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「甘い砂糖が生み出す奴隷」:読了日記『砂糖の世界史』

ざっとした内容

砂糖はみんな大好き。辛いものとか、お酒とかは人によって個人差はある。でも、砂糖は、口に入れた時点で、みんなが好き。文字通り世界中の人がみんな好き。甘ーい。みんな好き。即ち「世界商品」と言う形でグローバルに価値がある商品になる。

ということは、世界中で売れるわけだからこの栽培をいかに大量にできるかが勝負。そこで、熱帯地域で栽培できるぞ。中南米やアジアで栽培できそうだ。よっしゃ。そこ侵略して、プランテーションにしようや。サトウキビは他の作物と違って、でかいし加工が大変だから、めっちゃ労働力必要だぞ。現地の人は死んじゃった。よっしゃアフリカから奴隷持ってこようか。奴隷爆誕。

サトウキビさえ作ればいいので、中南米の国やアフリカの生活は知ったことではない。発展途上国の原因はサトウキビにある。そんな犠牲の上で、高級な紅茶に高級なお砂糖入れてる私いけてるー⭐︎と言う王室や貴族どもがいる。プランテーションで栽培しまくると、砂糖は民衆も手に入るようになる。多くの人が砂糖を楽しむ。そんな中でカカオとブレンドするチョコレートが生まれた。

つまり砂糖という超みんなが好きなものが育つサトウキビの存在がプランテーションを産み、奴隷を産み、スイーツを産んだ。作物の存在が世界のシステムに影響を与えたのだ!と言う話。

感想学び

 世界商品という概念は派生させられる余地が多かった。確かに世界中でみんなが欲しいものは意外と限定的かも知れない。需要と供給がここまで打ち抜けることも少ない。そんな砂糖だからこそ、文字通り世界規模で生産、流通が発生するのだろう。その点でいうと、いわゆるグローバル企業は文字通りにグローバルに世界中で需要がある商品を生産していることになるのだろう。ユニクロ、APPLEなど色々思いつくがそれでも砂糖の絶対性には及ばない。砂糖はすごい。

 奴隷になったアフリカ人は不便極まりないのだが、アメリカ人の挙動が非常に興味深かった。

砂糖ではないが、本国イギリスの都合の良い茶に関する関税をかけられた植民地アメリカの人々はボストン茶会事件を起こした。これをきっかけに「イギリスのような国」を目指していたが「アメリカらしい国」を目指し差別化を図った。

結果別の作物を使った飲み物、コーヒーやコカコーラの普及につながった。この文脈は大谷翔平を思い出す。憧れるのをやめて、独自の道を行ったのだ。結果として、現在アメリカは世界トップの経済大国になっている(もちろんこれは一要因でしかない)示唆深いと思う。こんな風になりたいなを追いかけているうちは越すことは出来ない。そうではない別の価値を見出すことの意味を学ぶことができた。


面白かった箇所

・砂糖は薬として、結核など10以上の症状に効くと思われていた。白くて、甘くて、流通が少なく高級。これらの要素が砂糖を薬として価値づけした。虫歯くらいしか、デメリットがないと思われていた。

・「砂糖のあるところに、奴隷あり」とは、のちにトリニダード・トバゴのイギリスからの独立運動を指導し、亡くなるまでこの国の首相の地位にあった黒人の偉大な歴史家エリック・ウィリアムズの言葉

・植民地でサトウキビ作らせてたポルトガルで砂糖がし金平糖が誕生。これが日本にやってきた。

・1粒300m。のグリコのキャッチコピーは今やデメリット。そんなにカロリーあるの?そんな価値観の一方で1980年代半ばまで砂糖を生産していた東南アジアのある島では子供が餓死している。

・歴史から学ぶこと(一部引用)
 

ひとつは、そうすることによって、各地の人びとの生活の具体的な姿がわかります。人びとが何を食べ、何を着ていて、どんなところに住んでいたのか。どんなことをうれしいと思い、どんなことに涙したのか。そうした具体的な生活の局面がわからなければ、私たちは、その時代、その地域の人びとと共感しあうことができません。歴史を勉強する大きな目的のひとつは、そうした共感を得ることなのですから、このことはたいへん重要なのです。

〜中略〜

もう一つは世界的なつながりがひと目でわかるということです。とくに「世界商品」の場合は、まさしく世界に通用した商品ですから、その生産から消費までの過程を追うことで、世界各地の相互のつながりがみえるのです。砂糖は、主としてカリブ海で生産されましたが、そのための労働力となった黒人奴隷はアフリカから導入されましたし、生産された砂糖のほとんどはヨーロッパで消費されました。ですから、砂糖の歴史は、三つの大陸を同時にみなければわからないのです。

『砂糖の世界史』川北 稔


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