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パリで観た名コレクション ベスト5 第3位 NUMBER (N)INEとランウェイミュージック 後編

定刻を30分くらい過ぎた頃、真っ暗なショー会場に、ランウェイを照らすよう一筋の光が差し込んだ。
聴き覚えがあるギターサウンド。
ジョン・フルシアンテだ。
もの悲しく、荒々しい原石の輝きのようなギターサウンドに乗せて登場したのは、全身を迷彩柄で包んだファーストルック。ブルゾン、インナー、パンツ、全て。
暗闇に浮かび上がる、その不気味なまでの迫力は、言葉を失うほどインパクトありました。

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よく見るとトライバル柄のような迷彩柄は、ハートが涙を流しているようなデザイン。「世界平和」を願った宮下氏からのメッセージ。
巧みなレイヤードを駆使し、斬新なスタイリングを次々と披露。迷彩柄で始まったショーは、グラデーションのように徐々に「黒」のパートにシフトチェンジ。ダメージ加工の反戦Tシャツで統一したフィナーレも圧巻。
モードとストリートの中間をいくナンバーナインぽさ、TOKYOブランドぽさをパリでアピールした、これまでの集大成的な会心のコレクションとなった。

パリで観た名コレクション第3位はナンバーナイン2004-2005年秋冬コレクション「GIVE PEACE A CHANCE」だ。

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僕も海外出張にいくのはこれが2回目くらいだったと思います。日本から12時間ほどの長いトンネル(フライト)を抜け、辿り着いたヨーロッパの景色。
さらに空港からタクシーで1時間半ほどかけてパリ市内のホテルへ。時差ボケ、疲労、ワクワクと不安でほとんど眠れない。
そんな状況下で観た思い出のコレクション。
特別な演出はなく至ってシンプル。しかし、あの暗闇の光景が不思議なほど印象に残っている。
このショーの動画を見て、ジョン・フルシアンテのギターを聴くたびに、僕はいつも心が震えてしまう。

日本中の洋服好きが熱狂していた当時、ナンバーナインそして宮下氏はとてもミステリアスな存在でした。一般のお客様だけでなく、僕たち販売を担当するお店からしても。
宮下氏はメディアへの露出もなく、インタビュー等もほとんど受けない。
ファンの間では、まさに神格化された存在だった。パリコレクションに進出する事によって、その魅力は頂点に達していたと思う。
こんな事を言うのもなんですが、商品の発注金額もこのシーズンが過去最大となった。

まさにナンバーナイン伝説、第二章の始まりとなったのだ。

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今回は音楽的視点で歴史を辿る旅、パリコレクション編をお送りします(東京コレクション編はこちら👇)。

パリコレクションとランウェイミュージック

8.2004-2005年秋冬/GIVE PEACE A CHANCE

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冒頭でご紹介したパリでのデビューコレクション。ジョン・レノンの曲名からとったタイトル通り、「世界平和」をテーマに掲げた名シーズンです。ハートが涙を流しているような迷彩柄のルックが続き、グラデーションのように「黒」のパートにシフトチェンジしていきます。様々なミリタリーアイテムやテーラードを独自のハイパーレイヤードで新鮮に見せた、これまでの集大成的な内容。

▪️サウンドトラック
ヴィンセント・ギャロの映画「ブラウン・バニー」のために書き下ろしたジョン・フルシアンテの曲を使用(結局映画の本編には使われていないが)。ジョン・フルシアンテは当時、沢山の作品を作っていましたが、お客様で大ファンの方がいて、全ての作品をお借りして聴く事ができました。お陰で僕もジョンの大ファンになりました。その数ある作品の中のでも、このサントラは出色の出来。

1.John Frusciante/Forever Away
2.John Frusciante/Falling
3.John Frusciante/Going Inside

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OST/The Brown Bunny(2003)

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John Frusciante/To Record Only Water for Ten Days(2001)


9.2005年春夏/NIGHT CRAWLER

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アメリカの絵本「Emily The Strange(エミリーザストレンジ)」の世界観にインスパイアされた赤と黒をメインカラーとしたコレクション。袖が片方しかない、斜めに切り取られたカットソーやシャツを2枚重ねて着る、という大胆なコンセプトが大きな話題になりました。そのほか、ワイヤー入りで形が変形できるジャケットやコート、巻きスカートなども登場してパンキッシュな雰囲気。デザイン性が強く難しいという評価も多かったですが、実際のショーを観た感想は前回に負けず印象的。同行していたセレクトショップの代表は「90年代に観たラフシモンズに匹敵する衝撃だ」と絶賛していました。

