見出し画像

上野樹里さん、長澤まさみさん共主演 トランスジェンダーを描いた貴重なドラマ


ドラマ【ラスト・フレンズ】(2008)


※注意:このドラマにはフラッシュバックやトラウマが引き起こされる可能性がある描写やシーンが含まれています※


個人的感想:★★★☆☆


あらすじ:

 家や職場でも居場所が得られず、恋人からのDVに苦しむ藍田美知留、モトクロス選手として全日本選手権優勝を目指す一方、性別という誰にも言えない悩みを抱える岸本瑠可、女性達の良き相談相手でありながら、過去のトラウマからセックス恐怖症に悩む水島タケル。悩み傷ついた3人は、ひょんな事から、シェアハウスで共同生活を始める。そして、彼女達は共に暮らすうちに、人と人との関わりの大切さを知り、前向きに生きようとする。

引用元:Wikipedia『ラスト・フレンズ』



個人的感想:

 まず、瑠可(ルカ、by 上野樹里さん)が一筋でとにかくカッコ良い。それは表面的な意味もあるけれど、でもそれ以上に瑠可の真っ直ぐさが伝わってきてそれがとても見ていて心強かった。ただ、あそこまで自分の気持ちに折り合いをつけて一心に未知瑠(ミチル、by 長澤まさみさん)を想って強く優しくいつづける瑠可には、いつしか脆い瞬間が来てしまうんじゃないかと心配もしてしまう程でもあった。フィクションだと分かっているけれど、瑠可の周りには信頼できる人たちが囲んでいて、その存在があって本当に良かったなと思わずにはいられないほどだった。
誰にも打ち明けられず、ずっと自分の内に秘め続けていた瑠可の想いを想像すると涙してしまう場面も。瑠可だって自分の気持ちを一心にぶつけてしまいたい瞬間なんて数え切れないほどあっただろうに。でもいつも相手のことを考えてしまって自分より相手のことを優先して、何よりも愛する未知瑠が傷つかないようにと、どこまでも深い愛で未知瑠を包んでいるところが、なんとも言えず心にきました。


 第一話の冒頭で語られている「瑠可、あなたがずっと悩み続けていたことを知らなくてごめんね、あの時に分かってあげられなくてごめんね」という未知瑠の言葉に、見ている自分自身がその言葉を聞いてちょっと救われるというか、個人的に「あぁ 自分もいつかこんな風に言ってもらえたら良いな」と思う台詞でもありました。



 また、未知瑠の回想シーンで流れる「瑠可、私は全然知らなかったよ。別れた後あなたが私の後ろ姿を見続けていたこと」という場面では、まさに瑠可が自転車に跨りながら振り返って未知瑠の後ろ姿を見続けているその姿が、愛しているのに同時にとても寂しそうで、分かる…と思わずにはいられないほど、誰にも言うことのできない孤独な気持ち、相手に伝えることすらできない心苦しさ、自分のなかで うるさいまでに何度も重ねる葛藤、目の前にいる好きな人に「ずっと好きな人いないの?」と悪気なく聞かれ、本当は分かって欲しいけど分かって欲しくないとも同時に思う複雑な心境を思い出しながら、見ていました。


 
 あと、5年ぶりに再会した未知瑠に同居人がいると知り、恐る恐る「それって恋人ってこと、つまりは男の人だよね?」と確認する瑠可が、その問いにハニかみながら「うんと答える未知瑠に対する瑠可の何とも言えない苦しい表情が、コンビニから一心不乱にミチルの元へと駆けつけて傘を差し出す優しい表情の瑠可が、シェアハウスに来た未知瑠の寝顔を愛おしそうに見つめる瑠可が、その全てに心が締め付けられる想いでした。


 見終わってから二人の名前もそれを表していたことに気が付き、真の瑠可を知らなかったから 未知瑠 なんだなぁとか(漢文で解釈してみると、瑠可ヲ未ダ知ラズ → 瑠可のことをまだ分かっていない という感じでしょうか)。


 また、カミングアウトを受けた側の正直な気持ちも様々な立場や観点から発せられるセリフがありのままで、2008年にこの内容が公開されたことにとても大きな意味があったのだろうなとも。それと同時に、2022年の現代で同様のストーリーラインが執筆されたら一体どんな結末で締め括るのだろうとも思いながら。
ネタバレ回避のためあまり詳しくは書きませんが、現代であればもう少し違った結末を描くんじゃないかなと、ドラマが社会に与える影響力を鑑みれば、またここ10年以上が経って少しずつ、でも着実にスピードを急速に上げた時代の良い変化を信じたいとも思うドラマでした。

 セクシャルマイノリティは「当事者」と一括りに表現されてしまうことが多いように個人的に感じますが、全く同じ人生を送る人がいないのと同様に、同じセクシャリティに生まれても人によって捉え方、感じ方、自分はどう生きていきたいかが異なると考えます。
 
 近い将来では「カミングアウト」みたいな言葉が必要な概念自体がそもそも消失すれば良いななんてことを考えながら、ドラマの瑠可を見つめていました。


 この記事ではセクシャリティ(特に瑠可)に限って感想を書いていますが、それ以外にも色んな事柄が同時進行的に非常に濃く描かれていて、現代の社会をも反映したらリメイク版は一体どんな描かれ方になるのだろうと、それが見たいなと感じました。



 ※冒頭に書いたように、人によってはフラッシュバックやトラウマを引き起こし得る描写やシーンが多々ありますので、もし見る際は自分の気持ちと相談しながら見ることをお勧めします。また、見進めるなかで少しでも物語や映像やしんどく感じる場合は無理に見ないことをオススメします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?