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Louvre美術館の別館Louvre-Lensを訪れる

LilleとRoubaixでの鑑賞の後、1日休肝日ならぬ休鑑日を設けて、Louvre-Lensを訪れた。名前からも察しが付く通り、かの有名なパリのLouvre美術館の別館である。
パリへは行っても、Lensへはなかなか行く機会がないと思うので、こちらについても、常設展フェルメールのレース編みの女についてお届けしたいと思う(特別展は龍やら火の鳥やら子供向けで興味が抱けなった)。


※Louvre-Lensについて

ルーヴル美術館ランス別館はLens(Nord-Pas-de-Calais)にある2012年12月4日に開館した美術館である。
文化省とルーヴル美術館総局は2003年、フランスの22の地方のいずれかにルーヴル美術館のサテライト美術館を建設する計画を開始した。Nord-Pas-de-Calaisのみが美術館の建設に応募し、6つの都市が提案され、2004年に当時の首相がLensを誘致都市として発表した。
Lensは両大戦とナチスの占領により荒廃し、ヨーロッパ史上最悪の鉱山事故や42人の鉱夫が死亡した1974年の悲劇など、何度も鉱山の大惨事に見舞われた炭鉱の町である。1986年の閉山後、失業率はフランス全国平均を大きく上回っていたため、博物館の建設地に選ばれたのは、不況にあえぐ鉱山の運命が好転することを願ってのことであった。
設計は日本の設計事務所SANAAとアメリカのImrey-Culbert社が行った。
展示内容は、パリのルーヴル美術館に眠っていて一般公開されていなかった作品が中心である。

英語のWikipediaより抜粋・集約

それでは写真へ移ろう。

※外の展示と外観

駅から徒歩30分弱の距離にあるが、この標識が見えてから20分強というところ
遠くに建物が見え始めた辺りにある作品①
遠くに建物が見え始めた辺りにある作品②
やっと着いた
入口

※常設展

絵画や彫刻から、壺やミイラの棺まで、実に様々なものが展示されているが、決して規律正しく配置されているわけではないので、「あらまぁ、こんなところにこんなものが」という発見があり、個人的には珍しい展示方法だな、という印象を受けた。

とはいえ、さすがはLouvreだけあって、照明の当て方が絶妙で秀逸なのが特筆すべき点だ。
美術館巡りが趣味の方には確実に共感いただけると思うが、「この絵画、凄く気に入ったから写真に残しておこう」と思って撮っても、照明が絵画の要部分に当たっていて、白浮きして、様々な角度から試してもうまく撮れない、とか、窓から差し込む陽光が直に当たる部分に作品が飾られているために、彩光と照明のバランスがうまく取れていない、という展示や美術館にこれまで数多く出くわしたことと思う。しかしここは、その辺のテクニックが素晴らしく、撮り直しをした作品はなかった。

遠景または全体像

 -気に入った絵画-

Une jeune fille s'apprêtant à orner la statue de l'Amour d'une guirlande de fleurs(訳: Amourの像に花輪を飾る準備をする少女) Alexandre Roslin作 1783年
どうですか、このドレスの光沢と色とりどりの薔薇の花の美しさ。
何もかもが優雅で、うっとりじっくり眺めてしまった
Vénus apparaissant à Énée(訳: Aeneasに現れたヴィーナス) Pietro de Berrettini作、1625-1650年
古代ローマの詩人ウェルギリウスの叙事詩「アエネーイス」から取られた題材。
私の眼には息子より母の方が若く見えるのと、孫もこんなに大きくて立派だなんて、相当な美魔女のヴィーナス🤭

【説明書きを意訳】
トロイアの戦士アエネーイスとその仲間のアスカニウス('仲間'とあるが、Wikipedia「アエネーイス」について調べると、'息子'らしい)は、森から出てきた若い女性に出会う。それはアエネーイスの母親で、ヴィーナスだ。彼女は彼の船が現在のチュニジアのカルタゴ港にあることを知らせ、矢の準備をする小さなキューピッドが、カルタゴの女王ディードーへのアエネーイスの将来の情熱を引き出している。

説明書きを撮り忘れていた…しかし爪を切ってもらっているシーンであることは確か。
右奥でのぞき見している男性たちがイヤらしいな、と思い撮ってしまった😂
特別展の方で詳しく紹介するが、フェルメールの「レース編みの女」が常設展に展示されていた

 -エジプト関連(と余談)-

Sarcophage de la dame Tanetmit: enveloppe de momie, cercueils intérieur ex extérieur
(訳: タネトミ・レディの石棺: ミイラの棺、内棺、外棺) 紀元前945-715年
紀元前の色をこんなに鮮やかに見られるなんて、現代の私たちはツイていると思う