▪️サウンドトラック
ロック史上屈指の名曲、レッド・ツェッペリンの「天国への階段」をバックに展開。まさかレッド・ツェッペリンを使うとは思わなかった。静かに始まった曲が、音が徐々に積み重なって壮大なラストを迎えるように、四角いスペースを歩いたモデルが一人づつ整列、全員が揃って迫力のフィナーレを迎えます。レッド・ツェッペリンは音楽に興味を持ち始めた頃から大好きなバンドでしたが、このショーがきっかけでさらに思い入れが強くなりました。

1.Led Zeppelin/Stairway to Heaven
2.Led Zeppelin/Thank You

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Led Zeppelin/Led Zeppelin Ⅳ(1971)

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 Led Zeppelin/Led Zeppelin Ⅱ(1969)


10.2005-2006年秋冬/THE HIGH STREETS

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宮下氏が自らヴォーカルを務めるTHE HIGH STREETS(ザ・ハイストリーツ)というバンドを結成した時期で、宮下氏の根底にあるアメリカン・カジュアルをストレートに表現したコレクション。ネイティブアメリカン、グランジ、テーラードなどをミックスした、中期のナンバーナインを象徴するような内容。いわゆるドッキングアイテムが発売されたのはこのシーズンで、当時フード付きのネルシャツが大ヒットしました。その数年後、エイザップ・ロッキーが袖がネルシャツになったドッキングブルゾンを着用し大きな注目を集めました。

▪️サウンドトラック
ニルヴァーナ全開の選曲。カート・コバーンをテーマにした2003-2004年秋冬以来、グランジに徹底的にフォーカスした内容。「ブリーチ」からの選曲は最初から最後まで荒々しく、エネルギッシュなランウェイを演出していました。

1.Nirvana/School 
2.Nirvana/Scoff
3.Nirvana/Negative Creep
4.Nirvana/Downer
5.The Vines/Fuck The World

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Nirvana/Bleach(1989)

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The Vines/Winning Days(2004)


11.2006年春夏/WELCOME TO THE SHADOW

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ナンバーナインの歴史の中でも伝説として語り継がれているコレクション。ガンズアンドローゼスのヴォーカリスト、アクセル・ローズがテーマ。
ハードロックやヘヴィメタルのスタイルをここまで大胆に取り入れたハイファッションを、僕は後にも先にも見たことはありません。
元々は80年代を代表するファッションデザイナーでありアーティストのステファン・スプロウズをテーマにしたものを作りたかったのだそう。

今だから言うけど、本当はアクセル・ローズ(Axl Rose)のコレクションじゃなくて、ステファン・スプロウズ(Stephen Sprouse)をやりたかったんだ。僕はステファン・スプロウズの大ファンで、アクセル・ローズもだけど、ブロンディ(Blondie)を作りあげたのだって彼だから。みんながアクセル・ローズ!アクセル・ローズ!って言ったから、まあいいやそれでって思ったんだけど。[笑] コレクションを考え始めるときは、必ず特定の人間についてのアイデアが僕の中に出てくるところからスタートするんだけど。まあ、僕はあまり説明をしないから、時々みんなが思ってることと僕がやったことが、実は違うときがある。

▪️サウンドトラック
ガンズアンドローゼスの名曲の中でも、ミドルテンポの曲を使用し、ハードなスタイルの中にもどこか哀愁の漂うコレクションになっています。「ユーズ・ユア・イリュージョン」の2枚は、僕も10代の頃からフェイバリットなアルバムで、ハードロックという枠を超えた芸術性の高い作品だと思います。

1.Guns N' Roses/Civil War
2.Guns N' Roses/Don’t Cry
3.Guns N' Roses/Sweet Child o' Mine

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Guns N' Roses/Use Your Illusion Ⅰ(1991)

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Guns N' Roses/Appetite For Destruction(1987)


