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vol.4 冨田啓輔 「理想を追うようなソーシャルグッドなビジネスも、成長し続けられることを示したい。」

『世界中1ヶ国ずつに友達がいることを当たり前に』をコンセプトに、出会いや体験の機会をプロデュースする「HelloWorld株式会社」。

今回は、共同創業者兼取締役の冨田啓輔(とみだ・けいすけ)さんにお話を伺います。

冨田啓輔さん(以下トミーさん)は、"元弁護士"という異色の経歴の持ち主。2018年まで法律家として訴訟に明け暮れていたトミーさんが、その翌年、自身のフィールドを国際交流事業へとシフトしたのは、カリフォルニアで目にした"多様性のある社会"に感銘を受けたから。「ダイバーシティだからこそ、イノベーションが生み出せる」と語るトミーさんに、今目指している未来と実現するための課題について伺いました。

※現在に至るまでのストーリーは、トミーさん執筆の『シリコンバレーの風に吹かれて、弁護士業を辞めた話』をご覧ください。

〉〉vol.5 インタビュー動画
  ※撮影時の不具合により6:38あたりが途切れが生じております。


冨田啓輔(とみだ・けいすけ 通称:TOMMY)
HelloWorld株式会社 共同創業者兼取締役
慶應義塾大学在学中に自転車とバックパッカーで世界を旅する。大学卒業後、東京で弁護士として働く。その後、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員として過ごすうちに「世界中に1カ国ずつ友達がいることが当たり前の社会」を創りたいと強く決意。ホームスティや人と関わることが大好き!
聞き手 CI stock チーム
CI stock(シーアイストック):会社や経営者、働く人々の継続的な発信をサポートするサービス。定期的に取材を行い、映像や文章を制作する。
CI(Corporate Identity)をstockし続けることで、日々アップデートされる取材対象者の思考整理および言語化、セルフメンタリングを手伝い、社内メンバーとの意思疎通や社外への広報活動としての活用を前提としたコンテンツづくりを行う。

CI stock トミーさんがHelloWorldにジョインするきっかけとなったのは?

冨田 2018年の11月に福岡で開催された『StartupGO!GO!』というピッチに参加したとき、その前夜の懇親会で(野中)光が「Paikeさん(※)、世界観同じですよね?お話したかったんです!」って声をかけてきたんです。

※Paike(パイク):トミーさんが企画したアプリケーション。「好き」なものを入り口に海外に住む人と知り合い、友達になれるサービス。「○○が好き」という共通点を軸に友達の輪が広がるため、コミュニケーションが取りやすく仲も深まりやすい。

CI stock 「世界観一緒ですよね?」との言葉に、トミーさん自身はどう思いましたか?

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StartupGO!GO!』会場にて。野中光さん(左)、冨田啓輔さん(右)

冨田 『まちなか留学』の話を聞いてみて、リーチする世代が違うだけで、やりたいことは同じだなと思いました。Paikeは成人した大人や若者にフォーカスを当てていて、まちなか留学はもっと小さい子どもたちにフォーカスを当てていて。光の当て方というか、対象が違うだけで、ゴールは同じだよねと。

CI stock Paikeについて改めて伺えますか?

冨田 掲げているゴールは、どこを旅行しても友達がいる状態を実現することです。僕自身、バックパッカーとか自転車で旅をして、行く先の国々で友達を作るのが好きで。ただ、友達と言っても、"仲の良い友達"になれる確率って低いんですよね。好きなものをきっかけに世界中に友達ができたらとPaikeを作りました。好きなものを一緒に楽しめると、意気投合して仲良くなりやすいんです。

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他者がいて、自分がいる。"one of them"が多様な世界へつながっていく。

CI stock 友達が増えていくと、結果的にどういう世界が実現できるんでしょう?

冨田 海外で起きていることが海の向こうの遠い国の話ではなく、自分のこととして捉えられる。世界をもっと身近に感じられます。

例えば沖縄だったら、沖縄市のコザに暮らすからこそ分かることがあるじゃないですか。年越しそばが日本蕎麦じゃなくてまさかの沖縄そばだとか、正月はお雑煮じゃなくて中身汁を食べて、おせちはオードブルみたいな。普通にみんな「あちこーこー」とか言うし。

CI stock 言いますね(笑)。

冨田 観光地を巡るだけでは知られない、暮らしの中に入って人と接触することでわかることがあって。これだけネットでいろんな情報を検索できるようになっても、情報はやっぱり人が持っていると思うので。情報化が進んでるこの世の中だからこそ、ウェットに人と接することの重要性をすごく感じています。データとして上がってこない、検索にもあがってこない情報が埋もれている。それを教えてくれるのが友達なのかなと。『まちなか留学』で実現したいのも、そういった世界。子どもたちにもっといろんな人や国を知ってほしくて。自分たちが世界の "one of them"なんだよっていうことを認識してほしい。

CI stock one of ...?

