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【同僚の話】Vi sono mancata?(私がいなくて寂しかった?)

注)
これは3月21日(火・祝)に、学習帳の切れ端に鉛筆で綴っておいた文章である。従ってこの文書に登場する人物の現況は多少変わっている(少なくとも、私と29歳、今は30歳の子以外の身の上は良くも悪くも変わっている)

さて本日、2023年の仕事納めを迎えた(正確には、今は昼休みで、午後の数時間が残っている)。
そしてまた明日から数日放浪に出る。
昨日は酷い寒気で、体の芯まで冷える一日だったが、今日は春風のような暖かな風がまだ外が薄暗い時間から吹き、師走とは思えない日和である。
明日もそんな一日であればいいなと思っている。

書き溜めたものはストックしてあるが、暫くは更新できないかもしれないので(そう言っておきながら普通に更新してたりして😂)、今日のうちに一本、希望が持てそうな(⁈)、しかし少し笑えるものを載せておこうと思う。
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休暇の後に会社に戻ると、「Vi sono mancata?(私がいなくて寂しかった?)」と必ず尋ねるイタリア人の同僚(女)がいる。
日本ではまずそのようなことを同僚に問う場面には出くわさないだろう。
実際、私も東京での会社員生活でそのような発言を耳にしたことがなかったから、それを初めて聞いた時、少し狼狽えた。そしてひきつった笑みを浮かべるしかなったことを覚えている。

今では、「あっ、また言ってる」という思いから、その問いに対して、大きな声で笑顔で「No!」と答えている。冗談が言えない身の精いっぱいの親しみを込めているつもりである。
一方、イタリア人男性はというとSi, ◇◇(名前), mi sei mancata mooolto(うん、◇◇、君がいなくて本当に寂しかったよ)」と噓っぽい笑みを浮かべ、声色を変えて身体にしなを作り、ゲイっぽい雰囲気で答えている。
そんなことは、たとえお酒を飲んでいても、日本人男性なら絶対に言わないだろう、と思ってある意味感心した。

ちなみにその女の同僚は、若い頃から男が切れたことがない。今でこそ40代前半で、旦那も子供もいる身だが、話によると20代前半から独り身を一度も経験したことがないというのだ。
特に女らしい出で立ちでも、恰好をするでもないのに、どうしたことか(この十云年で彼女のスカート姿を2回しか見たことがない)。

そんなことを、コロナ禍を挟みすっかり忘れていた頃、他の同僚がぎっくり腰になり、1週間病欠をする、という小さな事件があった。
彼女は幼少期よりアメリカンスクールに通い、20代でアメリカ国籍を取得し、40代前半で恋に溺れ、イタリア人との結婚を機に、大好きなアメリカからイタリアに引っ越してきた、という中身は完全にアメリカ人な元日本人である。

その彼女にメールチェックを電話で頼まれた際、「○○さん(私の本名)、私がいなくて寂しい?」と問われ、思わず吹き出してしまった。
「何◇◇みたいなこと言ってるんですか?寂しいわけないじゃん」と笑いながら答えた私に、「え~っ、寂しいって言ってほしかったのに~」と甘えた声で答える彼女。

それではっとしたのだ。

『もし私も、「私がいなくて寂しかった?」と恥ずかしげもなく聞ける身、というか精神だったら、今頃、幸せな結婚を、いや、せいぜい素敵な男性と一緒にいたのではなかろうか』と。
私や、私と同じポールダンスのクラスにいる29歳の子のように、いくらピチピチな服を着て踊ったところで(私たちはスタイルはなかなかなのだから、それを武器にしない手はない、と勝手に思い込んでいる)、内面が男っぽかったり素っ気ないのじゃ、いつまでたっても悪い男にしかつかまらないのではないか、と。

ちなみにこの20代の彼女にはフォロワーが2000人以上いて(これを打ち直している夜には、3000人に近づいていた)、ダンスのビデオをストーリーズに載せて婚活をしているが、いっこうに結婚の申し込みがないそうだ。
私については、結婚には全く興味がないが、それとて真面目につきあってくれる男性は欲しいと思うこともある(勿論、一年のうち半分以上、"独り身がいい"、と思っているから、そう簡単にはいかないが)。

彼女には、この私の小さな発見は教えないが、もしいつか、仮に奇跡的に「いいな」と思う男性ができたとして、暫く連絡を取らない時期があるとするなら、「私がいなくて寂しかった?」と赤面せずにいえる訓練を、一人、夜更けの鏡の前で、春分の今日から始めようか、と思っている。


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