12.2006-2007年秋冬/NOIR

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テーマは「NOIR(黒)」。
様々な「黒」のバリエーションが揃ったコレクションで、いつになくフォーマルなスタイリングが続きます。その中にミリタリーやバイカー、ウエスタンの要素などを織り交ぜ、多彩なバリエーションを見せていきます。サウンドトラックにも使用された、ザ・ポーグスのスーツスタイルのファッションともリンク。「黒」と言えばナンバーナインのルーツ的なカラーですが、初期の頃のストリート感を抑え込み、モダンで洗練された印象に変化しています。

▪️サウンドトラック
ケルト音楽とパンクを融合したようなサウンドは、影ががありながらもどこか陽気で楽しい雰囲気。モノトーンのコレクションにダークで無機質な選曲をしていた初期のナンバーナインに比べ、あえて人間味のある曲を選ぶあたりに、クリエイションの視野が広くなったように感じました。陰鬱な「黒」の世界に光を与え、その先に見える希望を表現した素晴らしい選曲。

1.The Pogues/Dirty Old Town
2.The Pogues/Misty Morning,Albert Bridge
3.The Pogues/Thousands Are Sailling

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The Pogues/Rum Sodomy&the Lash(1985)

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The Pogues/Peace and Love(1989)

13.2007年春夏/ABOUT A BOY

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ニルヴァーナの名曲「アバウト・ア・ガール」からテーマを引用し、「カート・コバーンがもし生きていたら」というスタイルを表現したコレクション。アメリカの伝説的シンガーソングライター、ジョニー・キャッシュの曲をフューチャー、アメリカン/ウエスタン調のスタイルにグランジをミックスしたような世界観。ジョージ・ハリソンをテーマにした2002-2003年秋冬以来、ブラウンやベージュをメインカラーにした温かみのあるコレクションになりました。

▪️サウンドトラック
ジョニー・キャッシュがカバーしたロック、ポップスの名曲を使用。途中、鳥のさえずりのようなSEが入っていたりと、柔らかな陽射しの差し込むランウェイにピッタリの演出。その中でもナイン・インチ・ネイルズの「ハート」のカバーはやはり素晴らしい。ジョニー・キャッシュによるまさかの選曲と、原曲とは良い意味で違う憂いのあるメロディに惹かれます。

1.Johnny Cash/Hurt
2.Johnny Cash/One
3.Johnny Cash/Bridge Over Troubled Water
4.Johnny Cash/Desperado
5.Johnny Cash/In My Life

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Johnny Cash/American Ⅳ:The Man Comes Around (2002)

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Johnny Cash/American III: Solitary Man(2000)


14.2007-2008年秋冬/LOVE GOD MURDER

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前回に引き続きジョニー・キャッシュの曲をフューチャーしたコレクション。アメリカンやウエスタンの雰囲気を今回はモノトーンで提案しています。このシーズン話題になったのが、カットソーなどに芳香加工が施されていたこと。香りでテーマを表現するという大胆な試みには当時驚きました。この頃、チェックの大判ストールがものすごい人気で、どこのお店でも行列ができるほどの人気ぶりでした。

▪️サウンドトラック
ジョニー・キャッシュの曲はどれも沁みますが、このシーズンで言うとデペッシュ・モードの名曲「パーソナル・ジーザス」のカバーが素晴らしい。ミニマルでありどこかウエスタンな雰囲気の感じる原曲が、さらに奥深い魅力のあるアレンジに仕上がっています。

1.Johnny Cash/Help Me
2.Johnny Cash/Personal Jesus
3.The Highwaymen/Highwayman
4.Johnny Cash/God’s Gonna Cut You Down
5.Johnny Cash/If You Could Read MY Mind
6.Johnny Cash/Danny Boy

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Johnny Cash/American V: A Hundred Highways(2006)

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The Highwaymen/Highwayman(1985)


15.2008年春夏/BIRDS

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ニール・ヤングの奏でるアコースティックな曲調からインスピレーションを受けたシーズン。風になびくような柔らかな素材は、全てカシミア混の上品なムード。それはフェアアイル柄だったり、ニール・ヤングのリリックやフェザーがプリントされていたり。繊細な素材をレイヤードで見せ、ボリュームのあるアクセサリーやドッキングのブーツで締めます。時代の空気感も取り入れた、リラックス感のある新しい魅力の詰まったコレクション。

