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競馬場での子育て失敗談  小児科医が語る 

■散歩にうってつけの東京競馬場


東京競馬場は緑が綺麗な広大な敷地に子どもの遊び場があります。食事もできる場所がありますが、スペース的には立ち食いしかできないので、ちょっと不便です。しかし、お散歩できるので、デートにはうってつけのスポットだと思います。

私は家族と東京競馬場で歩いていると、いいアイデアが浮かんでくるので、子どもたちが小さい頃は奥さんが作ってくれたお弁当を持って、よく行ったものでした。ただ小学生の時、東京の下町生まれの私は同級生の親が浅草の場外馬券販売所に通い詰めていて家計に負担をかけ、友人が悩んでいたのを横で見ていたため、ギャンブルにはまったくいい印象がありません。
しかし、私の母校は干潟を挟んだ先に金沢競馬場があったので、競馬にのめり込んでいる先輩医師がいたので、全く興味がないわけではありませんでした。実際、競馬新聞で金沢競馬を見ても、結局は解説者のコメントや予想でお金をかけるわけですから、宝くじよりは当たるぐらいなのでしょう。

そんな中、私が東京競馬場によく行くと言う話をしたところ、ぜひ一緒に連れて行って欲しいと言ってきた友人医師がいました。

■白熱する競馬場での出来事


「ガチガチのレースだけ買えば配当金がちょっとずつ増えるだろ?」

確かに一度は思うことです。私と娘と友人の3人で朝から東京競馬場にいきました。思惑通り、友人の資金は少しずつ増えていっています。一緒に行っていた娘も、レースが楽しいのか、それとも友人が賭けた馬が勝つことが楽しいのか、テンションを上げています。

「お父さんは買わないの?」
「仕方ないなー」

娘の一声で私も馬券を買うことにしました。単勝であれば確かに配当金はもらえるのです。ここまではいいだろう。ここまではいいだろうと、次第に賭けるお金が増えてきました。次は複勝にしようと、最後に可能な限りのお金を注ぎ込みました。

レースは白熱して、ゴールしました。
勝った? 負けた?
なかなか結果が出ません。実は私は10万円ちょっとを注ぎ込んでしまい、勝てば60万円ほどになりますが、負ければ千円札しか残らない状況。

場内にアナウンスが流れて写真判定に。すると娘が、「どしたの? どしたの? ねー。どしたの? ダメなの?」と静まりかえった観客席で大声を出し始めます。スクリーンに完全に気を奪われていた私は、思わず「うるさい!」と娘を怒鳴りつけていました。

普段の私は娘を怒鳴りつけることはありません。完全に競馬によって人格が変わってしまっていました。そんな姿を見た友人も、完全に引いていました……。

■勝ったものの得たものは……


結果、私は60万円を手にして、その後、はしゃぎまくったのですが、負けた友人は引いているし、娘は私と一切、目を合わせようとしません。

完全に私の『子育て失敗談』です。

それから友人と娘と食事をして帰りましたが、娘が不機嫌だったので友人が気を遣ってばかりの時間。友人のおかげで娘も少し機嫌を取り戻しつつありましたが、私に対しての不満を解消することはありませんでした。

まだ当時、言葉もたどたどしかった娘でしたが、家に帰るなり奥さんに、
「競馬場でお父さんに怒られた。何も悪いことしていないのにすっごい怒られた。お父さんの友達がお父さんが悪いって怒っていた。お父さんの友達は優しかった」
とびっくりするぐらいスラスラと話したのでした。

私は奥さんには大目玉。私が奥さんにことの次第を話して、怒られているのを見て、勝ち誇った顔をしていた娘の顔は忘れられません。そして、すっかり自分の未熟さに反省した私は、二度と馬券は買わない、いや買えないのでした。

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