祖母の洋ラン

 貴方は形見分けで何かを譲り受けた事はありますか?

 私の手元には鉢植えの洋ランが数鉢あります。全て祖母の物でしたが、亡くなってから私が譲り受けました。
 私自身は別段、洋ランも鉢植えの植物にも興味はありませんでした。ですが、放って置いて枯らすのも気が引けるので、水やり程度の世話ならと安易に引き受けました。

 ところが考えが甘かった。冬の間は室内(日の当たる明るい窓辺)に置き、水やりの頻度は2週間に1回なので世話は楽です。しかし、春〜秋は屋外に置き、水やりは雨任せで良いのですが、降らなければ当然ながら水やりが必要です。夏は毎日、真夏だと朝夕の2回にその頻度は上がります(近年は猛暑日多過ぎ)。

 洋ランの開花時期は冬なのですが、沢山の花を咲かせるには体力が必要です。本やネットなどで調べたら、春から梅雨に入る頃にどれだけ栄養を蓄えるかが勝負、との事(季節限定らしいです)。
 祖母は植物用液体肥料「ハイポネックス」を使っていた様で、中身の減ったボトルがありました。このボトルも譲り受けた私は、適切な時期に使い続けました(大容量ボトルでしたので、残りの分だけでも数年分はありました)。

 そのボトルの中身もいよいよ空になるのですが、まぁ良いかと水やりだけで肥料ナシの世話をしていたら、翌年には途端に花数が減りました。中には蕾を一切つけない鉢植えもありました。

 元々は興味も無かったはずの私ですが、数年も世話をしていたら情が湧いてしまった様です。翌年の開花に向けて、「ハイポネックス」を買いに行く自分がいました。

 この冬も、甘いながらも凛とした香りに気付く瞬間があります。窓辺に目をやると、純白色をした沢山の花が太陽光を浴びていました。

 「ばあちゃん、空の上から見えているか?今年も咲いたぜ」

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