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KPOPファンはどうやって応援しているのか?「推し活」の中身を知る

近年「推し活」という言葉がメジャーになり、ファン文化に注目が集まることも増えてきました。今回はKPOPのファンはどうやって楽曲やライブを楽しみ、推しを応援しているのかに焦点を当てて、具体例を上げながら話していきます。

対談参加者

片瀬:文化社会学を勉強中のボカロP。音楽は好きだが、アイドルとは無縁の生活を送ってきた。

夕:片瀬がKPOPについてわからないことがある度に質問攻めにされているオタク。最愛のグループはDKB。

推しをチャートにランクインさせるための努力

夕「カムバ(楽曲リリースとそれに伴う一連の活動のこと)期間になると、ファンはめちゃめちゃスミンを頑張るんですよ」

片瀬「スミン?」

夕「そう。ストリーミングの略で、推しの曲をチャート上位に押し上げるためにたくさん再生することをいうんだけど」

片瀬「以前、韓国の音楽シーンではチャートの影響力が大きくて、音楽番組の出演にも上位にランクインすることが必要っていう話があったよね」

夕「そうだね。で、具体的にどういうことをするかというと、YouTubeでプレイリストを作って新しいタイトル曲(カムバの際の中心となる曲。表題曲に近い)を入れて、2,3個違う曲を挟んでからもう一回タイトル曲を入れる」

片瀬「どうしてそんな面倒なことを?」

夕「プラットフォームのアルゴリズムの問題で、連続でリピート再生してもその回数は加算されないらしいんだよね。だから、最大限再生回数に反映させるために1つのプレイリストの中に同じ曲を何回も入れて通しで再生する」

片瀬「何曲か間を空けるのもそのため?」

夕「そう。でもこのプラットフォームのアルゴリズムって企業が発表してるんじゃなくてファンづたいに共有されてるものだから、もしかしたら迷信って可能性も全然ある」

片瀬「ファンが頑張って調べたり推測したりしてるんだ」

夕「実際KPOPアイドルのMVってものすごく再生されてるから、結構正しいような気はするけどね」

夕「あと、私は普段からアプリを使って音楽番組のファン投票をしてる。その投票のためにジュエルっていうのがいるんだけど、日頃から短いCMを見ながらコツコツためています」

片瀬「ソシャゲの石みたいなシステムなんだ。それ結局アイドルじゃなくてプラットフォームが儲かってるんだよね。そんなところにビジネスがあったとは……」

実際に投票に使っているアプリ

片瀬「そういえばSBSの「THE SHOW」って音楽番組の過去回をTBSで放送してたから観てたんだけど、いつ視聴者投票したんだろうって思ってたんだけどこういうアプリでやってたのか」

夕「確かにちょっとだけしか案内ないもんね」

夕「他にはCDの共同購入っていうシステムがあって。SNSで影響力が大きいオタクが何人か集まって、CDとかKPOPグッズの販売サイトで共同購入用のリンクを発行するんだけど、そのリンクから購入すると何%か割引で買えるようになってるのよ」

片瀬「その人達が宣伝してくれてまとまった売上を確保できるから少し安くしてもいいですよってことか」

KPOPのペンライト流通事情

片瀬「KPOPはライブでペンライトを振るけど、あれはグループ単位でデザインが決まっているよね。推しごとに色が違うとかは見ないかも」

夕「KPOPはそもそも推しカラー自体ないのが普通だからね」

片瀬「あとドームライブの映像とかみてるとペンライトを同期させてウェーブみたいに光が流れたりする演出があるからなかなか高機能になってるよね」

夕「そう。天井席(ドーム会場のスタンドの席)の時とかはすごく綺麗にみえる」

片瀬「そして何よりデカいじゃん。鈍器って呼ばれてるやつあるよね(*1)」

夕「デカい」

片瀬「実際買うといくらぐらいするの?」

夕「コンサート前だと値上がりしたりするんだけど」

片瀬「ペンライトって値段の変動あるものなの?公式から直販だと思ってたんだけど」

夕「公式が発売を告知したタイミングでちゃんと予約したり、会場の物販では買えるんだけど、それ以外だとQoo10みたいな通販とか新大久保の店で買うことになるね。値段は安い時に買えれば5000円から8000円ぐらいの間では買えるかな」

片瀬「いろんな店が仕入れて売ってるから、需要に合わせて価格設定してるんだ」

夕「そう。あとは韓国の通販で買うと送料がかかったりするからね」

公式主導で普及していくファンの掛け声

夕「ライブにいくと、掛け声も頑張りますね」

片瀬「結構きっちり決まってるよね」

夕「そうだね。掛け声のことを応援法(응원법)っていうんだけど、MVとセットでメンバーが掛け声をやってくれるカンペ付きの動画が出る」

片瀬「公式が決めてるんだ。こういう掛け声については界隈ごとに全然事情が違うよね。日本の女性アイドルだとミックスとか口上っていわれるコールがあるけど、あれはファンが生み出したものだしなんなら曲とかグループを越えて使われる」

夕「KPOPでは基本的に公式が出すんだけど、途中で追加されるものもあるよ。Stray Kidsの『樂(LALALALA)』のイントロの「カボジャゴ!(韓国語で가보자고、行ってみよう!の意味)」っていう掛け声は公開収録中にメンバーとファンの間でやってみてそのまま採用されたのがずっと続いてる」

片瀬「なるほど」

夕「Stray Kidsは掛け声に平気でラップ入ってたりするんだよね」

片瀬「公式が出す掛け声にラップ入ってるの?合いの手とかじゃなくて?」

夕「メンバーもラップしてて、そこに被せてやる」

片瀬「難しそう」

夕「Stray Kidsの難易度が高すぎるのはあるかもしれない。けどP1 Harmonyとかもラップ部分を言わせる時あるよ。とはいえ大体はフック部分の繰り返しで言う一つのフレーズをコールアンドレスポンス形式でやるのがメジャーかな。RIIZEとかはどうなってるんだろう?」

片瀬「そういえばRIIZEの公式コンテンツ結構チェックしてるけどFan Chant動画は見たこと無いかも(*2)。Mステに出演した時はちゃんと掛け声あったけどね」

夕「(YouTubeを見ながら)あ、本当にないかも。これは特別なケースだと思う。音楽番組の収録では事前に配られてるんだろうけどね。これはちょっとびっくり」

片瀬「今後デビューするグループはどうなるかわからないってことなのかな」

夕「最近出たグループをみると、NCT WISHとかTWSは出てるみたい。逆にRIIZEなんで出してないんだろう」

片瀬「謎だ……」

今回はここで一区切り。後編ではソンムルやセンイルカフェといったファン同士の交流の話を詳しくしていきます。

*1)SM Entertainment所属のNCTの公式ペンライトは、その色や形状からファンの間で「ネギ鈍器」や「草鈍器」といった名前で呼ばれています。

*2)収録時点ではありませんでしたが、ファンコン「2024 RIIZE FAN-CON 'RIIZING DAY'」に合わせて「impossible」のFanchant動画が公開されました。他の曲については、有志が作成したものはありますが公式からは出ていないようです。

「#韓ドルオタクとボカロP」というシリーズで、KPOPの産業構造やファン文化に着目した全5回の対談を掲載していますので、興味を持った方はぜひマガジンをチェックしてみてください。

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