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#TLを花でいっぱいにしよう 〜お花とエッセイ

せっかく納得いく写真が撮れるようになった頃、カメラを向けても声をかけても、我が子は笑わなくなった。
また反抗期か。ため息の数だけ、重い一眼レフを持ち歩く機会が減った。


仕方なく、被写体は目に映るものに代わった。
二人分の荷物と、視線で追わねばならない子どもがいない外出が増えると、見える風景が変わっていた。


空に絵の具のような青と、光浴びる花々。
安らぐ木陰と、思いがけず顔覗かせる小鳥。

出会いは偶然で一瞬だから、ちょっと立ち止まり、簡単にスマホで撮影する。
その小さな発見を誰かに教えたくて、つぶやく。

#花 #flowers

それは、ささやかな自己満足。
いいねが一つでもつけば、私のハートも赤くなる。

わかってくれます?なんかいいですよね。共感できる喜び。



その人に気付いたのは、数ヶ月後だろうか。
気まぐれな花たちに、決まって早めにいいねがつく。
バラのアイコンの人。
あ、また来てくれた。まるでふいに蝶々に出会えたみたいに、親しみがわく。そして、それに喜ぶ単純な私の、投稿数も増える。
ハートのやり取りが、和やかに続いた。



ある日、DMが来た。バラの人だった。

「突然のDMで、失礼します。あなた様が載せてくださる花々に、とても癒されています。
私は自分で見に行くことが、できません。勝手ですが、綺麗な写真を楽しみにしております。」

私はうまく返信できたか、覚えていない。
しかし、それから撮影の散歩に出ることが増えた。なるべく色とりどりの季節の花を。太陽浴びて光る花をと。


だがいつしか私は、カウントできない日々の雑用に追われ、投稿が途絶えがちになり、それが全くできなくなり、そのまま時が過ぎていった。



2020年、誰しもが、世界中のあらゆる権力者でさえここまでとは予想だにしない変化が、地球を襲った。
人間はせめて、心だけでも強く清らかにいようと、新しいハッシュタグが賑わいだした。


#TLを花でいっぱいにしよう


私はやっと、バラの人を思い出した。
どうしているだろう。
最近はめっきり少なくなっていた花の写真を、カメラロールから懸命に探し出した。
そして、昔と今のハッシュタグを並べる。
送信。


届いて。どうかどこかで気づいて。


何度か送り続けたある日、一度だけ、あの懐かしいバラのアイコンがいいねを押した。

安堵と嬉しさが、ごちゃ混ぜになった。
良かった。ただただ、見知らぬあなたがいてくれて。


それから、もうずっと出会えていない。
安否を聞くDMは、出せていない。
私はまだ時々、花を送る。
目に見えない繋がりをくれた、ピンクのバラに感謝して。




Twitter上での話で恐縮ですが、創作ではなくてエッセイです。

こちらのお二人が主催されている、素敵な企画に参加させていただきました。

自然や動物が主な被写体な私には、思うところがたくさん。
花を見つけられる余裕、持ち続けたいです。

そろそろ秋バラの季節ですね。

#お花とエッセイ #エッセイ #花 #バラ #写真 #日常 #自然

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