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研究者と1on1を99回やって気付いたこと

リーダーになったら1on1をやってみようと考え、4月からこれまでに99回やってみました。そこでの気付きとして、

モヤモヤをキャッチする力

が重要だと感じましたので、以下で整理します。

(1)なぜやってみたか?

私は、研究開発を本業として行っています。その傍ら、新しいアイデア創成や組織開発のために、ワークショップやファシリテーションを実践してきました。ワークショップでは、適切な”問い”により、参加者の考えを引き出すことが重要です。このことから、カウンセリングやコーチングも学んできました。また、リクルーターとして学生と接する中で、仕事に対する思いを引き出すためのコーチングも実践してきました。

今回、本来の研究開発チームにおいて、実際にリーダーとなったので、自分のチームでも実践しようと考えやってみました。なので、メンバーは全員が研究者です。

(2)どのようにやってみたか?

基本的にメンバーと毎月実施しました。1回の時間は30分を目安としましたが、多少の前後は許容して行いました。今回はコロナ禍の影響で在宅の機会も多かったため、対面だけではなく、電話で行ったときもありました。

初回は、自己紹介も兼ねてモチベーション曲線(例えばこちらを参考)を使って話しました。事前に全体の場で自分のモチベーション曲線を使って話をして、後日、メンバーに作ってもらって話しました。2回目以降は、こちらの本を参考にしつつ、適宜アレンジを加えながら実践しました。

(3)何に気付いたか?

人ごとに話す内容は違うのですが、全体としていくつかの傾向があることに気づきました。下記の3点が大きな特徴です。

【特徴1】リーダーが欲する答えを探す

一つ目の特徴は、リーダーである私が欲する答えを探す傾向があることです。従来、上司と部下の会話は指導が主体で、コーチングはあまり行われていません。自分のことを話してもいいといわれても意味がわからず、上司である私が何を聞きたいのか、の確認から入ることが多かったです。これは、慣れの問題もありますが、基本的には上司/組織から与えられた課題に答えるのが役割であったために、上司が何を求めているかをまず確認し、その求めに応じるための答えを考える、という思考になっていました。

【特徴2】他者と比較する

ある程度自由に話してもいいということがわかると、次に挙がってきたのが他者と比較したときの自分についての話です。研究は一人で実施する部分も多く、同じ組織であっても専門性が異なる場合が多々あります。そのために、自分の立ち位置や評価が他者とくらべてどうなのか、ということが分からず、そのことが気になっていると感じました。この考えは、研究者として世界と戦っていることを考えるならば正しいとも言えるのですが、他社と比較することでしか自分を評価できなくなってしまうと、自己肯定感がどうしても低くなり、幸福度も低くなる恐れがあると感じました。

【特徴3】話が続かない

一方で、話がつづかないケースも多数ありました。専門的な技術での議論はできるとしても、1on1のように価値を自分が見出していない内容にはそもそも興味がなく、聞かれたことには答えるけれどそれ以上に自分のことを話すことをしないので、話題が広がらず、会話が途切れる、という状態です。忙しい時や、気になっている研究テーマに取り組んでいる時には、上司とのわけのわからない対話は早く終わらせたかったのかもしれません。

このように、これまではワークショップというある種のポジティブが前提な明るい場で実施していたファシリテーションと、1on1での対話というのは性質が異なる部分が多いことが分かりました。

(4)何をしたか?