▪️サウンドトラック
ロッカバイとは、造語でロックのララバイ(子守唄)という意味だと思います。有名アーティストのカバーをしているコンピレーションシリーズですが、これは全編ニルヴァーナ。オルゴールやシロフォン、ビブラフォンなどを使用したアレンジで、おとぎばなしのような幻想的な世界を演出しています。

1.Rockabye Baby!/In Bloom
2.Rockabye Baby!/Lithium
3.Rockabye Baby!/Heart Shaped Box
4.Rockabye Baby!/All Aporogies

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Rockabye Baby!/Nirvana Lullaby Renditions(2006)


16.2008-2009年秋冬/MY OWN PRIVATE PORTLAND

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テーマはずばりガス・ヴァン・サント監督の映画「マイ・プライベート・アイダホ」。
アメリカンカジュアルをベースにした、これぞナンバーナインという見事なコレクション。その一方で、ナンバーナインらしい最後のコレクションになったのも事実です。ネペンテスぽい雰囲気も感じられて、ある意味原点回帰と言ったところでしょうか。
余談ですが、この映画はファッション界でも本当にファンが多いですね。グッチのアレッサンドロ・ミケーレもルーツだと言っていました。ファーストルックなんて劇中のリバー・フェニックスそのもの。

▪️サウンドトラック
テーマにちなんでポートランド出身のバンド、ワイパーズの曲をセレクト。80年代前半に活躍したオルタナティヴ・バンドの元祖的存在で、カート・コバーンもフェイヴァリットに上げています。
カントリー調のスタイルに、疾走感あるローファイサウンドが堪りません。

1.Wipers/No Fair
2.Wipers/Return Of The Rat
3.Wipers/Over The Edge
4.Wipers/When It’s Over
5.Wipers/Wait a Minute

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Wipers/Youth Of America(1981)

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Wipers/Over The Edge(1983)


17.2009年春夏/THE LONESOME HEROES

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ローリング・ストーンズが1968年に制作した映像作品「ロックンロールサーカス」。その劇中に登場するブライアン・ジョーンズにインスパイアされたコレクション。フォークロアや貴族的なムード、パンクなどを織り交ぜた形容し難い世界観。確かにこれまでのコレクションにも伏線はありましたが、それでも雰囲気がガラッと変わりました。正直なところ、難しいというお客様の意見も多かったです。ビジネス的な部分、本当にやりたい事、葛藤があった時期だと聞いています。しかし変化を求めた宮下氏の新たなるベクトルがここにはあって、次回、そしてソロイストへ繋がる重要なポイントになったと思います。

▪️サウンドトラック
モーフィンのやさぐれたサウンドに、ロマンチックなスタイルを対比させていたのが印象的。ラストもニルヴァーナで閉めるなど、あえてグランジ/オルタナティヴ感あるサウンドでまとめたところにナンバーナインらしさを感じました。

1.William S.Burroughs/The ‘Priest’ They Called Him
2.Morphine/Dawna
3.Morphine/Buena
4.Kaki King:Pull Me Out Alive
5.The Gutter Twins/The Stations
6.Nirvana/Where Did You Sleep Last Night

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Morphine/Cure For Pain(1993)

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Kaki King/Dreaming Of Revenge(2008)


18.2009-2010年秋冬/ A CLOSED FEELING

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ラストコレクション。宮下氏がアラスカの旅で出会ったホテルの装飾品やカーペット、カーテンなどからインスパイアされたコレクション。前回の流れをくんだヨーロピアンな雰囲気のアイテムは、継ぎ接ぎになっていたり、またレイヤードが凝っていたりどこかグランジのテイストも感じます。顔をヴェールで覆った演出も怪しげで神秘的。実際の商品はどれも細かい部分まで作り込まれていて完成度は高かったです。以前のように、たくさんの人に響くデザインではなかったかもしれませんが、もの凄いエネルギーを感じたコレクションでした。
そして、ソロイストへ。

2007年のABOUT A BOYの時からナンバーナインの終焉を感じていた。2009年の春夏などは自分の思いをぶつけた採算度外視のコレクションで、アナログで言えば09年春夏がA面、09-10年秋冬がB面。それでブランドを完結させるつもりだった。

