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ブンデスリーガからの誘い

金曜日のトレーニングの後コーチから僕を含めた三人が呼ばれた。コーチは早口で何かを言った。後の2人の顔を見るとにやにやしている。僕はよく聞き取れなかったので、もう一度言ってくださいと頼んだ。すると、僕たち三人にFC Augsburgからのプライベートトライアウトの誘いが来ているということがわかった。1人は他のブンデスリーガのチームからも誘いを受けている超瞬足のウィンガー、ノア。もう1人は華麗なドリブルが持ち味の天才肌のウィンガーのパウル。そして迫力のある左利きのドリブルと的確なパス、いかなるポジションもこなせるボランチの僕。それぞれ現チームでの欠かせない戦力の三人だ。
僕は嬉しさのあまり笑顔になった。やっとドイツでも僕の実力を認めてくれるプロチームが現れた。日本で、横浜マリノスユースの誘いを断り、在籍していたFC東京ユースも辞めてドイツに来たのはドイツのブンデスリーガに入りたかったからだ。トライアウトは3日後の月曜日に迫っている。僕の心は嬉しさと楽しみと少しの緊張で高まっていた。

アウグスブルグは家から60km程西にある。元日本代表の宇佐美選手が2シーズン在籍していた。ドイツの一部18チーム中現在ランキングは13位だ。
当日、学校を早退し、もう1人のチームメイトを乗せて向かった。
トレーニングはミニゲームとツータッチのボールポゼッションが中心だ。個人個人のパスの技術とスピード、判断の速さが現チームより優れていると思った。昨シーズン僕の現チームからやはりトライアウトを受けてアウグスブルグに入ったロレンツは今シーズンプレイタイムは合計わずか32分で厳しいシーズンを過ごしている。リスクは入れたとしても試合に出れない可能性がある。試合に出れなかったらなんの意味もない。だが僕はスタメンになれる手応えを感じた。

フィールドの後は施設についているジムでトレーナから指導を受けた。普段筋トレをしてない僕は手こずったがプレーヤーが手取り足取りとても親切に教えてくれた。みんなすごい体なのはこのトーレーニングのおかげだろう。僕はプロチームの施設の良さに面食らった。

トレーニング後僕たち三人はそれぞれ両親と共にコーチ陣とミーティングを受けることになっていた。
30分ほどロビーで待って僕たちは部屋に呼ばれた。三人のコーチが座っていた。まず彼らは一年前対戦した時に僕のプレーを初めて見て、左利きのトラップやドリブルを気に入り、1年間あらゆる試合を見てくれていたそうだ。                           君の強みとどこのポジションをやりたいのかと聞かれた。僕は正確なパスとドリブルとディフェンス能力が強みで好きなポジションはボランチと言った。コーチたちは大きく頷いて同意したようだった。コーチ三人それぞれが僕のプレーの特色と良さを細かく教えてくれて、あまりにもよく観察していることにびっくりした。
ほぼ僕とコーチのやりとりが1時間40分続いた。お父さんは最後にこのユースに今まで日本人はいたかと聞くと、もし君が来たら初めての日本人になるねと言った。サッカーに疎いお母さんは何も質問しなかったが、終わった後になんだか映画の一場面を見ているようですごく楽しかったと呑気なことを言っていた。
セカンドトライアルは明日だ。これで僕の行方が決まる。楽しみだ。

トライアウトのミニゲームにて


コーチに渡されたアウグスブルグ雑誌
これを読んでドイツ語上達してねと言われた。

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