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動き出すコンパス、さぁ 行こうか『ユグドラシル』

それはぼくが人生で初めて買ったCDアルバムだった。ちなみに初めて買ったシングルは『ダイヤモンド』。どっちもBUMP OF CHICKENだ。

ぼくは最近のバンプを知らない。藤くんがこないだ結婚したのは知っているけど、最後に聴いたアルバムは『orbital period』だから13年前で時が止まっている。活動期間からすれば、最近というか大半を知らないのだ。ライブにも行ったことがないし、ファンと名乗るには正直おそれ多い。

でも、多感な青春時代に音楽の世界へ誘ってくれたのは紛れもなくバンプだった。そして、バンプの曲が大好きだった。

TSUTAYAでお気に入りのアルバムを借りて、MDに取り込む。それが何よりも楽しい時期があった。1st ~3rdアルバムである『FLAME VEIN』、『THE LIVING DEAD』、『jupiter』はすべてMDにして持ち歩いていた。ディスクが増えると嵩張ってカシャカシャと音がするのだが、それが何かの称号みたいで嬉しかった。

中学生にとって3,000円は大金だ。友人たちとCDショップに出掛けて、初めて『ダイヤモンド』のシングルを買ったときは大人の階段を上ったようでドキドキしたのをよく覚えている。アルバムともなれば、もう宝物を手に入れたような気分だった。そう。宝物。人によっちゃそれ自体が宝物。

こないだ何年ぶりかわからないほど久々に、『ユグドラシル』をフルで聴いた。隠しトラックを除いて59分58秒。在宅勤務で運動不足だから仕事終えるとたまに散歩をしているのだけど、この日だけは「まだ聴きたい」という気持ちが強くて、気付いたら1時間以上歩きっぱなしだった。

普段ぼくは音楽をほとんど聴かない。特に理由はなくて、ただ疎遠になっていただけだ。特に社会人になってからは距離を置いてしまっていたけれど、学生時代は友人と好きな曲について語り合ったり、着メロ・着うた最盛期だったこともあって、学校の休み時間に友人とイントロクイズをしたりしていた(ガラケーで再生するファイルはもちろん3g2)。

好きな音楽を聴きながら、近所をあてもなく歩くのは楽しかった。気持ちが高ぶって1曲ごとにツイートしてしまったぐらい。どれもすごく浅くてくだらないコメントばかりだけど、ひっさびさに音楽をしっかり聴いたら心揺さぶられた記録としてnoteに残すことにした。


--*--


1.asgard
アルバムの始まりを告げるインストゥルメンタル。『ユグドラシル』もそうだけど、asgard も北欧神話の言葉だとは知らなかった。なぜかって?次に控えるオンリー ロンリー グローリーを早く聴きたくて仕方がなかったからだ。そんな粗削りな感性の中学生だった。

2.オンリー ロンリー グローリー
刻みの良いテンポに、中学男児のハートは完全に射止められた。「笑われる事なく 恨まれる事なく 輝く命などない」「選ばれなかったなら 選びにいけ」など、中学生ながら歌詞にとても惹かれたのを覚えている。久しぶりにイヤホンで聴いたら、低音が身体の芯に届いて心がざわざわする。

3.乗車権
オンリー ロンリー グローリーからそのまま乗車権を聴くのなんて何年ぶりだろう。イントロの少し不穏なメロディと「排気ガスを吐いて」から始まる歌詞が、薄暗い都会の光景を彷彿とさせるなあと改めて思った。

4.ギルド
乗車権で少し暗い気持ちになった後にくる温かいメロディ。この曲の、なんていうのあれ。曲の間ずっと後ろの方で聞こえてて最後まで残ってる、何か金属を叩いてる音。16年間ぐらい気になってるんだけど。なにあれ。