▪️サウンドトラック
ポーティスヘッドのベス・ギボンズが元トーク・トークのラスティン・マンことポール・ウェッブと組んで完成させたソロアルバムからの曲を使用。とてつもなく儚く美しいこの作品から選曲したのは、これが最後のコレクションになるであろうことを暗示させる、宮下氏の気持ちの現れだったのか。キャバレー・ブルースと言えばよいのか、ブリティッシュ・フォークなのか。とにかくもの悲しい余韻が残るサウンドトラックだ。

1.Beth Gibbons,Rustin Man/Show
2.Rachel’s/Last Things Last
3.Beth Gibbons,Rustin Man/Mysteries
4.Beth Gibbons,Rustin Man/Tom The Model
5.Os Mutantes/Baby

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Beth Gibbons,Rustin Man/Out Of Season(2002)

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Os Mutantes/Os Mutantes(1968)

終わりに

2009-2010年秋冬「A CLOSED FEELING」発表直後の2009年2月20日、ブランド解散の知らせは突然やってきました。薄々感じてはいたものの、僕たちも驚きは隠せませんでした。
ちょうど2年ほど前にエディ・スリマンがディオールオムを退任するという衝撃のニュースがあり、お店の柱として活躍したブランドが立て続けになくなるのはとても淋しいものでした。

ファーストコレクションからスタイリングを手掛けてきた野口強氏のコメントがとても印象的でした。

再始動するには相当の覚悟は必要になる。
野口強


1月のパリコレの時に宮下に話を聞き、東京で正式に報告を受けたんだけど、やっぱりって思った。ただ、良くも悪くも宮下のバンド「ナンバーナイン」のブランド
自体をなくすとは思わなかった。表現方法は人それぞれだから、デザイナーが変わってもやり続けることに意義があると思う人もいれば、彼のようにバンドを解散させて機会があったら又新しいバンドを組みましょうと
いう考えもあるし否定はしない。彼の全コレクションのスタイリングを担当してきたが、東京のメンズを盛り上げてきたのは彼。07年の頃からは売り難い服を作って・・・会社の事は考えて無いなって思ってたけど、最後はやはり悔いの残らないように突っ走ったんだと思う。今の所クアドロフェニアの今後は未定。だけど、ここから更に面白い事がおきればいいと思っている。宮下はどうするか解らないけど、あいつの事だから絶対にまた服作りをやると思うよ。ただ、次のスタートはかなり大変なのは覚悟しておかないと。

しかし約1年の沈黙を破り、TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.(タカヒロミヤシタザソロイスト.)として復活。お客様たちの興奮した様子は今でも忘れられません。

ブランド名にある“TheSoloIst.”とは、洋服に携わる各個人が“独奏家”として孤高の精神を持ち合わせて欲しいというデザイナー宮下貴裕氏の願いであり、また再び洋服の世界へ戻ってきたという自分への不退転の決意の表れ。

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デザインを始めた当初のファッションと今のファッションを比べると、いちばん大きな違いは何ですか。

それは次の作業に入らないと、分からない。ただとひとつ言えるのが、NUMBER (N)INEをやっていた当時、僕がいちばん嫌だったのが、すごくNUMBER (N)INEぽいねって言われることだったということ。僕は常に変わりたい。勉強したい。毎回、違う、新しいレンズに変えたい。できれば、同じことを繰り返したくない。
※2018年のインタビューより

僕の記事の中ではあえて「ナンバーナインぽい」と言う表現を使わせてもらいました。それは宮下氏がつくり上げた「ナンバーナインぽさ」が本当に好きだったから。

もちろん、変化を求めた時代や今のソロイストも好き。

それを踏まえた上で、宮下氏のストレートなロックスタイルをまた見たい。
往年のファンなら、僕と同じように思っている人もきっと多いはずだ。
先日スタイリングを手掛けていたジョンローレンスサリバンのショーを見て改めてそう思いました。

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そんな思いも込めた、ナンバーナインの歴史を巡る旅。
様々なブランドのアーカイブが注目される今、過去を振り返るにもちょうどよいタイミングなのかなと思い、自らの記憶を辿りかたちに残しました。
これからの宮下氏のご活躍もとても楽しみにしています。

画像出典:
•VOGUE JAPAN
https://www.vogue.co.jp
•WWD JAPAN
https://www.wwdjapan.com
•fashionsnap.com
https://www.fashionsnap.com
•SSENSE
https://www.ssense.com/ja-jp
•Amazon Japan
https://www.amazon.co.jp/ref=navm_hdr_logo


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