冨田 "one of them" いろんなものがあるなかの一つ。日本は世界の中心じゃない。世界各国いろんな国があるなかのひとつの国であること。そして自分はそこに住む人々のなかの一人であること。他者がいることを前提に自分が存在する。そう思えることで、自分自身をいろんな立場に置き換えて物事を考えられるようになる。

「自分が、自分が」って自己中心的な主張をするから争いごとが起きるし、意見の対立も起こる。世の中にはいろんな人がいて、自分はそのなかの一人だっていう認識さえ持っておけば、たとえ嫌な人に出会っても、"社会にはそういう人もいるよね"って寛容になれる。

"one of them"は『多様性』に繋がっている考え方だと思っています。そういった世界を実現していきたいなっていう思いはありますね。

均一的な文化や習慣の中では、イノベーションが生まれにくい。

CI stock 多様性が大事だよねっていう考えは、トミーさんのこれまでの経験が影響していますか?

冨田 そうですね。やっぱり僕も典型的な弁護士として、背広を着ておじさんたちと一緒に訴訟とか交渉とかに明け暮れてたんですけど...。2018年にカリフォルニア大学バークレー校の客員研究員として働いたとき、シリコンバレーやベイエリアでいろんな人種や人々に出会いました。アジア系の人とかインド系の人とか。むしろアメリカ人って言われてる人が少数派だったりとか。短パンの人もジャケットの人もいて、ごちゃまぜなんです。

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冨田 そういった世界を見たときに、ダイバーシティだからこそ、世界中から優秀な人材が集まるし、イノベーションが生み出せるんだと。均一的な文化や習慣の中では、なかなかイノベーションが生まれにくいのではと思いました

じゃ日本に足りないものって何なんだ?って考えたときに、ダイバーシティだなと。これは別に人種だけの話じゃなくて、考え方とか生き方とか、いろんな物事に対する多様性

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冨田 自分にとって今は人生の第2フェーズなんですけど、多様性をいかに浸透させていくかをビジネスとして実現したいなと思って、PaikeだったりHelloWorldだったりをやっている状況です。

CI stock 今HelloWorldでは、COOというお立場ですが、具体的な業務としては。

冨田 何から何までほぼ全てですかね。バックオフィスもそうですし、アプリのプロダクトマネージ、デザインのマネージ。あとは、安心安全な事業推進のための取り組みとか。当然リーガル(法に関すること)もやってたり、チームのマネジメントもやってたりとか...。てんやわんやしてます(笑)。とにかく今はHelloWorldをグロース(成長)させることに注力してます。

CI stock 大変そうですけど、トミーさんめっちゃ楽しそうに見えます。

冨田 そうですね。ストレスは何もないです。楽しくて。初めてのこともすごい多いんですよね。弁護士時代は経営者ではなかったので、財務会計を含めたチームマネジメントとか、いろんなことを考慮しながら進めていく方法を勉強しながらやっている最中です。

組織で大切なことは、みんなに気持ちよく働いてもらって、能力を最大限に発揮してもらうことだと思っていて。我々はスタートアップなんで、ゴールへ向かってなるべく速く走らないといけないんですけど。ただ、全力疾走し続けても疲れちゃうので、緩急を作りながらゴールへ向かう。走り続けるためにアプローチをどうするか、どう効率化するかが大事ですね。

理想を追いかけるようなビジネスでも成長できるんだということを示したい。

CI stock これから会社をどういう存在にしていきたいですか?