ワークショップのファシリテーションと1on1が異なることが分かったからといって、リーダーをやめるわけにはいきません。また、メンバーには活き活きと研究をしてもらいと思っています。そのため、少しづつですが、下記のような工夫をしました。

【特徴1に対して】自分の意思を問いかける。

まず、言われたことをやるという思考をする前に、自分がどうありたいのか、を問いかけるようにしました。そのためのカギが

ワクワク

自分が何にワクワクするか、何を楽しいと感じるか、を問いかけ、考える機会を多く設定しました。自分のワクワクよりも、組織としてやらなければいけないことを優先しがちでした。短期的にはそれでもいいのですが、その先の組織の成長のためには、言われていないことでも自ら興味をもって、自発的に動く必要があります。その源泉が「ワクワク」です。これを思い出せるように問いかけました。

【特徴2に対して】良い点を見つけて具体的にフィードバックする。

次に、メンバーの良い点を見つけることをしました。未熟な点を見つけて指導することは比較的易しいのですが、その基準はどうしても自分、つまり上司となります。これだけでは、上司ができることをメンバーができない、と認識させることになります。メンバーができて上司ができないことはたくさんあります。このような良い点を見つけて、それを具体的にフィードバックするようにしました。このようなことは、これまではあまり行われていなかったようです。伝えたとしても、はじめのうちは、それが自分の強みであることが理解できないようで、だれでもできること、と思っていたようです。しかし、何度も繰り返し伝えるうちに、すこしづつですが、それが強みであると理解してもらえたと感じています。

【特徴3に対して】技術で話す。

最後に、やっぱり技術で話す。先に述べた強みには、技術もそれ以外もあります。ですが、技術の強みとして伝えられたほうが好意的に受け取ってもらえたと思います。また、技術以外の強みであっても、それが結果としてなんらかの成果になっているならば、その因果関係を正しく伝え、これも仕事をする上での技術である、と伝えるようにしました。

(5)気づいたこと

これらの1on1では、多くの不満も出てきました。その多くが組織に対する不満です。各自が取り組む業務は、組織とつながっています。しかし、個人の思いとはつながっていません。だから不満が生じます。

このような不満をすべて解消することは難しいです。しかし、業務が自分ゴトになれば、不満は軽減します。今は仕事が自分ゴトになっていなかったとしても、将来もそのままとは限りません。そのためには、業務と自分の関係を考え、業務が自分ゴトとなるように少しづつでも変えていく。そういう一歩を踏み出すことが大事だと思います。

このような一歩を踏み出すための考え方については、下記にて記載しましたのでこちらもご参考ください。


では、自分自身がやりたいことをやれているのか?と問われると、残念ながら100%とは言えません。しかし、昔よりはやりたいことを意識して動けていると思います。昔は、会社に言われてたことを必死にやろうとしていました。言われたことをやって、成果を出し、評価されていたので、自然と満足していました。しかし、人間関係でトラブルになった時期があり、それをきっかけとして考えを変えてきました。

その時、心のモヤモヤを見ない振りをしていたことに気づきました。

モヤモヤというのは、生活をする上でも、仕事をする上でも何度も生じます。生活での不満。言われた言葉。押し付けられたスケジュール。気になったけど忙しくてやれなかったこと。

これらのモヤモヤに気づいたのは、その人のセンスです。

生活でのモヤモヤは日常見過ごされていた課題。

言われたモヤモヤはコミュニケーションの課題。

スケジュールのモヤモヤはマネージメントの課題。

やりたかったモヤモヤはスキルの課題。

このように、日常モヤモヤしたことは何らかの課題であり、この課題を解決することで次につながることがあると思います。

(6)おわりに

1on1の実践と、その結果の整理を通じて、モヤモヤが重要であることがわかりました。研究者は、課題が与えられると解かずにはいられない人種だと思います。課題は企業にいるといつのまにか与えられるものになりますが、実際には課題の種は各自のモヤモヤに埋もれています。

自分のモヤモヤを見ない振りをしないでキャッチすること。キャッチして課題と認識すれば、研究者は解くための歩みを進められます。

モヤモヤをキャッチする力。自分もチームもこれを大事にしたいです。

表紙画像は、この記事を構成を考えているウォーキング中に目に留まったものです。草木の中に光る何か。視界には入っていても気にしなければ見過ごしてしまいます。日常生活でもこのような小さな光は至るとろこにあるけど、気づかずに見落としていたりするのではないでしょうか?


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