【良書】行動経済学とマーケティング
こんにちは、WEBライター・マーケターのさわかみです。
最近は"行動経済学"を学び、マーケティングに落とし込むという試みでそれに関する良書を地道に読んでいます。
その中でも購入後読まずに積まれる率の高い書籍といわれている
ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー」
がとても気になり購入しました。
早速読み始めましたが序論部分で確かに「積まれるな」という印象でした。が、じっくり読み始めるとただの統計だけではない現実的な人間の行動を追求した、とても興味深い内容でした。
ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンが示した知見はマーケティングにはもちろん、幅広い分野で参考にできるモノだと感じました。
今回はこのファスト&スローの上巻で、「あっすぐ使えるな」と思った部分をピックアップします。
ただ、内容が深く、本の内容全てを頭の中で整理・置換できていない状況ですので、一部分ずつnoteにまとめていけたらなと思います。
■【序】脳のシステム1(速い思考)と2(遅い思考)
まず「ファスト&スロー」上巻を読む際におさえておくべき言葉があります。
本書全体に関わってくる「システム1」と「システム2」という語句です。
これは簡略すると「脳には速い思考と遅い思考の2つのシステムがあり、人間はその両方を運用して物事を判断している」という前提で語られるものです。
※「システム1・2」という言葉は心理学で広く用いられる言葉のようです
・システム1(速い思考)・・・無意識下で自動運転するとても素早い直感的思考モードで脳を働かせる努力があまり必要ないもの
システム1がおこなう行動例は以下のようなことになります。
【例】2つの物体のどちらが遠くにあるかの判断
【例】2+2の答えをいう
【例】人の顔の写真や声から喜怒哀楽を感じ取る
・システム2(遅い思考)・・・難しい計算などを解く際など、意識して脳を働かせようとする思考モード
【例】レースでスタートの合図に備える
【例】あるページに特定の文字が何文字あるのか数える
【例】17✕24の答えをいう
■第5章「認知容易性」110p~
この章では人間の「認知」について語られています。
認知がしやすい事と難しい事の両方で、人間の脳はどう作用をしているのかが詳しく解説されています。
この章での落とし込みポイントは「人間の認知容易性はコンテンツ制作にも上手く活用できる」ということです。
記憶の錯覚
「見覚え、聞き覚えといった感覚は単純だが『強力な過去性』という性質を帯びており、そのために、以前の経験が鏡に直接映し出されているように感じる」 心理学者 ラリー・ジャコビー
以前に見たことがある単語などに「なじみがある」と感じることは記憶の錯覚でもあるというような解説がされています。
前に見たことのある単語や言葉に「なじみ深さ」を感じ、認知が容易になると本書で論じられていることから、
「言葉の選択」というものは非常に大切だと思いました。
記事やLPなどで、なじみのない言葉が多く、読み解くストレスを感じる箇所が1つでもあると、その先の文章の内容が頭に入ってこない(認知性が下がってしまう)経験、ありませんか?僕はあります。
ひどいものだとページを読むのに疲れて即バックすることも・・・皆さん経験あるかと思います。
逆に言うと、自分のなじみある言葉で解説されている記事は「読み解くこと」自体にストレスを感じないため、「自分はこの情報からどういう選択をするべきなのか」に集中できるのだと考えられます。
つまり、
認知が容易な文章が使われたページはCVの選択機会を失わずに済む
というように、認知容易性を落とし込むことができます。
メディアが狙うべきユーザーをしっかりと把握した上で、どの程度の文章レベルならそのユーザーがストレス無く読むことができるか、
もっといえばユーザーにいかにして「なじみ」を与えることができるかを熟考して制作することが大切です。
真実性の錯覚
「誰かに嘘を信じさせたいときの確実な方法は、何度も繰り返すことである。」
根拠として「聞き慣れたことは真実と混同されやすいからだ。」と文が続きます。
これも「なじみ」の話につながっています。
例えば、学校のテストなどで分からない選択問題がある時、とりあえず見たことある語句が使われている文章を選ぶという経験あるかと思います。
