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精神科の強制入院の現状とこれから〜入院に同意/決定するのは誰なのか

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昨日当直をしていたら、久しぶりに応急入院という入院形態で入院になった方がいました。施設で落ち着かなくなり、ハサミやカミソリを持ち出すなど、かなり危険な行為を繰り返していたそう。

夜中に従兄弟が本人を連れて病院に来院しました。施設職員の付き添いがない=施設に戻ってこられても困るから入院させてほしい、という無言の圧力を感じました。

この場合、診察した結果「入院の必要性がある」と判断するのは私たち精神科医ですが、さて最終的に「入院に同意して決定」するのは誰になると思いますか?(大前提として本人の同意での任意入院を目指しますが、今回の場合はそれが難しくやむを得ず強制入院の選択となりました)

実はこのケース、従兄弟は入院に同意することができないと法律で決まっています。夜中から他の同意できる家族を探しましたが見つからず、この場合はやむを得ず精神科医が入院を「決定」しました。

しかし精神科医が入院を決定するケースは意外にもこの応急入院だけ、しかも応急入院の期間は72時間に限定されています(72時間を過ぎたら自動的に退院か、入院を延期する場合は72時間以内に他の誰かの同意を得なければなりません)。

基本的には、本人、家族の同意(任意入院、医療保護入院)、または余程危険が差し迫っている場合は県知事の命令(措置入院)、が入院には必須なのです。

つまり本人や家族が入院を拒否すれば、精神科医の独断で入院させることはできないのです(今回のケースも三親等以内の家族と仮に連絡がついていれば、応急入院にはできませんでした)。

昨今、精神科の強制入院に対する風当たりがとても強くなっているのを感じますが、現状はどちらかというと家族や地域のニーズによって入院となっているケースが多いのです。

2022年に国連は日本に対して、精神科病院への強制入院を廃止するよう勧告しています。ただ今回のケースを見てもお分かりのように、強制入院の廃止にはまだまだ多くの課題があるというのが現状です。

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