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夜森蓬
2023年12月30日 23:20
#17 4回目のコールで、彼は出た。ー流伊、か?「そう、だ、よ…」か細い声で僕は答えた。「心配かけて、ごめんな」と言うつもりだったのに、ちゃんと声にする自信の無さから、すぐ言えず…ー大丈夫、か?また、彼に心配の言葉をかけさせてしまった。「ああ…」自分が不甲斐ない。ー何があったのか、後で聞いてもいいか?「…あ、うん。い、言える、範囲…でなら」わずかな沈黙
2023年12月24日 11:58
#16 玄関に立ちすくんだ僕を見つけた母は、何も言わずに僕を抱きしめた。瞬きをすると、涙の粒が弾けてまつ毛を濡らし、視界を歪めた。まだ出勤前の父もやって来て、玄関にうずくまり、僕の靴を脱がし、母と一緒に家の中に僕を誘導した。姉は既に大学の『早朝ゼミ』があると言って、早くに出ていていなかった。2階にどうやって上がってきたのか、覚えていなかった。やはり父が先導してくれたのだろうか。気
2023年12月16日 14:30
#15 何なんだよ…。何なんだよ、お前…!太い黒縁メガネ、赤ら顔のにやけた中年男の顔が何度も何度も浮かんでは消える。そして、浮かんでくる度に、その顔はデカくなり、風船のように膨らんで、僕の頭の中をぱんぱんにする。早く、割れてしまえ!そう願うのだが、なかなかしぶとい。ネギマ。誠さんが調べたところ、所謂ユーチューバーらしいが、アイドルオタクだと公言しているヤツだという。色々
2023年12月2日 16:45
【訂正】先程投稿しました、「僕は君になりたい」第14話ですが、一カ所?文章にミスがありました。後半部分ですが、「当然当然と…」と繰り返してるところがあります。正しくは、「当然と言えば当然なのかもしれない」です。すみません!🙏
2023年12月2日 14:41
#14 アイドルというこの仕事は、僕の人生における短期決戦…。「琉唯くん? 大丈夫かい?」「ええ、すみません。泣いたりして…」目をこすった僕に、先生は言った。「ずっと、心が張り詰めてたんだろう? 相談できる人も限られていただろうから。仕方ないことだ」僕は何も言えなかった。何か口走ったら、また涙が出てきてしまいそうだった。ぐっと奥歯を噛みしめて、少しうつむく。このたっ