イタリアにもトリノに有名なエジプト博物館があるが、トリノへ行く度についついお屋敷見学や何かの特別展に目が向いてしまい、まだ行けていない。しかし石棺がこれほど美しいものだとは知らなかったので、今年こそは是非エジプト博物館へも行こうと思っている(行ったらNoteで紹介します)。

実は私には、大学2年に上がる前の専攻選択時に美術史と考古学の間で悩んだ過去がある。ただ、1年のうちに既に卒論のテーマを決めており(気が早すぎたが、結局はその主体が今でも私の好みの絵画に描かれていることが多いので、よく言えば、18、9歳の頃からある意味自分の嗜好をよく理解していた、反対に言えば、一切成長していない、のかもしれない)、それを書くには美術史か演劇を専攻しないと辻褄が合わなくなるので、美術史に進んだ。
当時は、吉村作治教授が教育学部で教鞭をとられており(一度、大教室の授業に潜ったこともある…笑)、私のいた一文にも素晴らしい文化人類学の教授が複数在籍されていた。炎天下の中での発掘など、太陽も暑さも大の苦手な私には完全に無理なのに、興味深い授業が多すぎて妙に考古学に惹かれてしまった自分がいた。

 -装飾品-

首のカーブの美しいイランのボトル 1700-1800年
これを見た瞬間、宮本輝の「道頓堀川」の翡翠の水差しを思い出した。
翡翠色ではないけれど、そういうもの悲しさを感じさせるボトルだった。
川三部作、最高なので、まだ読まれていない方は是非!
インドの調度品

 -彫刻-


※特別展(フェルメールのレース編みの女)

「AU TEMPS DE LA DENTELLIÈRE」(訳: レース職人の時代)というタイトルで、フェルメールの作品のうち、レース編みをする女性たちにスポットを当てた展示が行われていた。

特別展の入り口
フェルメールの風俗画についての説明

Louvre-Lensは、フランスのパブリック・コレクションに2点しかないフェルメールの絵画の一つ「La Dentellière(1669-1670)」の認知度を高めるためにこの展覧会を企画した。この展覧会では、地域の遺産や現代美術の作品を集め、この傑作に異なる視点を与えている。
(中略)
本物のアンティークのレース織機や、Calaisのレース博物館(Cité de la dentelle et de la mode)の17世紀のレースなど、遺産的な資料や品々を使い、実践的なアプローチをとっている。また、Saint-OmerのSandelin美術館、ArrasのBeaux-Arts美術館、DouaiのChartreuse美術館が所蔵するフェルメールと同時代のオランダの作品により、展示会がより豊かなものとなっている。これらの絵画には、La Dentellièreのようにレースや有名なサインを身につけた女性たちが描かれている。

最後に、Raphaël Barontini、Safâa Erruas、HessieとAnnette Messagerの最近の作品との比較を通して、この調査に対する現代的な反論を提示する。時にユーモラスで、常に関連性のあるこれらの作品は、フェルメールと『レース職人』の時代に疑問を投げかけるものである。

特別展の説明を自動翻訳・抜粋

Johannes Vermeer(ヨハネス・フェルメール、1632-1675)
オランダの画家で、同じオランダのRembrandt、イタリアのCaravaggio、フランドルのRubens、スペインののVelázquezなどと共に、バロック期を代表する画家の1人である。映像のような写実的な手法と綿密な空間構成そして光による巧みな質感表現を特徴とする。

生涯のほとんどを故郷デルフトで過ごした。最も初期の作品の一つ『マリアとマルタの家のキリスト』(1654年-55年頃)に見られるように、彼は初め物語画家として出発したが、やがて1656年の年記のある『取り持ち女』の頃から風俗画家へと転向していく。現存する作品点数は、研究者によって異同はあるものの、32から37点と少ない。このほか記録にのみ残っている作品が少なくとも10点はある。

フェルメールの絵に使用される鮮やかな青は「フェルメール・ブルー」と呼ばれる。

Wikipediaより抜粋

それでは展示内容へ。

La Couturière (Musée de la Chartreuse, Douai) (訳: お針子) DouaiのChartreuse美術館所蔵 1633年
La Dentellière(訳: レース編みの女) 1669-1670年頃

