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小さなオアシス

コラム:フェスティバルディレクター 三浦宏之


 4月から始まった2023年の開催地探訪「Clap!」も、フェスティバル開催地となる中央線沿線7つの駅周辺の旅を経て、ついに最終の地、吉祥寺へ到着しました。
  昨年の4月~8月の期間で開催されたこの企画も、今年で2回目となる訳ですが、長期定点観測的にそれぞれの街を眺めてみると、景観やその装いなどが大きく変化しているところも沢山ありますが、全く変わらない(昔ながらの)街並みが残されているところもあります。
 全体の印象から感じることは、やっぱり「街は生きているのだな」ということ。生き生きとした人たちが集まる場所には、生命力が宿るものなのかもしれませんね。例えば広大なサバンナの中にある、小さなオアシスみたいに。

 さて、吉祥寺を歩きます。
 吉祥寺は個人的に比較的頻繁に訪れる街なので、いつものように肩肘張らずにぶらぶらと歩きはじめました。北口ロータリーに出て、吉祥寺に来た時には会いにいくことが多い「はな子」さんに、まずご挨拶。

「はな子」さん 吉祥寺には象がいます

 吉祥寺の街歩きを始めてまず最初に目にとまったのが、お店の看板でした。普段吉祥寺を歩く時にはあまり気にしたことはなかったのだけど、改めて街を見渡してみると沢山のお店があって、もちろんお店の数だけ看板があります。
 今はお店の情報発信はほとんどがSNSなどによって為されているとは思うのだけど、実店舗の看板というのは、そのお店が何屋であるのか、どういった雰囲気のお店なのか、好感がもてるのかどうか、などを一瞬で伝えるための、最もシンプルな情報発信の形なのかもしれません。

 路面店の多い中道通り、昭和通り、大正通り周辺のお店の看板の中からいくつかをピックアップしてみようと思います。

ウッド調の壁面にシンプルな看板 お店の雰囲気が感じられます
暗号のような? 不思議な看板
人気のカレー屋さん 裸電球が素敵ですね
こちらは看板ではなくお店の壁面 すぐに何屋さんか分かりますね
構造としては珍しい文字造形のみの看板 板ではないところが特徴
店名のインパクト こちらも大人気店
マンションの入り口に置かれていた 周辺にお店らしきものは見当たらなかった
古いお店の看板 電話番号も古いもの
こちらも看板ではなくお店の壁面 かわいいですね

 こうやってみると、看板のデザインやレイアウトも様々ですね。
 古くはシンプルに○○商店や○○屋といったように、店舗名のみを分かりやすく看板に掲げていたようですが、新しいお店やおしゃれなお店、若いオーナーさんのお店や、若者向けのお店などは店舗名の表記に加えて、看板にある種のデザインを施しているものが多いですね。写真のいくつかにあったように、デザイン性が強すぎて、店舗名(とその業種)が伝わりにくいものも見受けられました。
 デザインの目線のみから、街に溢れる看板を眺めるのもなかなか面白いものです。

吉祥寺には牛もいます

 吉祥寺北側の看板巡りを終えて南口に抜け、井の頭公園に向かいます。
 中央線ユーザー(特に吉祥寺以西に住んでいる人)で井の頭公園に行ったことがない人は、そう多くはないのではないかと思います。なんとなくのイメージですが、この井の頭公園は中央線のセントラルパーク(?)的な存在なのかもしれないなと思います。もちろん中央線沿線には沢山大きな公園がありますが、公園内の池でボートに乗れるのはここ井の頭公園だけなのではないかしら。。。動物園があるのも、井の頭公園特有ですしね。
 そんな中、今日はボートにも乗らず(この日はボートがおやすみしていました。ボート貸出小屋の改修とかで、しばらくお休みになるのかな?)動物園にも入園せず、意外にあまり知られていない(かもしれない)井の頭弁財天に向かいます。

井の頭のパワースポット 弁財天

 もちろん、最初にお参りをして。
 今日のお目当ては、銭洗いです。
 井の頭公園池に隣接して、井の頭弁財天があることはご存知の方が多いかと思いますが、銭洗弁天であることはあまり知られていないのではないでしょうか。
 私も持ち合わせていた小銭をじゃぶじゃぶと洗って「このお金が沢山増えますように。」と欲望をむき出しで、お願いしておきました(笑)。

清め給えー

 また、こちらも知っている方はそう多くないかもというスポットが井の頭池の湧水池である「お茶の水」ですね。こちらは井の頭池の西北端にある御茶ノ水橋付近にあります。現在は湧水減少のために地下水をポンプで汲み上げているということですが、こちらもなかなかのパワースポットなのではないかなと思います。もし井の頭公園に遊びに行くことがあったら、探してみてくださいね。

緑深い湧水池
吉祥寺には鴨もいます

 開催地探訪「Clap!」2023年の最終地である吉祥寺では、Center line art festival Tokyo 2023のプログラムとしてGALLERY IROで王雯卉さんの個展「BUT」が開催されます。王さんの作品は陶器とぬいぐるみ素材とで構成された、可愛くて少し不思議な立体造形です。今回の展示では平面作品も出展されるかもしれません。会場となるGALLERY IROも開放的で素敵なギャラリーですので、ギャラリー巡りにも最適です。

 今年もCenter line art festival Tokyoが、いよいよ9月27日から始まります。
 皆さん、中央線でアートを巡る小さな旅を、是非お楽しみくださいね。

吉祥寺で拾ったアートの種

お店の壁面 風景のようにも 身体のようにも見える
住宅の壁面 蔦の痕跡が作る模様
吉祥寺にも発見 なにがしかの意思の表明
夏も終わる頃 誰かの優しさ

Center line art festival Tokyo(中央線芸術祭)2023 は「The time to sense.」をテーマとし中央線沿線地域で美術展示やパフォーマンス、ワークショップ、トークイベントなどのプログラムを開催します。
市民生活へと深く浸透する芸術創造の場を創出し、東京中心部における文化圏を西東京地域に緩やかに拡大してゆくためのプラットフォームとして継続することによって、地域コミュニティ、民間を主体とした文化創造を促進してゆくことを目標におきながら、西東京地域から全国に向けた発信を市民とともに行ってゆきます。 

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