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あるTwitterの投稿記事からこれまで感じていた謎が氷解したのです。

インターネットでは宣伝用で、このたび発売されるビートルズ『リボルバー』のリミックス・最新リマスター版からの『タックスマン』がヘビーローテーションで流れていますが、これに限らずビートルズの最新リミックスがイマイチの理由が判明したような気がします。
エフェクトをかますことで、元々備わっていた音圧を結果的に削ってしまっているのではと解釈に至ります。モノラルをステレオ化することも含めてです。
結論としては、レコードでなくても1987年に出た初CD版を音量上げて聴くのが最適且つ最高なのだと。今回の『リボルバー』発売における先行ナンバー『タックスマン』の鑑賞から確信しました。
ぜひ聴き比べていただきたいと思います。

最新テクノロジーは古いものを現代にリアルタイムで制作されているかのように蘇らせる効果が期待されているのですが、それが有効な場合とそれは違うのではないかという状況を目の当たりにしている現状ではないかと私は感じています。

もう15年前位になりますか。旧作リマスター流行りのCDリリースに警鐘を促すようにXTCのアンディ・パートリッジは「簡単な事なんだよ、ステレオのヴォリュームを上げて聴けば良いんだよ」
レコード会社は盤を買ってもらうために何らかの意味付け、鮮度維持の手段にデジタル・リマスター化を謳います。
勿論、有効な場合もあれば疑問を感じる場合もあります。

ズバリ分かりやすく説明をするならば、データの圧縮率がポイントなのです。
音楽であれば聴き具合、言い換えれば迫力の差異であり、映像であれば解像度についての極めの細かさが圧縮率が高くなる程、音であればダイナミックさが乏しい細い感覚になり、映像であれば粗くなる事を指します。
最近では付加価値的に圧縮をできるだけ掛けずに商品化する方法をメーカーは模索します。約35年程度、データ圧縮率の高いCDとDVDのスタイルが定着し商品パッケージとして揺るぎないコンテンツだったところがほぼ崩壊している現状からのリストラクチャーがなかなか見い出せずにいます。
CDほどデータ圧縮を掛けずに商品化できるアイテムとしてレコードがあります。
レコード生産はコストがかかりCDの登場が逆に大量生産を容易に可能にした点で流通と販路拡大に大いに経済効果を発揮したのですが、今日現在、音楽はサブスクリプションにより配信メーカーのサーバー内で楽しむものであり、CDとレコード購買者は音楽マニア限定の商品アイテムと言って過言ではありません。
サブスクからのネット音楽を楽しむためのAV機器を備えれば、理屈上はCD以上レコード未満で音質的には高品質状態での鑑賞が可能になります。

しかしながら、60年代に記録された空気感をデータファイル化した時点で最初の圧縮がかかり、それを加工すればするほど別の作品に変わってしまうことへの違和感との対峙は今後も続くのだと思います。

作品へのリスペクトをプラットフォームに応じて聴き分けなければいけない時代がややもすると到来しているのかと、気軽に楽しめる音楽で良いとは思いつつも50代の不思議なわだかまりが、音楽分断の溝を気づかない内に生み出しているのかもしれないと覚る瞬間があるのです。

今回、リマスターやデータ圧縮についての文章でしたが、最近聴いた成功例として以前のnoteでもご紹介した2020年にリリースされたチャーリー・パーカーの5枚組輸入盤CDが挙げられます。
とにかくマスタリング処理が素晴らしいのです。録音状態がかなり良かったにせよ凄いに尽きます。総じて録音時は1940年代です。
演奏もスリリング且つ全く色褪せません。これはジャズファンならずともオススメします。

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