冨田 "世界中に一カ国ずつ友達がいることが当たり前の社会"って、誰の耳にも良いように響くんですよね。当たり障りもないし、みんな「いいですね」って言う。その「いいですね」をサステナブル(持続可能)にするためには、お金をきちんと稼いでいかなきゃいけない。

ビジョンの聞こえがいいからこそ、実現するには大きなハードルが待ち受けていると思っていて。「国際交流とか聞こえがいいものってビジネスとして成り立たないよね」っていうのが定説かなって思うんですけど、そこを覆していきたいなっていうところで。こういうソーシャルグッドなビジネスとか、理想を追いかけるようなビジネスでも成長できるんだよっていうのを示したいなと。なので、沖縄県内だけではなくて、県外へ出ること、そして世界に出ることに光とこだわっていきたいなと思っています。サステナブルに、そしてインパクトを幅広く与えていくような存在になっていきたいなと強く感じてます。

一方、急成長を目指しながらも、やっぱりベースには子どもたちに多様な世界を知ってもらいたいという思いがあるので。そこでのバランスも保ちながら。

最近でいうと、去年の10月から『まちなか留学基金』をスタートしています。有償でまちなか留学を提供するだけではなく、経済的に余裕がない子どもたちや留学に行きたくても行けない子どもたちに、無償でまちなか留学を提供できるようにファンドを作りました。

冨田 設立したての企業がそんなことをするのは非常におこがましいし、そんなことより事業にもっと集中したほうが良いみたいな声もあると思うんですけど、でもそこは僕たちとして譲れない一線があるので、バランスを取りながらやっていこうと。知らない方も寄付してくれるようになって、ちょっとずつ広がってきたのでこの輪を広げていきたいなと。

実現したい未来はまだまだ遠い。だからこそ目標を定め、きちんと向き合う。

CI stock 弁護士だったとき、"自分の未来がこういうものだ"と見えるようになってきたことから、転機をはかったということなんですけど、今自分の未来はどういうふうに見えてますか?

冨田 今も自分が目指す姿は見えるんですね。見えるけど、弁護士のときより実現ハードルが高い。ほんとに、真剣に頑張らないとそこに届かないっていう感じなので、こうなりたいっていう姿はあるけど、まだ実現できると思えないので、ひたすら頑張ってるっていう状況で。弁護士のときは、だいぶおこがましいんですけど、目指すところまで行けるんじゃないかなって思えたからもう(辞めても)いいやって思ったんですけど。今はそんなこと到底思えないので、とりあえずひたすら頑張るみたいな感じで。

プレッシャーはありますけど、嫌なストレスは全くなくて。自由にやさせてもらっています。それはチームのおかげです。

CI stock 目標に向かうというと、HelloWorldらしい、もしくは沖縄らしい目標の立て方について、これまでの経験で掴んできたものとかあったりしますか?

冨田 これをやりたいって純粋なパッションを持っている人ってすごい多いと思うんですよね。そのパッションをちゃんと実現していく、成功の確率をあげるためにはやっぱりビジョンとかゴールを設定する必要があるなと思って。特にそれがチームでとなると、チームの中にもいろんな人がいるじゃないですか。目標を設定して突き進む人もいれば、今を楽しく仕事しようっていう人もいる。それはそれでみなさん自由でいいと思うんですよね。ただ組織としてどこへ向かうかっていうところをきちんと示した方が成長速度が上がるし、成功確率が上がるんじゃないかっていうのが僕の考えなので、ちゃんとゴールと大きなマイルストーンのようなものを示しながらやっていったほうがいいんじゃないかと。

沖縄にいるとどうしても、私もそうなんですけど、なんか楽しく生きていこうよみたいな発想になりがちで。『まちなか留学』も、楽しく、小規模でもいいからという成長の仕方もあると思うんですけど、でもそれじゃ与えられるインパクトが限られてるし、やっぱりリーディングカンパニーになっていくためには、ちゃんとやっていかなきゃいけない。光のいいところ、僕の悪いところ、それぞれのいいところ、悪いところを組み合わせながら、実現するために進むことが大事かなと思っています。

CI stock ちなみに、これまで達成できたなと思えた瞬間とかありますか?

冨田 まだ達成した感覚はないです。もっとできたのにって思うタイプなので、現状に対する満足度は高くないです。

CI stock どんなことが実現したら「よっしゃ!」って言えますか?

冨田 とりあえずキャッシュをいっぱい稼ぐ(笑)。従業員、チームの賃金を上げることは、会社のマネジメントをするサイドとしては実現していきたいなと。みんなが沖縄の一般的な水準より高いインカム(所得)がある上でいいビジネスをすること。社会的インパクトがどれだけ大きかったとしても、内部の人が疲弊したりとか、無理をしたりではしょうがないと思っているので。そこができるといいなと思います。

(2021年6月25日)

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 vol.1 野中光 ー 沖縄でイノベーションが起きない理由はない」
 vol.2 野中光 ー 地球上の外国人と友達になることが、
          争いを防ぐセーフティネットになるかもしれない。

 vol.3 野中光 ー まだ繋がってないだけ。
           沖縄のまちには"世界"が広がっている 
 


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