姉のド天然な友人
私には姉がいる。
「姉的な人」という意味ではなく、私と似ても似つかない、この実の姉、アキコ(仮名)のことである。
実は、性格は似ていないのだが、子どもの頃から「顔が似ている」という、何ともお互い微妙な気持ちになることを周りから言われ続けてきた。
思春期の頃は、それはそれは嫌で仕方なかった(相手にもフェアになるように補足すると、姉もたいそう嫌がっていた)。
大人になり、いつぞやのタイミングで姉は「そう言えば、悔しいけど、我々の顔って、やっぱりちょっと似てるかもね」と言ってきたことがあったが、私は未だにそのように実感したことがない。
それはさて置き、10年以上も昔になるだろうか。
姉が「外国に行ったきり全く日本に帰って来ない奇妙な弟」の話を友人にしたらしい。
その話が発展し、いつしか私は姉の友人たちの間で「外国に行ったきり全く日本に帰って来ないばかりでなく、姉に似た顔を持つと言い伝えられる奇妙な弟」という想像上の生き物みたいな扱いになった。
そんな幻の弟が、数年の沈黙を経て、ついに帰省(帰国)することとなったのである。
久々の帰国ということもあり、私は家族に対し、外国の土産と土産話を贈り、そして聞かせ、ワイワイとひとしきり盛り上がった。
その後、姉は今や「見世物」と化した弟に対し、「ちょっとアンタ、友達に見せるから、何枚か撮られて」とデジカメを構えた(そう、このとき構えるのは、まだスマホではないのだね~)。
だが、姉はふと弟撮りを思いとどまり、「、、、どうせだから、コロも抱っこして撮るか」と言った。
コロ(仮名)とは、私の父が何の前触れもなく10万円出して衝動買いし、母に怒られたといういわく付きの犬(シェットランド・シープドッグ)である。
私は半ばやっつけ仕事で「あー、わかったわかった、コロ来い!」と、コロを抱き上げ(コロも訳がわからない様子でキョトンとしていた)、数枚撮られるがままになった。
後になって姉から聞いた話である。
私が外国に戻った後、姉は「幻の弟」が実在することを証明するため、「やっつけの割には、なかなかに良い笑顔でコロを抱っこする私」の写真を友人の1人に見せたらしい。
しかし、この友人、、、「ド」が付くほどの天然キャラだそうである。
その友人が写真を見るなり、大笑いしてこう言ったそうだ。
「アハハハハハ! やだ~、アキちゃ~ん。これ~、弟じゃないじゃん! 犬じゃ~ん!」
、、、?!
これを聞いた姉は、一瞬「、、、?!」となったそうだ。
それを姉から聞いた私も一瞬「、、、?!」となった。
今、本記事をお読みの各位も、もしかしたら「、、、?!」となっておられるかもしれない。
どういうことだ?!
要するに、こういうことである。
そのド天然友人さまは、犬を抱っこする私を「私の姉」だと思い込み、単なる「犬を抱っこするアキコ」の写真を見せられたと信じ、「(写っているのはアキコと犬だけであり)弟なんてどこにも写ってないじゃん!」ということらしい。
、、、
、、、え~っ?!
有り得んのか、そんな勘違い?
「兄」と「弟」とか、「姉」と「妹」とかならまだ分かるが、成人した「姉」と「弟」ですぜ。
これ、恐ろしいことに、からかうために狙って言ったとかではなく、本当に天然で言っていたとのことである。
私がその20代の当時、茶髪でゆるゆるパーマという、今となっては考えられない中性的へアースタイルをしており、今よりスリムだったことを差し引いても、凄い勘違い(思い込み)だと思う。
性別を超え、犬抱く姉と勘違いされるって、もはやドッペルゲンガーのレベルである。
そのようなドッペルゲンガー記事を書いたこともあるが、このドペゲ記事の登場人物でさえ、性別は同じであった。
この年齢となって、私もかなり体重も増えてきたので、もはやそのような有り得ないレベルの勘違いをされることはないであろうとは思う。
ただ今、帰省の準備をしており、間もなく「似た顔」を見ることになるのだな~と何気なく考えていて、ふと思い出したエピソードである。
(完)
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