この「見覚えがある=真実である」と判断してしまう脳のメカニズムはマーケティングをはじめ様々な分野で活用できそうです。
・認知度アップを図るために繰り返しDMを送る→「〇〇といえば〇〇という純粋想起にもつながる」
・LPのテキスト部分で一番伝えたいことを繰り返す→「初めに提示された事が本当にこの会社はできるのだと信用してしまう」
・レビュー記事で私見や商品のメリットを繰り返し述べる→「偏っていたとしても、真実味が増す」
こちら側がユーザーの記憶にこびりつけたい場合、「繰り返し」を活用することで、それは「そう(最善)なんだ」と錯覚させることができそうです。
ちなみに音楽の世界でもリフレインという手法があります。リスナーへの印象づけとしてフレーズや歌詞のリフレインは効果的です。
一番と最後のサビが同じになっている曲、ありますよね。これは最も伝えたいことをリスナーの頭に残し、いつでも口ずさんでもらうためという狙いがあります。
認知容易性は説得力を高める
本書で語られている「認知容易性」は文章の説得力を高めることにも有用です。
まず大きなポイントとして、2つあります。
・太字などで視認性を高める
・文章をシンプルかつ、韻文で覚えやすくする
視認性を高めることは周知の事実です。
2つ目に関しては専門的な記事を書き慣れすぎていると、ついつい忘れてしまうことでもあり、改めて心に刻んでおこうかと僕は思いました。
まず以下のような格言があります。読んでみてください。
①大難は敵味方を一つにする。
②小さな一撃も積もれば大木を倒す。
③告白した過ちは半ば正されている。
これを、それぞれ丁寧に解説すると
①大きな災難がふりかかると、それまで争っていた敵味方も力を合わせるようになる。
②小さな一撃でも、何度も加えるうちには、どんな大きな木も倒すことができる。
③過ちを自ら認めたときには、その過ちの半分は正されたと言ってよい。
どうですか?ちょっとだけ読みたくないな~と感じたと思います。
本書では「格言風に仕立てた文章のほうが、ふつうの文章より洞察に富むと判断された」と記されています。
また、本書で語られているある実験で、面白い結果が出ています。
「発音しやすい企業名」と「厄介な企業名」を用意し将来性の判断を被験者にさせた。
そして被験者は、僅差ではあるが「発音しやすい企業名」を信用したという結果になりました。
あなたの文章を読む人は、努力を要するものはできるだけ避けたいと考えているのだー引用されたややこしい名前含めて。
「必ずしも丁寧に解説されたものが、良いとはいえない」という事が、この本を読んで本質的に理解できました。
キャッチコピーなどは「特に」だと思います。
前述した脳のモード「システム2」を嫌がる状況においては「システム1」に訴求する意識を持ってコピーや文章を作ることが大切だといえます。
これにおいてもやはり、コンテンツを読むユーザーのリテラシーをしっかりと考え、どの程度の語彙ならばシステム2モードになってしまうことを避けられるのか見極める必要があります。
よく言われる「キャッチーなものを作れ」という根底には、人間は基本システム2モードを嫌がる・怠るからという理由があったのだと知り、納得です。
人は誰でもほとんどの場合にシステム1に導かれて生活しており、その印象がどこから来るのか知らないことが多い、ということである。
ほとんどの場合には、怠け者のシステム2はシステム1の提案をあっさり受け入れ、そのまま突き進む。
■行動経済学って面白い!
この本は読み始めこそ抵抗を感じましたが、内容の理解が進むとすごく面白いなと思いました。
ビジネスだけではなく恋愛など私生活においても役に立つ論理が記されていて興味が尽きません。
「ロジカルに動かそうとしても、動かないのが人間」
それを理解した上でマーケティングを行なうのか、小手先の「やり方」だけ覚えて行なうのかで結果はかなり変わるのだと、改めて胸に刻んでおきたいと思いました。
良書、ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー」は上巻と下巻があります。
現在僕は上巻を読んでいる途中ですが、今回noteに書いたことはまだまだ前半の一部分です。
まだまだ序盤なので、ワクワクしながら読み進めたいと思います。
※僕はいつも本読むとき、ブックカバーを外して読んでいます(笑)
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