黄色のショールを羽織った若い女性が左手に2つの糸巻きをもち、枕にレース編みをしている様子を描いた作品。
フェルメールの絵画としてはもっとも小さな作品だそうで、確かに、「La Gioconda(モナ・リザ)」を思わせる小ささだった。La Gioconda(イタリアではモナ・リザと呼ぶ人はいないと思うので、'La Gioconda'と表記させてもらう)は大昔パリで見たが、遠くから見てもすぐにそれだとわかる作品かと思いきや、ものすごく小さくて仰天した覚えがあり、当時の、サイズについての驚きを、この作品にも感じた。ただどちらも知名度のある見ごたえのある作品には違いない。

フェルメールの作品の成り立ちがイラスト入りでわかりやすく説明されている。

こういう細かさ、わかりやすさを展示に加えるあたり、さすがフランスの美術館だなぁ、と思う。別にフランスだけに肩入れするわけではないが、なかなか他のヨーロッパ諸国ではこのような、美術に然程傾倒のない人にもわかるような説明がされていることが少ないと、実際に自分の目で見ているからこそ言える現実がある。

着色の材料の説明
赤→コチニール(貝殻虫)
青→インディゴ
黄→レセダ(木犀草)
媒染剤→アルミニウム
当時のレース編みの道具
気の遠くなるような細かさですよね?
私には到底できない…1時間も経ったら放り出して踊り始めるに違いない💦

このほかにも当時の各種刺繍や動画が見られる。小規模ながら充実した展示で、5月30日まで見学可能なので、パリのオリンピックが始まる前、つまり更なる値上げが始まる前にフランスを訪れる方は、是非足を運ばれるのが良いと思う。
ちなみにパリは既に、1月からcity taxが1€から5€台に値上がり、2月か3月には地下鉄のチケットも1回券が2.1€から4€に値上がりするそうだ(ミラノは1回券が2.5€なので、パリの方が安いのが不思議だから仕方ないのかもしれないが、それだって4€はないだろう)。だから私の友達や知り合いのフランス人たちは「私たち、暫くパリへは行かないわ」と言っていた😆


さて休憩しよう。
この日の昼ご飯がこの呟きのものだ。
パリでもフランの値段を見たが、意外と安く、3~5€だった。
ミラノでは逆に食べ慣れないものなので、売っていても高いかもしれない。


※おまけ(美術館としての特別展「ANIMAUX FANTASTIQUES」)

特別展「ANIMAUX FANTASTIQUES(訳: 幻の動物)」には、その内容に、全くと言っていいほど興味が抱けなかったので、その中で何点か、個人的な趣味としていいなと思った写真を載せておく。

Jean Cocteauが1959年にJacques Chailleyのバレエ"La Dame à la licorne"の衣装として作った作品
美術館で日本語が読めると嬉しくなる
色合いが美しい。イランの工芸品でよくある色遣いだが、これもイランのものだったのかは不明
子供の頃は家にも地球儀があって、くるくる回してみていたけれど、いつの間にか世間では見かけなくなりましたよね?

※おまけ(私の本命のおまけ=映画の紹介)

最後に、私の大好きな女優のIsabelle Huppertが若い頃演じた「La Dentellière(1977年)」という映画があるので、紹介しておこう。
これはユペール様(私の中では彼女は「様」付きの存在感なのだ)のデビュー作ではないが、確か、主役を演じた最初の作品のはずである。私は数年前に全編を字幕共にフランス語で観たので(普段はイタリア語字幕で観るからフランス映画でも全て理解できる)、完全には理解できなかったが、当時からユペール様の眼差しの強さ、憂い、可憐さの中のエロスが垣間見れて、素敵な作品だな、という印象を受けた。

【あらすじ】
内気でおとなしいベアトリス(通称 "ポム")はパリで母親と暮らし、美容院で働いている。恋人に去られた美容院の主人マリレーヌは、二人にカブールの海辺で休暇を過ごそうと提案する。マリーレーヌはすぐに新しい男と行ってしまい、ポムは一人になる。

内気な学生フランソワと親しくなったポムは恋人になり、パリの彼の部屋に引っ越す。彼は彼女を裕福な両親や知的な友人たちに紹介するが、彼らの世界に溶け込めない。彼女の奥ゆかしさが彼を悩ませ始め、二人は別れる。人生に興味を失った彼女は精神病院に入院する。

自責の念に駆られたフランソワは彼女を訪ねるが、彼女は何も望まなかった。その静かな匿名性において、彼女はフェルメールの『レース職人』などの絵画に描かれる無名の少女のようである。

Wikipediaより自動翻訳・抜粋

文字数的に、これまでにない大作になったので、是非「すき」も宜しくお願いします。可愛い動物がお礼に出てきます🤚


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