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突然チェロにはまって

先日、"Il Suono dell'Arte"(芸術の音色)というタイトルで3日間に渡りミラノ王宮美術館で開かれたコンサートへ行った。
現在開催中のGoyaの展示にあわせた曲を、ということで、主にスペインへ渡って活躍したイタリアの作曲家Boccheriniの曲が演奏された。
Goyaと言えば誰でもが知る有名な画家だが、Boccheriniは初耳で、曲調も知らないまま、ただ単に最近ビオラやチェロの音色が好きだから、という理由でチケットを2日分せしめたが、1日目のコンサートの後、思いもよらずこの作曲家にはまってしまったので、是非Noteでもご紹介したい。


Boccheriniについて

ルイジ・ボッケリーニ(Ridolfo Luigi Boccherini)は、イタリア・ルッカ生まれの作曲家、チェロ奏者である。
同時代のハイドン、モーツァルトに比して現在では作曲家としては隠れた存在だが、存命中はチェロ演奏家として名高く、チェロ協奏曲、チェロソナタに加え、弦楽四重奏曲を90曲以上、弦楽四重奏にチェロを1本加えた弦楽五重奏曲を100曲以上作曲し、自身で演奏も行った。
作風はハイドンに似ていながら優美で時に憂いを含むものである。
(中略)
1769年スペインの宮廷に招かれドン・ルイス皇子付き奏者兼作曲家となり、マドリードで後半生を送った。
(中略)
作風は、モチーフの展開を中心としたソナタ形式を必ずしも主体とせず、複数のメロディーを巧みに繰り返し織り交ぜながら情緒感を出していくのが特徴で、時としてその音楽は古めかしいバロック音楽のようにも斬新なロマン派音楽のようにも聞こえる。また、後期の作品にはスペインの固有音楽を取り入れ国民楽派の先駆けとも思える作品を作っている。
ベートーヴェンの活躍以降、ボッケリーニのような形式をさほど重視しない音楽は主流とは見なされず、20世紀まで一部の楽曲を除き忘れ去られていたが、近年になりその情緒的で優美な作品を再評価する動きも出てきている。

Wikipediaより抜粋

以上が、Boccheriniと彼の音楽性に関する重要ポイントだと思う。

さて、コンサートの2日目の司会者を、私は数年前他の会場で行われたコンサートで知っていた。彼はピアニストだが、ソリストというよりは伴奏を専門にしているようだ。勿論、演奏も素晴らしいのだが、彼は各種作曲家に加え、当時の歴史背景までもを含んだ膨大な知識を持っており、何よりその説明の上手さが圧巻なのだ。これまで、さまざまなクラシックのコンサートへ行ったが、彼ほど興味深い説明をする音楽家に出会ったことはない。

音楽家たちの秘話


その彼によると、Boccheriniはスペイン王室でcortigiano(注.cortigianaは妾の意味で、その男性系なのだが、男性の場合は「お抱えの」と捉えてよいのか、それとも。。。彼は妻帯者だったので。。。ということは。。。と妄想は膨らむ)をしていたこと、また、ベートーヴェンが耳が聞こえなかったように、Boccheriniの場合は右手の親指に重度の関節症があったそうだ。
そういえば彼を知ったのはシューマンの回だった。シューマンは近視かつ指が一本(確か薬指だったような)ほぼ麻痺していたと言っていた。
そういった、当人たちには重大な問題が、数百年たった今彼らの音楽を嗜む身には、小話というか付け加え話になり、音楽家たちを理解し記憶するうえで役立つのだから、これからも是非、彼らの私生活や病気についても加えて語ってもらえると個人的にはありがたい。

1日目の演目はこちら

(イタリア語のままでスミマセン)
・Concerto per violoncello e orchestra in Sol maggiore G480
・Sinfonia in re minore "La casa del diavolo"

1日目の写真①
1日目の写真②

同じくスペインで活躍したScarlattiとも曲調が似ているが、こちらもなかなかのもの。そしてマイナーとなるとなおさら推したくなるので、先日「スキ」がほぼつかなかったVíkingur Ólafssonと併せて、BoccheriniもSportifyに登録して聞きまくっている。

お気に入りのピアニストについて書いたNote

最近見た作曲家関連の映画


最後に、音楽家についての映画でここ数か月以内に見たものを1本挙げておこう。
原題「Žena Čajkovskogo」(邦題はないので、日本では未公開かもしれないが、英題は「Tchaikovsky's Wife」)といい、つまりTchaikovskyと妻の仲の悪さ(ゲイのTchaikovskyが女性と結婚したってうまくいくはずはない)を描いたロシアとフランスの合作である。「白鳥の湖」や「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」といった、ロマンチックで繊細な女性らしい数々の曲を作曲したチャイコフスキー。子供の頃バレエを習っていた身としては、彼の曲には親しみと憧れしかなかったが、その彼がゲイだったなんて、この映画を見るまで知らなかったのだから、無知とは恐ろしいものである。

ポスター: Žena Čajkovskogo

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