋からチュールの缶を開ける音が聞こえてきた。猫を飼っている家の、よくある日常の風景だ。その瞬間、私は思ったのだ。夢の中のニャフカも、現実の私も、ただ自分勝手に世界を渡り歩いているだけではないかと。そして、そうすることこそが生きるということなのかもしれない。助けを求め、何かに縋り、そして最後には自らの選択で助かっていたのだと。

私は立ち上がり、窓の外を見た。外は晴れている。海辺のニャフカは、今もどこかで波と戯れているだろうか。いや、そんなことはもうどうでもいい。大切なのは、私がここにいるという事実。夢から覚めても、私は私なのだ。自分勝手に導かれながら、今を生きている。そう気づいたとき、私は思わず微笑んだ。人生は、映画のようにコントロールできるものではない。むしろ、私たちはその映画の一部として、ただ進んでいくしかないのだ。そんなことを考えながら、私は再び歩き始めた。




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