5.embrace
この曲まできて確信するんだけど、『ユグドラシル』のイメージカラーは黄色なんだよね。少し、優しくて淡い黄色。山吹色がかった。だからMDも黄色のディスクに録音してた。でも久しぶりにアルバム取り出してみたら、ジャケットの絵モノクロだったわ。

6.sailing day
オンリー ロンリー グローリーと同じく、テンポの良さでお気に入りだった。改めて聴くと、エルレのNo.13と被る。どちらも海賊船をテーマにしているからなんだろうけど、No.13の「I give up trying to stop you Instead I keep watching over you things」のあたりが、sailing dayの「呆れたビリーヴァー」と被る。

7.同じドアをくぐれたら
2番のサビからグイグイくる力強さが好き。中学生の頃からもっと歌詞をちゃんと味わっておくべきだったと反省する。ぼくは歌うよ歩きながら。歌ってはいないけどまた散歩してるなう。

8.車輪の唄
ひたすら優しく懐かしい曲。ここでイメージカラーの黄色がまた広がる。イントロ0.5秒の車輪感で、中学時代がフラッシュバックする。ぼくはこれを友人との親しさ、別れを歌った曲だと思っている。中3のとき、地元の友だちと一緒に行った白樺湖旅行。間違いじゃない。あのとき、きみは。

9.スノースマイル
この曲で最初に思い出すのは、BOOK OFFで買ったシングルCDのカバーが実は割れててショックだったこと。まだきれいなままのカバー、じゃない、雪の絨毯だった。でもこの曲よりもKの方が冬っぽいと思うのです。アルバム違うけど。『THE LIVING DEAD』もちゃんと聴き直したい。

10.レム
レムの小休止感はすごい。眠くなる。歌詞の「走り疲れたパンダと改めて話がしたい、心から話してみたい」ってどういうことやねんと思ったら、「走り疲れたアンタ」だった。

11.fire sign
fire signは温かい。Aメロのとき、暖炉の前にいる気分になる。曲の間ずっと最後まで静かに盛り上がり続けてる感じがすごく好き。ラスサビで鳥肌立つ。うおぉうおぉうおぉぉーぉぉーいえぇぇー。

12.太陽
太陽ってこんな曲だったっけ…。たぶん当時あんま聴いてなかったなこれ。大人の曲だわ。割と。たぶん。歌詞に「窓のない部屋に来てほしかった」とかある。ラフメイカーやん。逆側の窓割ってから来いや。

13.ロストマン
やっときたロストマン。破り損なった手づくりの地図。踏み出す足はいつだって初めの一歩なのだ。ラスサビ手前の繋ぎの部分で藤くんが叫ぶ「切り取ったあぁぁ」で昔と同じく心震えて懐かしくなった。再会を祈りながら終えるつもりが、いつも再開して2回目を聴いてしまう。

14.midgard
ごめん。ロストマンで盛り上がりすぎてスルーした。asgard/midgard事件。反省。


こんな風にして結局アルバムを全部聴いてしまった。

ロストマンの歌詞が、追憶を促すように木霊する。

時間は あの日から 止まったままなんだ
遠ざかって 消えた背中
あぁ ロストマン 気付いたろう
僕らが 丁寧に切り取った
その絵の 名前は 思い出


音楽っていいな。そう思える散歩だった。


--*--


つらつらと感想を書くだけのnoteでしたが、書いていてとても楽しかったです。きっかけは、Micaさん山羊メイルさんの下記の記事でした。

お二方とも音楽に造詣深く、こちらの記事を読んでいると自然と曲を聴きたくなります。Micaさんのnoteを読んでから曲を聴くと、何度も聴いたことあるはずなのに味わいが何倍にも増します。山羊メイルさんのnoteは、1つの曲から世代を超えた繋がりを感じられて、見過ごしていた音楽の可能性にはっとさせられます。

どちらも、音楽のゆたかさを教えてくれる素敵なお話です。今読むことができて幸せでした。ありがとうございました。




MD、やっぱまだ捨てられないや。

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